素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

あせび

2023年03月26日 | 日記
 先日、松阪から国道369号(伊勢本街道)を通って帰ったが、榛原で国道165号(初瀬街道・伊勢北街道)に合流して桜井で右折して国道165号(上街道)で奈良公園を抜けた。奈良公園はアセビが多く育っていると聞いた。壺形の小白花を総状に垂れる姿は趣きがある。万葉びとは、アセビの花を手折って恋人に贈ったと読んだことがあるが、なんとなく分かる。
 
優美なイメージに反して、アセビには毒があることはよく知られている。「広辞苑」にも「全体が有毒、牛馬が食うと麻痺するというので【馬酔木】と書く」とある。

 奈良公園にいる鹿は、放し飼いにされていて、公園内の草や木の葉を自由に食べるが、有毒な物質を持つアセビは避けているので奈良公園にはアセビが多く育っているという人もいる。

 それならば、「鹿酔木」でも「牛酔木」でもいいのになぜ馬か?という疑問に、「漢字の植物苑」で円満字さんは次のように書いている。

 「弥生時代に大陸からの渡来人が連れて来た馬が、何も知らずに日本原産のアセビを食べてひっくり返ってしまったなんてことも十分にあり得ます。そのころまで、日本列島には馬はいなかったと考えられています。だとすれば、猛スピードで走り、重い荷物だって運んでくれる馬は、当時、日本列島で暮らしていた人々にとっては、文明の進んだ世界からやって来た、生活を劇的に楽にしてくれる、とても役に立つ動物だったにちがいありません。
 そんな時代の最先端を行くものが、どこにでも生えている木を食べただけでひっくり返ってしまうとは!【馬酔木】という漢字での書き表し方には、そういう驚きを見るべきなのかもしれません。」


 漢字1つにも想像力を働かせると面白い。
コメント
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