まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

世界のクリスマスコマーシャル(その2)—マクドナルドUK

2022-12-21 21:46:35 | 広告
この時期、クリスマスのコマーシャルが世界各地で放映されています。前の記事では家庭用品オンラインのArgos社の作品をご紹介しましたが、今日は英国のマクドナルドの「ザ・リスト」という作品をご紹介します。楽しさをストレートにアピールするだけがクリスマスコマーシャルではないのです。ちょっと切なく、悲しい気分になるのですが、そんな中でささやかな家族の幸せを感るという作品です。まずは、ご覧いただきましょう。



ストーリーをおさらいしたいと思います。集合住宅に住んでいる少年と両親。母親のアドバイスで、男の子がサンタクロース用に贈り物リストを書くことにします。一生懸命リストを書く少年。



あれもほしい、これもほしいということで、リストがどんどん増えていくので、紙を継ぎ足していきます。あまりにたくさんのリストを見て、決して裕福ではなさそうな両親は、少々複雑な表情。いつの間にか、リストはすごい長さになってしまっています。



ある日、両親と一緒に街に出るのですが、少年が大事そうに持っていたリストが風に吹かれて空に舞い上がってしまいます。手が届きそうなのですが、リストは風にのって上空に消えていってしまいます。



せっかく頑張って作ったリストが無くなってしまったので、落ち込んでしまう男の子。それを両親が慰めます。



家族が向かう先は街角のマクドナルド。カウンターで両親に何かを話している家族の姿が、何か幸せそうでほろりときます。



店を出る時はもう暗くなっていて、雪も降り出しているので、相当長い時間、いろんなことを話したのでしょう。



上空に消えてしまったリストですが、かろうじて手元に残った紙切れには、両親の真ん中で手をつなぎ合っている少年の絵。



それはまさに家路に向かう家族の姿だったのです。



少年はこの絵をクリスマスリストに入れていたのですが、これだけは夢が叶ったというわけです。たくさんのプレゼントよりも最も大切なものをもらえたということなのかもしれません。



最後に出てくる“Are You #ReindeerReady? とは「(サンタの)トナカイの準備はできていますか?」という意味です。これは以前から使われているタグラインなのですが、マクドナルドというブランドが家族のささやかな幸せを大切にする素敵なブランドというのが伝わってきます。

このコマーシャルを作ったのは、英国のレオ・バーネットという世界的な広告代理店なのですが、監督として起用したのがトム・フーパー(Tom Hooper)です。映画「レ・ミゼラブル」や「英国王のスピーチ」を監督した人です。すごい人が作っていたんですね。そう思ってみると、もはや映画作品です。素晴らしいですね。

切ないなかにもほのぼのとした暖かさが滲み出てくる作品なのですが、両親の配役もあえてモデルっぽくない普通の人をキャスティングしているのもよいですね。少し生活に疲れた感じもあり、おそらくそんなに豊かな家庭ではないと思われるのですが、男の子のリストを全部実現するのは家計的に無理だったかと思うと、余計に切なくなります。

あと、この作品で使われている音楽についても語っておかなければなりません。このコマーシャルで流れている曲は、ベッキー・ヒル(Becky Hill)という歌手の“Only You”という曲です。ミュージックビデオはこちらをご覧ください。
Becky Hill “Only You”


ベッキー・ヒルは、1994年2月14日生まれの英国の歌手ですが、オーディション番組の2012年のThe Voice 出身です。2022年にBrit Awardで彼女が歌う“Remember”という曲がSong of the Yearにノミネートされています。まだ最近の歌手なのですが、彼女の切ない歌声が冒頭から最後まで流れています。

実はこの“Only You”というのは、彼女のオリジナルではなく、1982年にヤズー(Yazoo)が歌って大ヒットした曲なのです。50代、60代の人が聞いたら懐かしさでいっぱいになるんでしょうね。



今年のクリスマスコマーシャルはまだまだいろいろとありますので、クリスマスが来る前までになるべくたくさんご紹介していきたいと思います。
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世界のクリスマスコマーシャル2022 (その1)— 英国アルゴス社の“They're Coming. Be Ready"

