思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『わたしの美しい庭』 もじゃもじゃを解きほぐす短編集

2022-08-12 18:28:35 | 日記
『わたしの美しい庭』 凪良ゆう

とある街の5階建マンションの屋上には
緑豊かな屋上庭園があり、
その奥には神社が鎮座している。

そこの宮司の青年(トウリ)と、義理の娘モネが中心にいて。
その周辺の人々を描いた連作短編(中編?)のような物語。

同じマンションに住んでいて、39歳独身女性の生きづらさに
ど正面から向き合ってる(ブチあたってる)桃子さん。
同性愛者で4年前の失恋を引きずりつつ飄々と暮らしているロウ。
うつでゼネコンを退職した元体育会男子の33歳、モトイくん。

みんなそれぞれ、なんらかにブチ当たっているけれど、
ちょっとずつ、もじゃもじゃしたものをほぐしていく。
周囲の環境のおかげもあるけれど、
結局は自分の考えや意思のもと、
「なんとなく正しい方へ」進んでいる。

どれもこれも良い話しである。
うまい作者さんなんだなあ。
『すみれ荘ファミリア』も良かったし。

ちょっと感覚がズレているトウリと
いろいろとスレているロウの
飲んだくれながらしてる会話が良かった。
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『世界探検史』長澤和俊

2022-08-08 16:12:06 | 日記
講談社学術文庫から出ている、
タイトル通り、「探検」の世界史です。
小説ではない。

著者はシルクロード研究で有名らしいのですが、
こちらは時代も地域も全て網羅するぜ!という気概を感じる
幅広さです。
読了するにも気概が要ります笑

紀元前500年頃のエジプト探検記(『ハンノ周航記』や
ヘロドトス『歴史』)に始まり、
近代の南極北極制覇まで。

いや〜、読むの疲れた!
けど、おもしろかった!!

やっぱりヨーロッパの大航海時代がおもしろかったな〜。
JOJOの第3部的な鉄板感がありますよね!
という例えはどうなのかと思うけど。

スペイン・ポルトガルの植民地争い、
遅れをとって焦るイギリス、そして不器用なフランス笑

レコンキスタとコサックの侵略行は酷いの一言に尽きる。

『ビジュアルマップ大図鑑 世界史』(スミソニアン協会・定価7150円!)
の地図を見ながら読むと捗る。
高いけど、何かと役に立つ一冊である。高いけど。

『世界探検史』の初版は1966年。
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『名画で読み解く ロマノフ家12の物語』

2022-08-03 18:23:09 | 日記
『名画で読み解く ロマノフ家12の物語』
中野京子

<名画で読み解く>シリーズ第3弾。
他に、「ハプスブルク家
ブルボン王朝
イギリス王家
があり、残すは『プロイセン王家』だけとなりました。
コンプリート目前だぜ!さみしいぜ…。

さて。
ロマノフ朝の始まりはミハイル・ロマノフの即位(1613年)。
ですが、
元を辿るとモスクワ・ロシアの初代ツァーリである
イワン雷帝のお妃さまの家系です。

イワン雷帝が後継者を決めないまま亡くなったせいで、
すったもんだして、偽王子(ドミトリー)が登場して(2回も出た)、
たくさん人が死んで、ミハイル・ロマノフに王冠が巡ってきたと。

ミハイルも死にたくないから、ツァーリになるのが嫌だったらしい笑
デスヨネ!笑

なにしろ、ロシア皇帝(ツァーリ)は
平穏な亡くなり方をする人が、ほんと〜に少ない。
古代ローマ皇帝かよ!と言いたくなるくらい
暗殺されるし変死するしアル中or鬱になる。

