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映画「レ・ミゼラブル」におけるメロディーの繰り返しと構造美

2013-05-06 18:57:56 | 映画

以前このブログで「レ・ミゼラブル」の歌詞に秘められた美しい韻の秘密 という記事をアップしましたが、この映画を何度も見ているうちに、英語の歌詞が美しいというだけでなく、全体の構造が実に見事に組み立てられていることがわかってきました。

映画を何度か見ているうちに、同じメロディーが違うところで、別の登場人物によって歌われるのを発見します。英語の歌詞が韻を踏んでいるのと同じように、同じメロディーが別の場所で繰り返し登場してきます。そこに全体としての心地よさを感じます。

例えば、最初のツーロン徒刑場での、囚人の歌。ジャンバルジャンを含む囚人たちが、船を引きあげるシーンで歌われる歌。

これが、パリの下町のサンミッシェルで貧民たちによって歌われるのも"Look Down"。

上と下の対比というのもこのミュージカルで繰り返されるテーマです。パリの貧民街では、金持ちたちに向かって、乞食たちの悲惨な姿を見てくれということで"Look Down"という言葉が使われています。また、ジャンバルジャンがマリウスを担いで下水道から出ようとする時に出口で見下ろしているジャベールに対して、"Look Down"と訴えるところも印象的です。

司教がジャンバルジャンに銀の燭台を与えるシーンでの歌。

このテーマは、パリでコゼットと一緒に逃げて、修道院に逃げ込むシーンでも使われています。

そして極めつけは、マリウスが、ABCカフェで一人切々と歌う"Empty chairs at empty tables"。


ジャンバルジャンが過去を切り捨てて生まれ変わる決意をする時の歌と、ジャベールが自殺する時のシーンもメロディーが同じです。

教会の俯瞰の映像で、ジャンバルジャンが破り捨てた紙の一部が空に舞っていくシーンが印象的でしたね。そしてこちらはジャベールが自殺をする直前に歌われる歌。

川にジャベールが落ちていきます。

仕事を解雇されたファンティーヌが辿りつく夜の街で歌われる"Lovely Ladies"。

バリケードの戦いが終わって、街の女性たちが道路を拭いているシーンでもこのメロディーが。


そして、ファンティーヌの死の床のシーン。

このメロディーがエポニーヌの"On My Own"と同じです。

そして最後のシーンで、ジャンバルジャンがファンティーヌに誘われて天国に行くところでもこのメロディーが聞こえてきます。


このミュージカルを一つの建築物として見ると、宮殿や教会のように、同じモチーフが見事に配列されていて、細部にまで、見事なパターンが繰り返されているという感じです。

音楽や詩の構成だけでなく、様々に張り巡らされた対比も美しいですね。ジャンバルジャンとジャベール、コゼットとエポニーヌなどの人物の対比もあれば、金持ちと貧民、法と愛、高貴な世界と俗世界の対比などが様々に交錯しています。対比として最も象徴的なのは、ABC Cafeで学生たちに
よって歌われる"Red and Black"でしょう。

怒れる者の血潮の赤と、暗黒の過去の黒、
夜明けの太陽の赤と、終わるべき夜の黒
という色の対比が非常に鮮明です。

「レ・ミゼラブル」の映画、こうしてみると奥が深いですね。DVDも間もなく発売されますが、いろいろ発見できるので、何度見ても面白いですよね。

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コメント (3)
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