思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2015年7月 ②コナリー2冊

2021-07-13 10:01:16 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年7月 ②コナリー2冊>
まだ読んでたんだな。
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『死角』マイクル・コナリー
<ハリー・ボッシュ>シリーズの13作目。
前作『エコー・パーク』の内容をびっくりするほど覚えてなくて
『死角』の内容が頭に入ってこない!
なんでキズミンが重傷を負ったのか。
なんでボッシュが未解決班にいないのか。
なんでレイチェルがしつこく出てくるのか。
ちょっと『エコー・パーク』買ってきます。
あとFBIも犯罪者ばっかりな。

(シリーズをまとめて貸してくれた先輩が、
 12作目『エコー・パーク』を紛失してたんですよ。
 しかも私は過去につまみ食いで読んだことがあったので、
 今回はすっ飛ばして『死角』を読んでみたところ
 記憶がぽんこつ過ぎて前後がまったく繋がらなかった…笑)


『真鍮の評決』マイクル・コナリー
<リンカーン弁護士>シリーズ2作目。
1作目の後遺症でリンカーン弁護士が薬物中毒になった後、
復職しましたという話し。
依頼人が一作目とやることなすこと被っているが大丈夫か。
とはいえ全体のロジカルゲームな感じはすごく楽しい。
弁護士シリーズ楽しい!
いわゆる典型的な美女を大放出しすぎだと思うけど。
独特な容姿の女性は書けない作家なのかな。

(私は作家が登場人物は世界観を無闇に横断させるのが
 あまり好きではなくて。
 (全作読んでね!って圧を感じるから…。柴田よしきとかさ…)
 <リンカーン弁護士>シリーズは横断させない設定だと思い
 そこを好意的に捉えていたんですが…

 出ちゃったよ、ボッシュ笑
 まあ、期せずしてコナリー作品読破中だったし
 小説としてはとても面白かったので、いいか笑、と。

 とはいえ、コナリーファンではなくても、
 警察小説よりもリーガルサスペンスが好き!という人は
 <ハリー・ボッシュ>シリーズを切り捨てて
 <リンカーン弁護士>シリーズを読み始めて大丈夫!!
 ボッシュのことは、リンカーン弁護士の15歳年上の異母兄、
 有能だけどオラオラしていて鼻につく警官と認識すればよし!)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『いくさの底』戦争ミステリの金字塔!

2021-07-12 16:14:04 | 日記
古処(こどころ)誠二『いくさの底』

Amazonの紹介文に「戦争ミステリの金字塔」と
書かれていまして。
120%賛成!

すごく面白くて、良い小説だった。

第二次世界大戦下、ビルマ平定戦佳境。
中国との国境近くにある山間の村が舞台。

日本軍に招集された「民間人」である
通訳・依田氏の視点で物語が語られます。
日本軍から、ちょっとだけ引いた視点で
物事をみているようで、
やっぱり価値観などは引っ張られてしまう
「通訳のマスター」の複雑な気持ち、よく分かる。

日本軍だけでなく中国軍(重慶軍)に挟まれる村人の立場も、
ただ翻弄されるだけではないけれど、
巻き込まれざるを得ない悲哀。

ミステリなお話しなんですが、
犯人はお前かっ!?というよりも、
ホワイダニットな感じなのかな。
ともあれ、読んでいてい引き込まれるし、
続きが気になって一気読みしてしまう作品。
この作家の他の作品も気になる。

第71回毎日出版文化賞〈文学・芸術部門〉
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2015年7月 ① 恋歌

2021-07-09 10:05:31 | 【読書メモ】2015年
<読書メモ 2015年7月 ① 恋歌>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。

『恋歌』朝井まかて
歌人中島歌子の生涯。
どこまでが創作なのかわからないけれど。
大政奉還前後の物語。
司馬遼作品の主人公のような、時代のうねりに乗った
興奮とか高揚とか全く無い、武家の子女の無力さが怖い。
子どもの首を落とされる母の描写が静かすぎて怖い。
とにかく怖かった。
うまい人だなと思うけれど、
こんな怖い小説体験はあまりしたくないな。
軽そうな作品もあるようなので、次はそっち読む。
この作品で直木賞をとったそうな。

(第150回直木賞受賞作(2014)。
 この後、織田作之助賞受賞作の『阿蘭陀西鶴』を読んでから
 受賞前の初期作品(予想以上にライトな読み口だった)を
 読み進めました。

 『恋歌』前、『恋歌』後、で変わったなと思う作家。

 『恋歌』は、怖い怖いと言いながら一気に読んだし、
 物凄く強く印象に残っているし、
 ずっしりと腰の座った小説だと思う。
 凄かった)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソ連のお話し

2021-07-07 09:50:34 | 日記
『モスクワの伯爵』が良すぎて
一気に殴り書きしてしまったんですが、
それとは別に、
ソ連の共産主義って授業であまりやらなかったけど
意外と知らないし怖いよなあ〜としみじみ思いました。

