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世界のクリスマスコマーシャル2022(その4)-英国スーパー、ASDAの「エルフ」

2022-12-23 15:58:49 | 広告
Asda(アズダ)は英国のスーパーではトップ3に入るメジャーな会社ですが、今年は、エルフ(妖精)のキャラクターを使ったクリスマス向けキャンペーンを展開しています。

これを演じているのは、ウィル・フェレル(Will Ferrell)というアメリカの喜劇俳優ですが、2003年に公開された「エルフ—サンタの国からやってきた」というコメディー映画に登場したキャラクターをそのまま起用しています。この原作の映画を知っていないとよくわからないかもしれないのですが、まずは今年のコマーシャルをご覧いただきましょう。



ストーリーをざっと解説いたします。

2003年の映画の設定では、この「バディ(Buddy)」という名前の妖精は、人間なのですが、赤ん坊の時にサンタクロースに北極の妖精の国に連れ去られ、妖精として大人になったキャラクターです。映画では実の父親が住むニューヨークにやってきて、そこで引き起こされるドタバタ喜劇がテーマの映画です。

このコマーシャルでは、ニューヨークではなく、妖精が英国のASDAのスーパーにやって来たという設定です。いたるところに映画を連想させるセリフやシーンが散りばめられていて、原作を知っている人には抱腹絶倒なんですね。

例えば、冒頭のシーンは、ニューヨークの雑踏でタクシーにぶつかって“Sorry"というシーンがあるのですが、それを再現していますし、彼の口癖の“Son of a nutcracker" (こんちくしょう)というセリフも出てきます。また、「これはコスチュームではない。私は妖精なので」というセリフも原作にも出てきます。

このスーパーでスタッフを募集しているという張り紙を見て、ここで働こうと思い、女性スタッフに連れられて、店内を見学することになります。しかし妖精なので、なかなかうまく適応できません。試食のお菓子をたくさん食べてしまって怒られたりします。



結局最後に、見事な飾り付けができているのを店長が見て、彼の採用を決めるというストーリーです。

では、原作の映画のトレーラーをご覧ください。



原作から20年近くたっているのに、ほぼそのままですね。この映画は英国では、クリスマスの映画としては最も人気のある映画の一つになっていたそうです。

主演のウィル・フェレルは1967年アメリカ生まれ。喜劇俳優として「奥様は魔女」などにも出ていた人なのですが、ブッシュ大統領の役でステージに登場して話題となったこともあります。YouTubeでWill Ferrel George Bushと検索すると面白い動画がいくつも出てきますが、例えばこちら。“You're Welcome America"というお芝居でジョージ・ブッシュの役をやっている場面です。



さて、ASDAの妖精のコマーシャルですが、キャンペーンのタイトルはこのようになっています。



“Have your elf a merry Christmas" というのは、「あなたの妖精にメリークリスマスを」という意味なのですが、もともとは“Have yourself a merry Christmas" のsが抜け落ちてしまってるというジョークなんですね。つまり「あなた自身にメリークリスマス」というメッセージです。

コマーシャルの中にもセルフチェックアウトのレジのsを消して、elf checkoutになっているところとかもクスッとするポイントです。

この作品を作った広告代理店は、Havas London、プロダクションはRattling Stickという会社。監督は、Danny Kleinmanという人です。数々の受賞作品を作っている人ですね。

https://www.rattlingstick.com/directors/daniel-kleinman/

今年の年末商戦、英国ASDAの売上はどれだけ伸びたでしょうか?他のスーパーもいろいろと工夫を凝らしているので競争は熾烈だと思いますが。


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世界のクリスマスコマーシャル2022(その3)- 英国の大手スーパー、セインズベリーのクリスマス・プディング

2022-12-23 08:55:56 | 広告

イギリスではクリスマスのコマーシャルは各社気合を入れて制作しています。流通小売業は特に、この時期のコマーシャルは毎年相当な制作予算を投じるので、見応えのある作品がいっぱいです。今回は英国スーパーの大手セインズベリーの作品をご紹介しましょう。