2022-12-20 22:37:08 | 広告
毎年クリスマス時期には、欧米で11月くらいから数多くのクリスマス向けのコマーシャルが作られています。2020年、2021年とパンデミックでクリスマスの集まりも制限されていて、クリスマスの楽しさを表現したコマーシャルはほどんどなかったのですが、2022年の今年は、人々がリアルで会って、喜びを分かち合えるという雰囲気のものが戻ってきた感じがあります。

日本だと、海外のクリスマスコマーシャルを見る機会はあまりないのですが、欧米のこの時期のコマーシャルを見ると、クリスマスがいかに大切なイベントであるかがよくわかります。またそこで表現されている家族や愛する人たちとの関係も心温まるものがありますし、家庭の食卓やお店の雰囲気など、このシーズン独特の雰囲気を映像で楽しむことができます。とくにイギリスのものが多いですが、数ある作品の中からとくに印象的な作品をご紹介していきたいと思います。

何作品かまとめて紹介しようと思っていたのですが、一つ一つの作品について説明していたら、かなりの分量になってしまいそうなので、とりあえずは作品をひとつづつ紹介していったほうがよいだろうということで、今回はこちらの作品を取り上げてみました。クリスマスまでには五月雨式にアップしていきたいと思います。どこまでできるかは何とも言えませんが。

で、最初にご紹介するのが、英国の家庭用品のオンラインショップ「アルゴス」の作品です。まずは動画をご覧いただきましょう。



家の台所で、カップルが、クリスマスのお客さんを迎える準備をしています。



「で、何人くるのかな?」と尋ねる主人に、「ほんの数人」と答える妻。画面が切り替わると、パーティーに参加するために駆けつけてくる人々。赤ん坊もいれば、ケーキを持った奥さんたち。枕をかかえ、スーツケースを引いて数日の宿泊想定で来る老人たち、子供たちもいます。押し寄せる大群衆の地響きで、台所の夫婦は徐々に不安に。スパークリングワインの栓が抜かれたりして、もはや押し寄せる群衆はクリスマスパーティー状態。台所の奥さんは、「何とかなるわよ」と自分に言い聞かせようとします。



群衆の映像と、盛り上がる音楽とともに、“THEY’RE COMING BE READY”の文字がまるで大スペクタクル映画のタイトルのように画面に登場します。そして、主人がスマホを手にして言うセリフが、「大きなボウル(お皿)が必要だな」。スマホ画面には、アルゴスでボウルの注文画面。



そしてドアベルが鳴り、アルゴスのロゴが決まる。

この大げさなスケール感がよいですね。まさかこんなことは実際にはないのでしょうが、予想よりも人数が多くなってしまったということはありえること。そんな時のためにアルゴスでちょっと大きめのものを用意しておきましょうということです。これほどの数の来客があったとしたら、お皿を大きくするというくらいの解決策では無理なのですが、見事なオチですね。見ている人は、思わず突っ込みたくなるのだと思います。「そんなんじゃ無理だろう」と。というか、こんなにたくさん来たら、家に入りきらないですけどね(汗)。

これはロンドンのThe&Partnershipというクリエイティブエージェンシーの作品。2013年設立の代理店で、現在は世界的ネットワークのWPPグループの傘下に入っています。ちなみにこちらがその会社のサイトです。

https://theandpartnership.com

ではまた次の作品をお楽しみに。
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2022年カタール・ワールドカップに関連する世界のコマーシャル

2022-12-12 16:26:29 | 広告
2022年のカタールでのワールドカップは、日本が強豪ドイツやスペインを破ってベスト16になるなど大いに盛り上がりましたが、世界での盛り上がりもすごいものがありました。日本ではあまり見る機会がありませんでしたが、この4年に一度の世界的イベントのために、大手ブランドは巨額を投じてテレビコマーシャルを制作し、ワールドカップを盛り上げていました。ここではそんなコマーシャルをご紹介したいと思います。

Frito-Lay | Soccer or Football?

