まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

イタリアのコロンバとヨーロッパのイースターのダイバーシティー

2022-04-17 10:19:25 | 食べ物
3月の終わり頃、偶然通りかかった東京駅の近くのイタリア食材店のEatalyというお店で、不思議な形のパンが売られているのを発見。これは何だろうと調べたら、それはイースターの時期に食べるコロンバ(Colomba)というパンでした。正式名称は、コロンバ・パスクアーレ(Colomba Pasquale)と言います。

イースターのパンとしてイギリスのホットクロスバンには以前から着目していて、このことはホットクロスバンとイースターについて知っておくべきことという記事の中で紹介しておりますので、そちらをご覧ください。



キリスト教圏では、イースターが、クリスマスと同等の重要な祝祭日であるのに、日本ではほとんどよく知られていません。ディズニーランドのイースターパレードとか、一部のチョコレート屋でタマゴやウサギの形をしたチョコレート商品が置かれているくらいのイメージでしかありません。キリスト教の宗教的イメージは取り除かれて、春の到来を祝うイベントとして認識されている感じです。

シンガポールで見かけたホットクロスバンを通して、キリスト教の宗教行事としてのイースターに興味を持ったのですが、イタリアのコロンバを見て、

イタリアのコロンバは、鳩の形をしたパネトーネのようなパンで、上部にあられ糖がまぶされています。なぜ鳩の形なのかは、いろいろと古くからの言い伝えがあるようですね。

西暦572年のイースターの前日に、ロンゴバルド人の王が現在のパヴィア市付近に攻めてきた際に、地元のパン職人が鳩の形をしたパンを差し出して平和を実現したという伝説もあります。

別の伝説では、612年頃にアイルランドの聖職者の聖コロンバンがロンゴバルド族の女王テオドリーナを訪問したとき、女王はコロンバンと従者たちを豪勢な昼食でもてなそうとしたことがあったそうです。しかし、この日は肉食が禁じられている聖金曜日だったので、聖コロンバンたちは、御馳走を食べることができません。聖コロンバンは肉の塊を鳩の形をした白いパンに変えて、女王の用意してくれた御馳走を楽しむことができたと言われています。

Eatalyに売られていたコロンバは、イタリア直輸入のもので、かなり大きめでした。パーティーでみんなで食べるのならよいのですが、個人的に食べるのには大きすぎます。スタンダードなコロンバだけでなく、チョコレート味のもの、レモン風味のものなどいろいろと並んでいました。



ある日、日本橋三越のパン屋のジョアン(Johan)で小ぶりのコロンバを売っていたという貴重な情報を妻が提供してくれました。三越のジョアンに行ってみると、手頃な大きなのコロンバが売っているのではないですか。



早速購入して、食べてみました。パネトーネ風の生地の中に、オレンジピールが入っているのはわかりました。上にまぶしてあるのはあられ糖で、かなりの甘みがあります。



イタリアのコロンバを経験した後、他の国ではどうなっているのだろうと調べてみました。イースターの時期は、いろんな国でいろんなパンが食べられているのがわかりました。日本では、入手できませんでしたが、ざっと地図にしてみたのがこちらです。



この地図はまだ完璧なものではなく、調査が十分でない情報や、誤った情報が混じっているかもしれませんが、いろんな国にイースターの期間に食べるパンがあるのがわかました。東欧やロシア、ウクライナなどでは、パスカやクリーチと呼ばれるパンがあります。パネトーネのような形をしています。ギリシャにはツォレキ、スウェーデンにはセムラというパン、スペインや、ポルトガル、ドイツ、オランダなどにもイースターのパンがあります。

はるか東のジョージアの南にアルメニアという国がありますが、ここは古くからのキリスト教国で、ここにはチョレグというパンがあるそうです。日本では食べることはできないでしょうが、このへんもう少し研究して、来年はさらに精度の高い情報をお知らせしたいと思います。

イースターはユダヤ教は祝わないのですが、同じ時期にペサハ(過越祭)というユダヤ教のイベントがあります。旧約聖書に記載された出エジプトの頃、奴隷としてエジプトで虐げられていたユダヤ人たちが、モーセの導きのもと自由の民になったというエピソードを追体験する伝統です。この時期には、ユダヤ教では、発酵させたパンは禁じられていて、イースト菌を使わない「種無しのパン」を食べるのだそうです。マッツァーと呼ばれるクラッカーのようなもののようです。こんな感じみたいですね。



イースターは日本語では「復活祭」と言われることもありますが、英語のイースターの語源は、東(East)とは関係なく、またキリスト教とも関係なく、Eostreという伝説の女神の名前なのだそうです。春を祝うお祭りがヨーロッパにあったようで、多産のシンボルのウサギや、生命の誕生の象徴であるタマゴなどがシンボルとなり、それがイエスキリストの再生のイメージと結びついたと言われています。



Eostreが英語でEasterとなり、ドイツでは、Osternとなりました。ところが、ヨーロッパの他の地域を見てみると、東欧を除きほとんどの国で、パスカやパスクアあるいはそれに似た音になっています。これのルーツは、ユダヤ教のペサハ(過越祭)なのです。ユダヤ教とキリスト教は、全く違う宗教と思っていたのですが、共通の部分も多いのですね。



ロシアや東欧のイースターのパンは「パスカ 」と呼ばれますが、これはユダヤ教のペサハに繋がっているのですね。こちらの地図は、イースターをどのように現地語で表記するかを示しています。イタリアもスペインもパスクア、ポルトガルはパスコア、フランス語はパック、ギリシャ語、ロシア語はパスカ 、オランダ語はパセン、北欧諸国はパスクに似た音になっています。アイスランドもパスカ です。ユダヤ教のペサハがこんなにも影響力があったんですね。

イエスキリストはユダヤ教の環境にいたのですが、最後の晩餐はユダヤ教のペサハ(過越祭)の期間中の出来事と言われています。

こちらの地図は、ヨーロッパのカトリックとプロテスタント、正教の分布を簡単にまとめたものです。宗教はそれぞれの国で明確にわかれているわけではなく、様々な宗教が混在していて、無宗教の比率が高い国もあります。



ヨーロッパはキリスト教が多いですが、大雑把にわけて東方と西方で分かれます。東方と西方でイースターの日付の設定が若干異なり、2022年は、イースターの日付の設定は西方では17日なのに対して、東方では1週間ずれて4月24日になっています。この日付は毎年、変動するので、これはあくまでも2022年の場合のみです。



今、ウクライナではロシアの侵攻を受けて戦争状態にありますが、ウクライナは正教がメインですが、ウクライナ正教会とロシア正教会が混在しています。大統領のゼレンスキー はユダヤ教なのですが、ウクライナの苦難を見ていると、旧約聖書の中の出エジプトのモーセの役を役者ゼレンスキー が演じようとしているのではないかとさえ見えてしまいます。

早く平和が訪れますように。



















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする