私の地元犬山市には国宝犬山城があり、城下町には江戸末~明治期に建てられた町屋が多数現存しています。
また博物館明治村には、9件の国の重要文化財を含む60を超える明治~大正期の近代建築(西洋館)が全国から移築保存されていますが、もともと犬山に建てられた洋風の近代建築はほとんど現存していません。
そんな中で名鉄小牧線羽黒駅のすぐ近くに、犬山唯一の現存する明治期の擬洋風建築、「小弓の庄」(旧加茂銀行羽黒支店)という銀行建築が移築保存されています。
現在小弓の庄として再活用されている建物は、明治40年代に加茂郡銀行羽黒支店として建てられた建物で、その後東濃銀行、七十六銀行、大垣共立銀行の羽黒支店を経て、昭和5年に支店が廃止になるまで銀行建築として使用されました。
銀行廃止後は個人が購入し、昭和8年頃道路拡幅により移築された後、昭和18年からは愛北病院羽黒診療所として利用され、近隣の人々から親しまれてきました。
近年は住宅として使用されていましたが解体されるのを機に、平成11年犬山市が羽黒のまちづくり拠点施設「小弓の庄」として現地に移築復原しました。
明治期に多く建てられた、いわゆる「擬洋風」と呼ばれる和風建築に洋風を取り入れた建築様式で、唐破風の鶴の彫り物や竜の鬼瓦、漆喰の鏝絵装飾など職人の技が光る見どころがいっぱいです。
また内部も1階は吹き抜けのホールになっていて、回廊や欄間など明治期の地方銀行の特徴をよく残しています。
※小弓の庄~旧丹羽郡の犬山地区は藤原氏領の荘園で「小弓庄」と呼ばれ、羽黒がその中心といわれています。
◆小弓の庄(旧加茂郡銀行羽黒支店)/愛知県犬山市大字羽黒字古市場53-1
竣工:明治40年(1907)代→平成11年(1999)移築復原
構造:木造2階建
撮影:2012/04/15
〈参考資料〉小弓の庄パンフレット、旧加茂郡銀行羽黒支店建物復原の概要
■建物正面~寄棟造桟瓦葺、外壁は漆喰塗仕上げの明治期の典型的な擬洋風の銀行建築
■正面入り口の唐破風~鶴の彫物と龍の鬼瓦が見所
■壁の出隅と一階窓下の腰部分は隅石積を模した洗出し仕上げ
一・二階窓の間と軒廻りには蛇腹が廻る
■窓廻りには漆喰仕上げのペディメント、笠木、持送りのある窓台が付く
■建物背面の出隅部分には漆喰塗の鏝絵の装飾が施されている
■一階吹き抜けの玄関ホール~上部には回廊がめぐり、二階和室の欄間を見ることができる
■二階和室欄間の透かし彫り