最後にご紹介は「ハバナ型涙の滴」。。。正直、3機の内一番手間が掛かった時計。
救出した5機の内、最も状態は悪かったもののやはりそこは「涙の滴」のせいか、何とか蘇らせたかったため
約一月の内、その過半以上の時間と手間を費やすこととなった。
「ハバナ型涙の滴」については色んなタイプが出回り、元祖アンソニアを真似た国産の個体も多く、この時計も例外ではない。
文字盤は何故かスモールセコンド部分を紙で隠された文字盤に全く不似合いな剣。ムーブメントは後年入れ替えられたであろう
精工舎製で唯一、渦リンのみアンソニア製。ケースの底板は後年ベニアを入れられその厚さも箱に合ってなかった。
上宮の擬宝珠は欠品で下宮の飾りは途中で欠損。振り子も無い・・・。
正しく分解というか「解体」作業から始めなければいけない状態。
ムーブメント(精工舎製)はこのまま使うことにし、いつもの洗浄注油、調整を繰り返し施す。
慣らし稼働の時間(日数)を利用し先ずは文字盤の作成から。
どうせなら、ちゃんとした?アンソニアの文字盤にということでCADで作成し作り直す。
そして貼り付け。(文字盤のリング類も洗浄の後、磨き済み)
次に難関の下宮飾りの欠損部の補修?というか継ぎ足し作業。
木目(柾目)を合わすのに苦労した部分。そして、箱の底板も無垢材で作りお直し、上宮飾りの擬宝珠も追加。
そして、何となく「ハバナ型涙の滴」として蘇らせる。
振り子室のガラスの金細工模様はほぼ消えていて、微かに残っている部分も写真では分かり辛い。
ビーナスのお顔も結構、美しい方でこの鉛製の無垢材が洗浄過程でクエン酸と化学反応し金色に輝きだした時には正直、驚いた。
(依って、着色も何も施してない)
下宮飾りについてはやはり限界を感じた部分で、妥協としか言いようがない出来。
振り子は手持ちのもので代替。剣については時計の文字盤が非常に小さいため、短めの剣を更に
切断加工し装着。
この写真撮影の後、文字盤に合う剣が見付かったため今はバランスの良い状態で、こちらも「caffe 月の虹」
小上がりにて元気に時を刻み時を知らせている。(剣は交換済)