2023年11月29日に東京の帝国ホテルで、来日中のインド・グジャラート州のパテル首相ら州政府デレゲーションによるプレゼンテーションが行われました。
その中で、グジャラート州に貢献の大きな日本企業として、スズキとアルセロールミタル・ニッポンスチール(AM/NS India)の2社のプレゼンテーションがありました。
アルセロールミタル・ニッポンスチールはヨーロッパの鉄鋼大手と日本製鉄の合弁会社なので、純粋な日本の会社というわけではないですが、久保田佳司氏がインドへの取り組みを説明されました。
その説明の中で、久保田氏はブランド広告キャンペーンについて触れられました。
ブランドスローガンは「よりスマートな鉄鋼でより明るい未来を」というものですが、その下の"Banuanga Main, Banega Bharat"というヒンディー語のフレーズがキャンペーンテーマです。「私が作ると、インドができる」というという意味になります。
この”Bharat"という単語、今年インドで開催されたG20での招待状が"India"ではなく”Bharat"だったので話題を呼びました。インドが国名を”Bharat"に変更するのかと世界を騒がせました。
この「私が作ると、インドができる」というメッセージは、インドのモディ首相が2014年から提唱している"Make in India"に完全に合致したもので、一人一人がインドの発展に貢献しているというのをアピールするものになっています。
上のものはグラフィックのキャンペーンですが、キャッチフレーズはいずれも同じ、と思いきや、最初の女性のバージョンは、最初の単語が"Banaungi"となっています。そういえばヒンディー語は、動詞も主語の性別を受けて、男性女性で変化するのでしたね。ジェンダーフリーが進む世の中で、インドにはこういう部分に男女の区別が残っているんですね。
ブランドコマーシャル映像がこちらです。
こちらは1分35秒のバージョンですが、明るくてポジティブで覚えやすいメロディの楽曲が秀逸です。いろんな技能者がいろんな現場で、まるでミュージカルのように歌っています。
電力インフラ、クリーンエネルギー、航空産業、自動車産業、海運、宇宙開発など様々な「現場」が登場しますが、それぞれがインドの未来を作っていて、ここに描かれているシーンのほとんどに鉄が使われています。
今年の8月24日、インドの月面探査機チャンドラヤーン3号が月面着陸に成功するのですが、そのシーンも描かれています。この瞬間はインドの人々にとっては歴史的な一瞬だったのですね。実際の中継の動画も挿入されていて、実に見事な編集です。
学校の授業中にこのニュースを見る子供たちという設定のシーンも、素晴らしい演技力です。
このCM全体に言えることですが、キャスティングも、ロケーションの設定も、カメラワークも見事です。私もコマーシャル映像の制作には何度か関わってきているのですが、映像作品として見事ですね。
このテーマの「私が作れば、インドができる」というフレーズ、どこかで似たようなセリフがあったなと思っていたのですが、それは映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の中のセリフでした。とうもろこし畑の中で主人公に聞こえてくる、"If you build it, he will come."という言葉です。
彼はその言葉に導かれ、自分の夢だった野球場を作るのですが、そこに野球選手が集まり、観客がはるばるこの球場に集まってくることになります。
アルセロールミタル・ニッポンスチールのこのキャンペーンを作ったコピーライターが、この映画を観ていたかどうかは知りません。が、この映画の感動が、この広告キャンペーンのキャッチフレーズに重なってきます。
このコマーシャルを作ったクリエイティブ・エージェンシーはどこかと調べてみたら、ムンバイのCreativeland Asiaという会社でした。
この会社のウェブサイトに出ている言葉”We are not an agency. We are a creative culture."(私たちは代理店ではありません。私たちはクリエイティブ・カルチャーです)という言葉がいちいち実にかっこいい。こういうクリエイティブな会社だからこそ、こういう素晴らしい作品が作れるのだと思いました。
最後に、アルセロールミタル・ニッポンスチールのようなB2B企業(消費者には直接関係ない産業)が、このようなブランディングキャンペーンを行ったということに拍手を送りたいと思います。日本ではB2B企業は、リクルート目的で認知度アップの広告をよく行っていますが、海外ではこういうことにあまり予算を投下しません。消費者には関係ないので、広告は意味がないと考える担当者が多いです。
しかし、日本に比べて認知度のない海外市場で戦っていくためには、B2B企業にこそブランド広告は必要です。いかに技術力が優れていても、いかに品質が高くても、いかに値段が安くても、聞いたこともないような会社から買いたくはありません。ブランドコマーシャルやブランド広告でメッセージを発信していくことは、B2B企業にこそ必要なアクションなのです。
インドやその他海外市場での広告展開に関してのご相談がありましたらどうぞお気軽にコンタクトしてください。
その中で、グジャラート州に貢献の大きな日本企業として、スズキとアルセロールミタル・ニッポンスチール(AM/NS India)の2社のプレゼンテーションがありました。
アルセロールミタル・ニッポンスチールはヨーロッパの鉄鋼大手と日本製鉄の合弁会社なので、純粋な日本の会社というわけではないですが、久保田佳司氏がインドへの取り組みを説明されました。
その説明の中で、久保田氏はブランド広告キャンペーンについて触れられました。
ブランドスローガンは「よりスマートな鉄鋼でより明るい未来を」というものですが、その下の"Banuanga Main, Banega Bharat"というヒンディー語のフレーズがキャンペーンテーマです。「私が作ると、インドができる」というという意味になります。
この”Bharat"という単語、今年インドで開催されたG20での招待状が"India"ではなく”Bharat"だったので話題を呼びました。インドが国名を”Bharat"に変更するのかと世界を騒がせました。
この「私が作ると、インドができる」というメッセージは、インドのモディ首相が2014年から提唱している"Make in India"に完全に合致したもので、一人一人がインドの発展に貢献しているというのをアピールするものになっています。
上のものはグラフィックのキャンペーンですが、キャッチフレーズはいずれも同じ、と思いきや、最初の女性のバージョンは、最初の単語が"Banaungi"となっています。そういえばヒンディー語は、動詞も主語の性別を受けて、男性女性で変化するのでしたね。ジェンダーフリーが進む世の中で、インドにはこういう部分に男女の区別が残っているんですね。
ブランドコマーシャル映像がこちらです。
こちらは1分35秒のバージョンですが、明るくてポジティブで覚えやすいメロディの楽曲が秀逸です。いろんな技能者がいろんな現場で、まるでミュージカルのように歌っています。
電力インフラ、クリーンエネルギー、航空産業、自動車産業、海運、宇宙開発など様々な「現場」が登場しますが、それぞれがインドの未来を作っていて、ここに描かれているシーンのほとんどに鉄が使われています。
今年の8月24日、インドの月面探査機チャンドラヤーン3号が月面着陸に成功するのですが、そのシーンも描かれています。この瞬間はインドの人々にとっては歴史的な一瞬だったのですね。実際の中継の動画も挿入されていて、実に見事な編集です。
学校の授業中にこのニュースを見る子供たちという設定のシーンも、素晴らしい演技力です。
このCM全体に言えることですが、キャスティングも、ロケーションの設定も、カメラワークも見事です。私もコマーシャル映像の制作には何度か関わってきているのですが、映像作品として見事ですね。
このテーマの「私が作れば、インドができる」というフレーズ、どこかで似たようなセリフがあったなと思っていたのですが、それは映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の中のセリフでした。とうもろこし畑の中で主人公に聞こえてくる、"If you build it, he will come."という言葉です。
彼はその言葉に導かれ、自分の夢だった野球場を作るのですが、そこに野球選手が集まり、観客がはるばるこの球場に集まってくることになります。
アルセロールミタル・ニッポンスチールのこのキャンペーンを作ったコピーライターが、この映画を観ていたかどうかは知りません。が、この映画の感動が、この広告キャンペーンのキャッチフレーズに重なってきます。
このコマーシャルを作ったクリエイティブ・エージェンシーはどこかと調べてみたら、ムンバイのCreativeland Asiaという会社でした。
この会社のウェブサイトに出ている言葉”We are not an agency. We are a creative culture."(私たちは代理店ではありません。私たちはクリエイティブ・カルチャーです)という言葉がいちいち実にかっこいい。こういうクリエイティブな会社だからこそ、こういう素晴らしい作品が作れるのだと思いました。
最後に、アルセロールミタル・ニッポンスチールのようなB2B企業(消費者には直接関係ない産業)が、このようなブランディングキャンペーンを行ったということに拍手を送りたいと思います。日本ではB2B企業は、リクルート目的で認知度アップの広告をよく行っていますが、海外ではこういうことにあまり予算を投下しません。消費者には関係ないので、広告は意味がないと考える担当者が多いです。
しかし、日本に比べて認知度のない海外市場で戦っていくためには、B2B企業にこそブランド広告は必要です。いかに技術力が優れていても、いかに品質が高くても、いかに値段が安くても、聞いたこともないような会社から買いたくはありません。ブランドコマーシャルやブランド広告でメッセージを発信していくことは、B2B企業にこそ必要なアクションなのです。
インドやその他海外市場での広告展開に関してのご相談がありましたらどうぞお気軽にコンタクトしてください。