ポテトチップスのレイズ(Lay's)で世界的に有名なブランドのフリトレイのコマーシャルです。



英国のデビッド・ベッカムとアメリカンフットボールのペイトン・マニング(Peyton Manning)が、「サッカー」か「フットボール」かの論争を行います。アメリカでは「フットボール」と言えば、アメリカンフットボールのこと。アメリカ人にとってFIFAワールドカップで行われているのはあくまでも「サッカー」です。ところが英国では、「フットボール」。イギリス英語とアメリカ英語の違いなのですが、これが面白おかしく描かれています。

さらに、ポテトチップスはアメリカでは「チップス」というのに対して、英国では「クリスプス」と言ったり、サッカーのスパイクはアメリカでは「クリーツ」(Cleats)と言うのに対して、イギリスでは「ブーツ」という細かな違いも表現されています。

言葉は違えど、ワールドカップを見ながらつまむのはフリトレイの商品ということが表現されています。このコマーシャルを監督したのは有名映画監督のマイケル・ベイというのですからすごいですね。登場人物といい、スケール感といいすごいですね。

Adidas | Messi, Bellingham, Pedri, Benzema, Son, Hakimi, Gnabry

アディダスのコマーシャルですが、有名選手を惜しげもなく使っています。



さすがアディダスですね。

NIKE | 'GOAT Experiment'

ナイキの"GOAT Experiment"というコマーシャル。“GOAT"というのは“Greates of All Time"ということで歴代最強選手は誰かを実験室で確かめるという映像です。



こちらも錚々たる選手が登場してきます。エムバペ、ロナウジーニョなどいろいろと出てきて、実験室がスタジアムのようになってしまいます。

Coca-Cola | Street | 2022 FIFA World Cup™

こちらはコカコーラ。セレブリティーは登場しませんが、どこかの国の裏通りで、コカコーラを飲んでいる少女が、ワールドカップの歓喜に巻き込まれていくという映像です。



McDonald’s | Wanna Go To McDonald’s?

こちらはマクドナルド。ワールドカップ観戦中も、試合に負けた後も、いつでもマクドナルドが食べたくなるというストーリー。最後のオチは、ゲイのカップルなんでしょうか?「マクドナルドに自分だけ行ってきて、何で言ってくれなかったの?」今時のダイバーシティの設定ですね。



Pepsi | #ThirstyForMore

ペプシのコマーシャルです。中東の街でサッカーが行われますがメッシなど有名選手が登場してきます。まるで「アラジン」の街頭シーンのようですね。




Kia | Every Four Years

こちらは韓国の自動車メーカーKiaのコマーシャルです。有名スターは登場しませんが、4年ごとに世界中で盛り上がるワールドカップを表現しています。国を超えてすごい人気だというのがよくわかります。



ここでご紹介したのはほんの一部なのですが、FIFAワールドカップがいかに世界的なイベントなのかを感じていただけたのではないでしょうか。
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広告コミュニケーション世界の2022年の動向

2022-01-23 23:17:20 | 広告
2022年が始まってすでに一ヶ月が過ぎようとしています。昨年末に2021年のまとめを自分なりにしないといけないと思っているうちに月日が経ち、こんなタイミングになってしまいました。そうこうしているうちにオミクロン株が広がり、コロナ感染者数も急拡大の途上にあります。これからの2022年がどんな年になるのか不透明な部分がありますが、特に広告コミュニケーションの分野において予測されることを自分なりにまとめておきたいと思います。

まず、2021年の振り返りとして、GOOGLEが毎年発表している、”Year in Search 2021”の動画を見てみましょう。一年間で最も検索されたワードを集めた動画です。



2020年から世界に蔓延したコロナは、2021年になっても収束しませんでした。ワクチン接種が行われ、感染も収束するかと思われたのですが、デルタ株やら、オミクロン株やら新たな変異種が登場し、未だに感染は継続しています。

今後のトレンドは感染の状況によってわからない部分もありますが、個人的に見た世界の2022年のトレンドを10個にまとめてみたいと思います。

1.コロナ禍でも広告費は伸びてゆく



2020年はマイナス7.2%だった世界の広告費成長率は、電通グループ資料によれば、2021年に+10.4%で増加し。2021年中に、コロナ前の2019年の水準を回復、2022年には+7.2%で伸び、過去最大の約6,800億ドルに達するとの予測です。

日本市場も、2020年はマイナス成長でしたが、2021年には回復基調(日経広告研究所によれば、2021年の広告費は前年度比+10.4%)、2022年の成長率は4.2%になると見られています。

2022年のオミクロン株による感染の急拡大のため、この予測も修正が必要かもしれませんが、成長率は多少鈍化しながらも、成長は続いていくと思われます。

中でも成長が見込まれるのは、デジタル広告費。世界的に見ると、2021年には前年比+5%以上で増え、世界の総広告費に占める割合がすでに50%を超えた模様です。

日本でも、デジタル広告は2019年にテレビ広告費を凌駕。2020年はデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速が追い風となり、2021年のインターネット広告の成長率は21%と見られています。広告メディア全体の中での主導権が、主要4媒体からインターネット広告(デジタルメディア)に移りつつあると言えるでしょう。

広告に関する信頼度という点で見ると、新聞やテレビのほうが世界的にデジタル広告よりも高いというデータもあります。
ジャンル別に見ると、世界的には、シネマアド(+28.1%)、屋外広告・広告交通広告(+9.2%)の伸びが顕著です。全広告費に対するシェアは、シネマアドは0.4%と小さいですが、屋外広告・交通広告は5.6%となり、新聞(4.7%)やラジオ(5.4%)を抜いて、テレビの次の主要媒体カテゴリーとなっています。

国別に見ると、2022年に最も広告費の成長が見込まれる国はインド(+12.1%)。その次は、ラテンアメリカ(12.1%)、英国(8.5%)となっています。英国は感染がピークアウトしつつあるとか言われていますが、インド、ラテンアメリカは1月に入って感染が急拡大しているので、広告費の伸び率がいくぶんか鈍化する可能性もあります。

2.世界の広告業界の合従連衡



世界の広告業界は合従連衡が進んでいます。中国の春秋戦国時代や、三国志の時代を見ているような感じです。世界の広告業界は、いくつかの巨大グループに統合されています。

現在世界最大なのは、WPPというエージェンシーグループ。この傘下には、ワンダーマン・トンプソン(JWTがワンダーマンと2018年に合併)、オグルヴィー(オグルヴィー&メイザーが2018年に改名)、グレイ(Grey)、ヤングアンドルビカムなどの広告代理店、メディアエージェンシーのグループM(マインドシェア等)、CI/VIのランドーアソシエイツ、ヒル&ノールトンなどのPRエージェンシーなどがあります。

二番手はBBDO、DDB、TBWAなどを傘下に持つオムニコムグループ。そして三番手は、ピュブリシス、サーチ&サーチ、レオバーネット、BBH、ファロンなどを傘下に持つピュブリシスグループです。

売上規模四番手に入っているのがアクセンチュア。以前、アーサーアンダーセンと言っていたコンサルティングファームなのですが、デジタル分野を中心に広告業界の大手になってしまっているんですね。著名なクリエイティブブティックを何社も買収していて、今後さらに規模を拡大していくものと思われます。

7位のデロイト、9位のPWC(プライスウォータークーパーズ)もともに世界的なコンサルティングファームです。世界の広告業界のプレイヤーが大きく変わってきています。

5位に入っているのが電通グループ。6位がマッキャン、FCB、RG/A等を傘下に持つインターパブリックグループ(IPG)です。

8位にIBMが広告業としてランクインしてますし、10位には中国系のPR会社の藍色光標伝播集団(Bluefocus Communication Group)が入っています。世界の広告代理店地図が随分変わってきていますね。

3. SDGs(サステナビリティ)の重要度が増す



SDGsは2015年の国連サミットで採択されたもので、すでに数年の歴史があるのですが、これが広告コミュニケーションの世界でもますます重要な概念になってきます。

世界の広告クリエイティブの祭典カンヌライオンズにSDGs部門が新設されたのは2018年。日本でも、2020年に電通広告賞にSDGs特別賞が新設されました。

また2021年12月22日に電通が「サステナビリティコミュニケーションガイド」を発表し、広告表現においてもサステナビリティを踏まえた表現が重要になっています。「サステナビリティ」は、地球温暖化やカーボンニュートラルなどの環境問題だけでなく、ダイバーシティーや人権、インクルージョン等も重要なコミュニケーション課題となっています。インクルージョンとは、あらゆる人を社会や組織の一員として尊重する考え方ですね。

「人権デューデリジェンス」や、ESG(Environmental, Social, Governance)も類似の概念ですが、コーポレートコミュニケーションで重要な視点となりつつあります。

