これはまるで奇跡かと思います。
小さな木箱(28cm×16cm×H20cm)は何十年もの間手つかずで開けられることもなく、
タイムカプセルのように何処かの押入れ奥深くに眠っていたようにも思えます。
その蓋を開けてみると中には今まで観たことも無いようなミシンが入っています。
説明書に注意事項が記された札、そして、この手の手回しミシンのヘッドを作業机に固定するクランプが付属。
説明書の裏表紙に記載された「書留小包及荷造料」の記載欄。そこには「内地」と「植民地」宛ての料金記載。
そのことから戦前の1930年代のものであることが理解できます。
取り出して各部をチェックしてみると何故、奇跡的にこのような綺麗な状態で残っていたのか、
その理由が直ぐに理解出来ました。
欠品部品もあるには有ったのですが何より、ミシン針が内部で折れた状態であったこと。
その残骸が残され、新たに針を着けることが出来なくなり、お蔵入りの運命を辿ったのあろうことが想像出来ました。
何とか折れた針の残骸を取り除き、分解しながらの欠品部品の取り付け。
革ベルトの伸びがあるため調子はイマイチですが調整を施せば使える状態です。
構造は下糸のない単環縫い(ステッチ縫い)。針目調整と糸調整のみの手回しミシンになります。
この「マリヤミシン」については資料が残っておりませんが説明書には「純国産」「新案特許」の文字と
当時の販売価格、ミシン本体:¥六円に木箱:¥一円と記載がございます。
当時、段々と「文化生活」が普及しつつあり、洋裁についても要求されて来た時代。
高額な舶来ミシンはどうしても手が届かない時に「東京洋裁研究會」が開発販売したミシンと思われます。
マリヤミシン:東京洋裁研究會/戦前: 非売品