「東京重機工業株式会社」。元は「東京重機製造工業組合」で、戦前から「九九式短小銃」等の
武器の製造に携わっていた組織。
それが戦後となり当然、武器の製造は中止され「東京重機工業株式会社」としてミシン製造へ移行。
その「重機」部分をブランド名とし「JUKI」となりました。
そんな、「JUKI製ミシン」が入荷しました。
一旦、鉄脚部と机部そしてミシンヘッド(カマ)部といつものように外し、荒掃除を掛けた状態にします。
今後、それぞれを修理レストアして行くわけですが、今回は相当な手間が掛かりそうです。
何といっても机部分の状態が宜しくありません。
又、仕上がり次第にこの場でご紹介いたしますが、年越しは必至のようですが気長にお待ちください。
尚、この場で「足踏みミシン」をご紹介するにあたり、今までは相場よりも安価にてご提供して来たわけですが
折からのアンティークミシンの品薄状態(使えるミシンとして)、及び各部品の入手状況の困難さ等を鑑み
値上げさせて頂くこととなりました。心苦しいですが何卒ご理解のほど宜しくお願いいたします。
時計としての機能を修理したところで、お次は木製外箱のレストア作業へ。
案外、こちらの方が手間が掛かったりもしますが、先ずは古い塗料を全て剥がす作業から。
一部、カケや欠損部分があった個所は木パテで修正を同時に掛けます。
そして、オイルステインを拭取り塗装の上、新しいクリアーニスを塗って終了です。
後は、内部の機械部分を組み込めばレストアも終了となります。
最も機械造形美が際立つセレクトピン部分。
今回は風防リムとセレクトピンのリムは磨いて金属の素地のまま仕上げております。
背面のエンブレムは珍しく良い状態を保たれていましたので見栄えも良いです。
当時の特許番号もはっきり読み取れます。
後、電源ケーブルは安全上、現在の物に取り換えましたがプラグ部分は珍しいマツダ純正オリジナルで
よく観察すると刻印が打ってあります。
そして、以前ご紹介した個体と並べてみます。
今回、レストアした個体にはメインスイッチが側面に装備されてないことが分ります。
どちらが古いかと考えると当然、メインスイッチがない方が古いと考えるのが普通ですかねぃ。
まぁ~どちらにしても70年は裕に超えている電気時計。あくまでも電化製品ですから
たまにプラグをコンセントに差し、楽しむ程度が妥当なのかも知れません。
マツダ セレクトスイッチ電気時計/昭和11年(1936)から戦前(1940)頃まで発売
戦争と共に電気の供給が不安定となり製造販売中止。
以前も、この場でご紹介しました「マツダ セレクトスイッチ電気時計」が入荷。
見てくれは、やはり80年近い経年のため決して宜しくない・・・。
木製外箱の状態も所々の欠けやクリアーニスの劣化、各金属部の腐食に凸面風防ガラスの内側の汚れと・・・。
そんな朽ちた外観より何より、時計としても動かないことが最大の難点。
早速、裏蓋を開けて内部の構造を診てみる。
配線は生きているようですが被膜の劣化と共に、配線が違うような気がするためこの際、配線を引き直すことに。
配線を切断する内、ご覧の通りの劣化具合。(この状態では大変危険だったことが分る)
新たに配線を引き直し、電源ケーブルも新しい物に交換後に通電テスト。
すると、「ジー」っと言う音はするものの針は動こうとしない。
正確には「動こうとはしているものの動かない」と言った方が分り易い。
こう言う場合、先ずモーターが怪しい。経年により内部の油が固着しているかコイルが断線しているかのどちらか。
モーター部を取り出しギアを動かそうとするもビクともしない。これは間違いなく油の固着が原因。
取り外したモーターの突起部分にあるハンダは唯一のモーター内部に繋がる穴を塞いだもので、
それを外し内部にCRCを充填する。
暫く、暖房器具の前でモーターを温めながらギアに力を加え固着を解く作業。
すると、逆さにしたモーターから黄色い油がポタポタと溶けて漏れ出し固着が解かれる。
ギアも無事、動くようになった段階で組み込み再度、通電テスト。
クリーングされた風防の中の文字盤の上を秒針が時を刻みだし蘇る。
そして、お次はセレクトタイマースイッチの動作確認。
スイッチを「手動」から「自動」に切り替え、通電したい時間帯のピンを引っ張る。
気を付けなければいけないのが、一つのピンが「0分~15分」を担当するということ。
下の写真で少し見辛いですが、6時30分から7時までのピン3本を引っ張り設定すると
「30分間」の通電ではなく「45分間」の通電になるということ。つまり、この場合は「6時30分」から
「7時15分」までタイマースイッチで通電するということになります。
セレクトタイマー機能も無事、確認したところで、後は朽ちた木製外箱の再生。(次回、この場でご紹介します)