シェイクスピアに『ヘンリー五世』という作品があります。英仏百年戦争の時代を描いた作品です。遠征で疲労困憊しているうえに、多勢に無勢で弱気になっている英国軍の戦士たちを前に、若きリーダーのヘンリー五世が行う演説がこの作品の見せ場となっています。言葉の力だけで、戦士たちが勇気付けられ、百人力の力を発揮し、フランス軍の大群に勝利してしまうのです。
1989年、ケネス・ブラナーが主演、監督した映画「ヘンリー五世」から、この演説の部分の動画をご紹介します。
味方があと一万いればと望む声に対して、数が少ないというハンディキャップを、少数のほうが一人あたりの手柄はより多くなるというふうに視点を切り替えます。ポジティブシンキングです。これから始まる戦に勝利するという明確なビジョンを描き出し、本国にいて、ここに居合わせなかった戦士たちは、この伝説の戦いに参加できなかったことを悔やむであろう。この勝利は、伝説となり、代々語り伝えられることになるのだから、と語り、戦士たちの魂を鼓舞していきます。言葉の力が、不可能を可能にし、歴史を変えていきます。それを行うのが、リーダーの役割なのだと、このシーンを見ていつも思います。
映画、「インディペンデンスデイ」は、「ヘンリー五世」のこの演説を下敷きにしています。麹町にあった海外向け専門の広告代理店に入ったばかりの頃、フィリピン人のコピー部長が、そんな話を語っていました。「シェイクスピアが好きなら、ぜひこの映画を見たほうがいいよ」と言うので、見てみました。フィクションではありますが、素晴らしい演説です。
現在のコロナの時代、ヘンリー五世や、インディペンデンス・デイの大統領の状況と同じ危機的な状況です。こういう場合に重要なのが、リーダーの言葉の力です。各国のリーダーの発言はとても重要です。
ドイツのメルケル首相などの演説は有名ですが、こちらはインドのモディ首相の3月のロックダウンのアナウンス。一言一言に毅然とした決意が感じられます。
こちらは、12月14日のシンガポールのリー・シェンロン首相のスピーチです。
派手さはないですが、明日への希望が感じられ、説得力が感じられますね。
さて、こちらは、日本の菅首相の12月25日の演説です。
比較してはいけないのですが、これで国民がどこまで従うのだろうかという不安を感じざるをえません。申し訳ないですが、言葉の力がちょっと不足している気がします。個人の資質というよりも、国全体の命運を担っているので、もう少しなんとかしてほしかったと思うのですが…
と言っているうちに年が暮れていきます。よいお年をお迎えください、という言葉もあまり自信を持って発せられないですが、なんとかよい年になってほしいですね。
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