まるでシェイクスピアの時代の歴史劇のような設定で、“Once upon a pud”(昔昔、とあるプディングのお話)というタイトルの作品です。宮殿のカウンテス(伯爵夫人なんですが、もはや女帝ですね)がクリスマスのパーティーのための料理のメニューを吟味するところからストーリーが始まります。

このお話の中心になるのは、デザートとしてのクリスマス・プディングなのですが、実は女帝は昔ながらのクリスマス・プディングが大嫌い。若手シェフがデザートを任せられるのですが、ご機嫌を損ねたら、首をはねられてしまいそうです。さてどうなることでしょうか?まずは、こちらのコマーシャルをご覧ください。



https://youtu.be/RsbUYmK-Ohg

それではこの作品を細かく見ていきましょう。



まず、最初のオープニング。昔話の始まりのように、「はるか遠くのとある国で、パーティーが計画されていました」というナレーションが入ります。この声は、英国ではお馴染みの俳優のスティーブン・フライ(Stephen Fry)です。大真面目に物語を語っているところがクスッときます。

このオープニングのお城、よく見るとドラゴンが空を飛んでいますね。



宮廷のシェフたちが、パーティで出す予定の料理を持って登場してきます。



カウンテスが新聞のようなものを見ているのが写りますが、このタイトルが“Once Upon the Times”となっています。御伽噺の出だしは、“Once upon a time”(むかし、むかし)というのが定番なのですが、この“time”を“Times”としているところが笑えます。



シェフたちのプレゼンテーションは、どれもカウンテスからOKが出るのですが、最後のデザートのクリスマス・プディングを持っている若手シェフに対しては、ダメ出しが入ります。



プディングの炎を息で吹き消した後で、「私はクリスマス・プディングは嫌いなのよ。何か違うものを持ってきなさい。さもないと…」生命は無いと言っているような雰囲気です。



若手シェフは、恐怖におののきながらも、日夜新たなメニュー開発を続けます。



そしてパーティー当日。壮大な雰囲気の宴会です。



カウンテスがデザートを持ってくるように指示をすると、それは一瞬、クリスマス・プディングに見え、パーティー会場は凍りつきます。



怒りにみちたカウンテスの顔。

しかし、それを一口食べると、カウンテスの表情が変わります。



それは、従来のクリスマス・プディングではなく、キャラメライズド・ビスケット・プディングだったのです。

カウンテスは、一言“That’s a bit of me”(これは私好みだわ)。“Bit of me”というのは俗語で、「私が求めていたもの」というような意味になります。

パーティー会場は大きな歓喜に包まれて、エンディグ。 “Taste the difference”(違いを味わってください)というスローガンが決まります。



もはや壮大な映画です。すごい数の俳優をキャスティングし、ストーリーも編集も秀逸です。

この作品でカウンテスの役を演じているのは、アリソン・ハモンドというイギリスでは超人気の女優です。テレビの有名番組のキャスターもしているようなので、誰もが知るタレントです。

この作品を監督しているのがTim Godsallというディレクターで、カンヌとか世界的な広告賞をいくつも受賞しているすごい人です。

このコマーシャルを制作している広告代理店はワイデン+ケネディ(Wieden+Kennedy)のロンドン。制作プロダクションはアノニマス・コンテント(Anonymous Content)という会社です。

あと、忘れてならないのが音楽です。中世の英国の音楽のような雰囲気ですが、実は2000年にリリースされたアメリカのロックバンド、Wheatusの“Teenage Dirtbag”という曲のエリザベス朝アレンジというのが洒落ています。この曲は、One Directionもカバーしていましたね。そういう細かなところもすごい作品です。



https://youtu.be/FC3y9llDXuM

背景を知ると何と奥が深いんでしょう。クリスマスにはとても印象的なコマーシャルです。
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