また、欧米ではDEI (Diversity, Equity, Inclusion)という言葉もよく使われるようになっています。「多様性、公平、包括」という意味ですね。DEI(デイ)という言葉が日本でどこまで広がるかわかりませんが、世界の広告業界ではこの言葉が頻繁に登場してくるのではないでしょうか。

企業コミュニケーションもこの文脈に沿ったものが求められるし、クリエイティブ表現もこれを踏まえたものにする必要があります。

4.「パーパス (Purpose) 」という言葉が流行る



海外ではコロナ前から頻繁に使われるようになった言葉ですが、企業の存在理由、ビジョン、志などを包括した概念です。日本ではカタカナ語でそのまま使われるようになるのはよくありますね。例えばオリンピックでよく使われた「レガシー」という言葉。翻訳しにくい概念だったのですが、カタカナで定着しましたね。「パーパス」も同じで、広告コミュニケーションの分野でよく使われるようになるものと思われます。

3年くらい前、シンガポールで広告業界のセミナーに参加した時、「パーパス」という言葉があたりまえのように使われていました。

広告コミュニケーションにおいても、単に商品やサービスのメリットを訴求することだけでなく、企業の「パーパス」を感じ取ってもらうことが重要なコミュニケーション課題となっています。「ソーシャルグッド」(社会によい影響を与える取り組みや活動)や、「エシカルブランディング」(倫理的ブランディング)などの言葉も流行するようになっていますが、企業は、商品やサービスを販売して利益を拡大していくということをビジョンとするのでは不十分で、その奥にあるフィロソフィーが重要になってきているんですね。

5. メタバース (Metaverse) で体験が変わる



メタバースは変化や超越を意味する「メタ」と宇宙を意味する「ユニバース」が合体してできた言葉で、インターネット上に構築された仮想空間を意味しています。

2021年10月28日、マーク・ザッカーバーグはFacebookという社名をMetaに変更することを発表しましたが、メタバースへの大きな方向展開を意図したものだと言われています。

Facebook以外にも、マイクロソフト等の企業もメタバースを強調してきていますし、アメリカのラスベガスで2022年1月上旬に開催された世界最大のテクノロジー見本市のCES(セス)= Consumer Electronics Showでもメタバースは主要テーマの一つでした。

今後、メタバースの技術革新により、展示会、屋外広告、エンターテインメントなど様々な分野でユーザー体験が進化していくものと思われます。

6. OTT/Connected TVでメディアが変わる



OTT (Over-The-Top) とは、インターネット回線を通じて配信されるコンテンツのことです。ネットフリックス、フールー、アベマ、ティーバー、スポティファイなどはみなOTTですね。

コネクテッドTVとは、コンテンツを視聴する時に使用されるデバイスを意味します。現在、日本の量販店で販売されている最新テレビはほとんどがインターネット通信機能を持つコネクテッドTVで、消費者の68%がテレビからインターネット接続可能となっています。

これに伴い、コネクテッドTV広告が増加しています。米のコネクテッドTV広告市場は2021年に113.6億ドル(約1兆1千万円)、2022年には24%超の伸びが見込まれています。

国内では2020年に102億円、2022年には58%伸びると見られています。コネクテッドTVは、従来のテレビと違い、各ユーザー特性や、場所、時間などでターゲティング可能なので、よりパーソナライズ化された広告配信が可能になっていきます。今後ますます拡大する分野と思われます。(情報ソース: https://otonal.co.jp/blog/11621

7. NFTがオンライン取引を変える?



NFTとは非代替性トークン (Non-Fungible Token)の略語で、デジタル世界でオリジナルファイルと認証する方式です。オンラインのデータは簡単にコピーできてしまうのですが、これをコピーできなくし、本物であるという鑑定書をつけるような感じがNFTです。アート、スポーツ、ゲーム、音楽、ビジネスなど様々な分野での活用が見込まれます。広告業界の動きとしては、例えば、広告枠をNFTとして販売する実験等も行われているそうです。

今後もいろいろな活用が展開されるものと思われます。

8. 韓国パワーが世界を席巻




韓国のエンターテインメントの人気は世界的に拡大しています。アカデミー賞でも「パラサイト半地下の家族」や「ミナリ」等、韓国映画の受賞が続いていますし、2022年も「イカゲーム」が世界的に話題になりました。