いま現在自分が持っている知識も、たかだか、
小説とかで読んだ程度しかないのだけど。
まあでもせっかくなので、
『モスクワの伯爵』を読みながら思い出した本を
備忘録としてメモっておきます。

『動物農場』オーウェル
とにかく『モスクワの伯爵』を読んでいる間ずっと
伯爵のことが好きすぎて、
「共産主義の連中、リアル動物農場!!!」
と叫んでましたね心の中で。
ソ連の歴史を勉強しなおしてから『動物農場』を再読すると
もっと笑えるのかもしれない。
意外と笑えないのかもしれない。


『グラーグ57』トム・ロブ・スミス
グラーグは共産主義時代の「強制収容所」。
反体制の人間を国外追放にせず、国内で過酷な労働に従事させることで
「成功した共産主義」とやらの実情が外国に漏れないようにもしたシステム。
こわっ!!!
『モスクワの伯爵』のニーナと夫が行ったと思われる「グラーグ」
その様子がこちらの小説では生々しく描かれています。
小説としてはシリーズ一作目の『チャイルド44』がオススメ。
そして二作目『グラーグ57』は主人公レオが無敵無双状態になっちゃって
三作目はどうすんの?スタンド使うの?と若干心配になる(未読)。


『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里
超名著。
作者の米原万里さんが1960年〜1964年を過ごした
プラハの「ソビエト学校」の様子が描かれている作品。
米原さんは9歳から14歳。
なので、当時の描写は学生らしい友情とか宿題とかお買い物とかが
多いのだけど。
隆盛を誇った(やや斜陽か?)共産党関係者の子ども達の暮らしと
執筆当時(1990年)現在の対比が素晴らしく学びになる。
『モスクワの伯爵』を読んでいる間も、この本を思い出しながら、
立場や視点が変わると見えるものも違うよなあとしみじみ感じました。


『氷結の森』熊谷達也
<マタギシリーズ>の三作目。
主人公は、日露戦争後の樺太からサハリン経由でソ連へと旅します。
結構なハードボイルド冒険小説。
物語のクライマックスに関わる歴史的な事件
「尼港事件」は1920年。
ロシア革命真っ只中の混沌が描かれています。
ちなみに『モスクワの伯爵』の物語が始まるのは1922年。
ところで最近初めて読んだんですが、
『ゴールデンカムイ』って漫画、変人ばっかりで超おもしろいですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『豆腐屋の手記』草の根ノンフィクションだなあ

2021-07-06 11:48:34 | 日記
松下竜一『豆腐屋の手記』
30歳の貧乏な豆腐屋の青年が綴る四季の手記。

松下竜一は、この「ザ・草の根」という感じの生活記が
ヒットしてドラマ化にも至り(主演は緒形拳!)、
遅まきながら文筆家としての生活に踏み出すのだけれど。

手記を書いた当時は、
朝日歌壇に「豆腐屋の生活」を詠んだ句が載る程度で
まったくの地方在住素人文筆家(というか豆腐屋である)。
出版の目処もなく、「書きたいな」「書いてみようかな」
という思いだけで書き綴った文章。
幼妻も当然のように「節約してお金を貯めないとね」と言うし
初版は案の定自費出版。
そんな素朴な状態で書かれた素朴な内容の手記なのだけど。

四季の移ろいとともに、
九州の小さな街の小さな豆腐屋の日々が窺える。
雪溶けの泥道や夜明けの寒さや河原の草いきれを
しみじみ感じる。

その合間に、
自分の家族のこと(姉と弟5人!弟もれなくグレる)、
若くして亡くなった母のこと(進学を断念し豆腐屋を継ぐ)、
豆腐屋稼業の日々のこと(失敗作を泣いてぶん投げたり泥道ですっ転んだり忙しい)、
病弱な自身のこと(43キロ!私より遥かに軽いね…!)
妻との恋愛(11歳年下!)のこと。

貧しく平凡な日々を綴ると本人も言っているけれど、
なかなかヘビー且つ厳しい環境で、
よく泣くし「畜生」とか言ってるし不幸も感じているんだけど。。
それでも歯を食いしばって誠実に生きている。
自分の人生と自分の家族を愛そうと前を向いて生きている。
そしてしょっちゅう「おろおろ」している。
なんだこのいじらしい手記…。

個人的には、武田百合子の『富士日記』みたいな
気風の良さを感じる生活記が好きなのだけど。
『豆腐屋の手記』は、なんだろうか、
応援せずにはいられない愛しさみたいなのがあるな。

ちなみに松下竜一さん、私の父より数年年上、
ほぼ同年代なのだけど
こんなに「愛したい」「愛してる」と
感情の赴くままに綴るものなんだな…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする