思惟石

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『検閲帝国ハプスブルク』 トムジェリ的検閲おいかけっこ

2024-10-21 10:50:35 | 日記
『検閲帝国ハプスブルク』菊池良生

神聖でもローマでも帝国でもない!
でおなじみ(?)『神聖ローマ帝国』どんとこいの
菊池先生の本です。
まあ、おもしろいよね。
そりゃね!

検閲といえば書物と宗教の長い長い戦いでもあるわけで。

1440年代にグーテンベルクが活版印刷を発明したことで、
書籍が爆発的拡散力を持ち、宗教革命につながる。

と、初期印刷物が宗教関係&宗教論になりがちな一方で。

16世紀は各国で「国家統一のための統一言語」が生まれる時代。

フランスは、1539年フランソワ1世がすべての公文書を
オイル語(北フランスで使われていた言語)に統一。

イギリスは、ヘンリー8世(クズ男)がイギリス国教会を設立。
カトリック弾圧。

ドイツ・オーストリアは宗教革命でルターがドイツ語聖書を出版。

という感じで、カトリック・ラテン語の権威が失墜し、
奇しくもヨーロッパ各国の国家言語が醸成されたそうです。
めっちゃおもしろいじゃないですか。

で、絶対王政やら啓蒙主義やらの流れで、
検閲は宗教から政治へ。

この本でも、ハプスブルクの検閲最盛期は
ナポレオン没落後の王政復古時代とされています。
具体的には、
1815年ウィーン会議から1848年ウィーン3月革命の間。
「ウィーン体制」「前3月期」とも言う。

ちなみに神聖ローマ帝国は、ウィーン会議前の
ナポレオン絶頂期にぼこぼこにされてます。
神聖ローマ帝国のラストエンペラー・フランツ2世は、
娘をナポレオンの妻として差し出さざるを得なかった人ですね。
神聖ローマ帝国終了!後は、
オーストリア帝国初代皇帝フランツ1世となります。
ややこしいな。

フランツ1世は、検閲を厳しくしすぎたせいで
クレイジー検閲官が跋扈し、
皇帝の大好きな喜劇も取り締まられちゃうから
「急いで観に行った」というエピソードも。
何かの寓話かな?

以下、小ネタメモ。

『グーテンベルク聖書』に代表される1500年以前の活版印刷本は
「インキュナブラ」と呼ばれるマニア垂涎の品。
実家の本棚にあったらラッキー。

1819年カールスバード決議で、20全紙(八つ折り320頁)までの
書籍の検閲義務化。
つまりどうなるかというと、「やたら分厚い本が増えた」。
(320頁を越えればいいのだ)
本文と関係ない50頁分のレシピが書かれた本とかあったらしい。
何かの寓話かな?

ハイネ『旅の絵』第4部の結末も、
出版社に言われて320頁超えのために書き足されたものが
評価されているそうです。
よかったね!

というわけで今作も菊池先生はおもしろかった。
次は『戦うハプスブルク家』あたりを読もうかな。
コメント
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