音楽分野では、BTSはもやは世界的なトップスターだし、他の音楽タレントも世界での存在力を増しています。

欧米のハイブランドで韓国のタレントをグローバルのアンバサダーとして起用するケースも増えています。「世界で最も美しい顔2021」(女性)および「世界で最もハンサムな顔2021」(男性)の中でも韓国勢が上位にランクされています。その数も日本のタレントの数をはるかに超えています。

ちなみに、男性の3位はBTSのVだし、5位はBTSのジョングク(2019年は一位)。女性の一位はタイ人ですが、韓国のブラックピンクのLisa、5位は韓国グループのMomolandのNancy、10位は韓国グループのAfter SchoolのNanaでした。

また、Campaign Asiaが毎年行っているブランドランキングでは、Samsungが10年間トップを維持しています。Samsungは日本のみ圏外ですが、アジアのほとんどの国で1位のブランドとなっています。

9. 世界が注目するZ世代 



Z世代とは、1997年から2012年代生まれ(1995年から2010年と定義する場合もあり)で、現時点では25歳以下の世代を指す言葉です。アメリカでは20%を超えており、マーケティング上も重要な世代となっています。世界の全人口におけるZ世代の人口比率はおよそ3分の1で、とても大きな人口規模です。日本では世界の比率とはかなり少なくて、人口の14%と言われています。

生まれた時からインターネットがあった彼らの特徴としては、マスメディア離れが顕著で、社会問題への関心が高く、ブランドに対するこだわりがあまりないと言われています。また、彼らの間では、Facebookはすでに人気がなくなっていて、インスタグラムやTikTokの人気が高くなっています。

10. 中国との距離に悩む世界



まもなく北京オリンピックですが、現地での感染拡大で心配が増えていますね。イアン・ブレマーが発表した「今年の10大リスク」のトップが、「中国のゼロコロナ政策の失敗」となっています。またリスクの4位が「習近平政権の統制強化で中国経済が低迷」となっています。これまで行け行けドンドンで拡大してきた中国に暗雲が立ち込めています。

市場としての中国の魅力はありながらも、世界はますます脱中国化を進めていくと思われます。製造業も中国依存を見直しています。ウィグル問題、香港や台湾への圧力、南シナ海の問題、中印国境問題など、周辺諸国との軋轢が強くなっており、米国をはじめ各国が中国との距離を取りつつあります。

トルコ、チェコ、リトアニア、ポーランドなども中国への反発、ないしは台湾支援を示しています。香港、台湾、タイのアジアの若者たちもオンラインで「ミルクティー同盟」を結成し、民主化で連帯。それは、ミャンマー、インドなどにも広がっています。

中国は国内では少子高齢化が今後ますます加速し、高齢化の問題が拡大しています。

中国Z世代は、一人っ子政策のため全人口の18.2%ですが、それでも2億6千万人の人口規模となっています。中国は市場としての魅力は存続しつつも、中国をめぐって世界はイライラしながら、関係を模索していくものと思われます。

*********

私は東南アジアやインド、バングラデシュなどに向けての広告を専門にしていますが、今後はビジネスチャンスが増えていくとを期待しています。コロナ禍が続きますが、2022年が皆様にとりましても商売繁盛の年となりますことをお祈りしております。
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2021の世界のクリスマスCM

2021-12-26 07:22:44 | 広告
毎年、クリスマスになると、世界中でクリスマスをテーマにしたコマーシャルが作られています。これに関して、記事を書こうと思っていたら、もうクリスマスが過ぎてしまいました。しかし、英語で“Never too late than never"と言われるように、遅くなっても、やらないよりはいいと思うので、何とか4点ほど印象的だったコマーシャルをピックアップしてご紹介したいと思います。

英国のデパート、ジョン・ルイス&パートナーズの「予期せぬ来訪者」

クリスマス前に少年が近所の森の中に着陸したUFOの宇宙人の少女と出会います。地球人と宇宙人という隔たりを超えて芽生えていく愛情。やがて壊れていたUFOが直り、地球を去っていく宇宙人の少女。映画のようなストーリーですが、プレゼントで心を通わせることの大切さをアピールしている作品です。



ジョン・ルイス&パートナーズとは、1864年創業の英国の老舗高級デパートで、毎年クリスマスの時期には、こういったコマーシャルを作っています。

コカコーラの「本物の魔法」

コカコーラも毎年優れたコマーシャルを作っていますが、今年の作品も感動的です。舞台となるのは、ちょっと寂れたアパート。クリスマスが来るのに住人たちは、みんな孤独で、つまらなそうです。一人で寂しいクリスマスを迎える老人もいます。このコマーシャルでは、母親と二人で住んでいる少年が主人公になるのですが、テレビでサンタクロースが煙突から入ってきてプレゼントを届けるというアニメを見て、あることを思いつきます。煙突のないアパートに、ダンボール箱で煙突を作ってしまおうというアイデアです。一生懸命、ダンボールを集めて、煙突を作るその姿に、アパートの住人も協力します。監視カメラを見ていた警備員も、この出来事を見て驚き、屋上に駆けつけるのですが、空に向かって伸びた煙突の一番上に、警備員が乗せるのがコカコーラの空き箱なんですね。壮大なダンボールの煙突ができるのですが、さてこの煙突で何がおきるかは、こちらの動画でご確認ください。



ダンボールの煙突を使って、老人の部屋に届けられたのは、このアパートで開催されるパーティーへの招待状でした。繋がりがなく、寂しい生活を送る住人たちが、少年の奇抜な夢で一つになり、楽しいクリスマスを迎えることができたというわけです。

ポーランドナンバー1のECサイト、アレグロ社の「本当に重要な事」というCM

アレグロはポーランドでは有名なECサイトなのですが、このコマーシャルも感動的です。娘が彼氏を連れてきて、父親に紹介するというところから始まるのですが、この彼氏が、刺青をしていたり、過激なファッションをしていたりすることで嫌悪感を抱く父親。娘の交際を認めようとはしません。この問題で、家庭内は険悪な状況になってしまいます。実はこの父親は病院で働く医師ということで、病院で懸命に働く姿が映し出されます。その中で患者を笑わせたり、勇気付けたりする一人の青年医師の姿が印象的です。とても人の良いその青年のおかげで病院は明るくなっています。ある日、父親が胸に挿していた万年筆のインクが白衣に溢れてしまいます。それを見て、青年医師はスマホでアレグロのサイトで何かを注文します。何とかもう一度だけ彼に会って欲しいと懇願する娘。そして、雪の降る夜、奇跡が起こります。



プレゼントを父親に渡す彼氏。それは万年筆でした。そして、その彼氏は、病院で働いていたあの青年医師だったんですね。マスクをしているし、腕も覆われていたので、わからなかったのですが、その彼だったとわかり、父親も交際を認めることになりました。人を外見だけで判断してはいけないということなんですね。コロナ禍でマスクを外した顔しか知らない人が多いですが、こういう時代だからこそ成立するストーリーです。

ドイツの通販サイトのメディア・マルクトの「サンタのヘルパー」

メディア・マルクトはドイツを中心にヨーロッパで展開する通販サイトですが、ここのコマーシャルはサンタクロースが主人公。プレゼントを準備するサンタクロースはクリスマス前で大忙し。妖精たちの助けを借りて、その準備はまるで工場のようです。いかにもドイツの工場のような感じで、作業は完璧に進んでいるのですが、一つの意味不明の手紙で作業は緊急停止。クリスマスにプレゼントをもらって喜んでいるという絵なのですが、それを解決するために一人の妖精が、メディア・マルクトに行けば解決するのではとアドバイスします。メディア・マルクトを訪問したサンタクロースおよび妖精たちが見たもものとは。



最先端の楽しいプレゼントの数々。そして、サンタクロースのそりも、最先端の巨大ドローンのような乗り物になり、これまで以上に迅速に効率的にプレゼントを届けられるというメッセージ。面白いですね。

これ以外にも、いろいろとあったのですが、印象に残った4点だけセレクトしました。アップルの雪だるまや、サムスン、アマゾンなどもいい作品を作っているのですが、ここでピックアップほどではないという感じでした。おそらく見落としている素晴らしい作品もあるかと思いますが、来年はもっと早めに準備してみたいと思います。

それではみなさまよいお年を。


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