なんとな〜く、ほの暗く、うすら寒く、影が多いんだよね。


以下、収録作。

ワシーリー・スリコフ『フョードシヤ・モロゾワ』
シャルル・フォン・ステュイベン『ピョートル大帝の少年時代の逸話』
  ピョートル大帝の義理の姉で、皇位争いをしたソフィアの絵画が
  なかなかの迫力です。
  イリヤ・レーピン『皇女ソフィア』
  ゴールデンカムイのソフィアのモデルは、
  皇帝暗殺を企んだ”ソフィア・ペロフスカヤ”説らしいですが、
  見た目的には、この絵画が近くないか?
  と、私は密かに思っています。
ニコライ・ゲー『ピョートルと息子』
カルル・ヴァン・ロー『エリザヴェータ女帝』
コンスタンチン・フラヴィツキー『皇女タラカーノヴァ』
  この自称皇女は偽物みたいですね。
  皇族を詐称する案件、ロシアは多いよなあ。
  偽ドミトリーとか偽アナスタシアとか。
  アレクサンドル1世の晩年説の老人とかも近いか。
  民衆が求めている雰囲気もあるのかもしれませんね。
ウィギリウス・エリクセン『エカテリーナ二世肖像』
ニコラ=トゥサン・シャルレ『ロシアからの撤退』
ジョージ・ドウ『アレクサンドル一世』
イリヤ・レーピン『ヴォルガの舟曳き』
山下りん『ハリストス 復活』
ボリス・クストーディエフ『皇帝ニコライ二世』
  皇太子時代に日本でも暗殺未遂に遭う(大津事件)、
  受難のラストエンペラー。
クロカーチェヴァ・エレーナ・ニカンドロヴナ『ラスプーチン』
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『本のエンドロール』良い感じのお仕事小説

2022-08-02 22:22:17 | 日記
『本のエンドロール』
安藤祐介


製本会社のお仕事小説です。
まあ、出版界隈のお仕事小説って最近多いし
『舟を編む』を読んじゃうと、
ちょっときびしい目で見ちゃうよなあ、、、
と思ったが。

思ったが、面白かった。

主人公は製本会社の営業職だけれど、
レイアウト(DTPオペレーターというらしい、
初めて知る職種があるのも良い!)や校閲、
印刷機の管理をする人々の仕事が丁寧に描かれていて、
おもしろい。

装丁の難しさや、インクと紙のコスト感、
印刷機の稼働率などのリアルな数字感覚も
働く身としては、とっても興味をそそられました。

おもしろかった。
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『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』

2022-08-01 17:27:03 | 日記
『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』
中野京子

<名画で読み解く>シリーズ第2弾。
フランス・ブルボン王朝の物語。

ブルボン王朝(1589年―1792年)は、
カペー朝(987年ー1328年)
ヴァロワ朝(1328年ー1589年)
に続くフランスの王朝。

フランスが領土をガッと拡大してヨーロッパの大国になったのは、
カペー朝第7代国王フィリップ2世(1180−1223)の時代。
イギリスの(みんな大好き)リチャード獅子心王に続く
ジョン失地王のおかげです。
フィリップ2世は、王侯揃いの第三次十字軍に英王リチャード、
神聖ローマ帝国フリードリヒ1世(赤髭王)と共に出兵した人。
そして特技「長生き」で領土拡大した人である笑


ヴァロワ朝の断絶(1589年)は、ユグノー戦争の最中に
アンリ3世が暗殺されたため。
アンリ4世が即位して、ブルボン朝スタートです。
って、名前一緒じゃん!
一連の騒動は3アンリの戦いと言われ、アンリはもう一人いたらしい。
紛らわしいな!!!

以下、収録作。

ルーベンス『マリーのマルセイユ上陸』
ヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』
  革命によって処刑された国王と言えばルイ16世のイメージですが、
  それに先駆けて処刑されたのがイギリス王チャールズ1世ですね。
  この隣国事情をルイ16世は熱心に学んでいたらしいですが
  時代のうねりというか、フランス革命を避けることができなかったのは感慨深い。
ルーベンス『アンヌ・ドートリッシュ』
リゴー『ルイ十四世』
ベラスケス『マリア・テレサ』
ヴァトー『ジェルサンの看板』
カンタン・ド・ラ・トゥール『ポンパドゥール』
グルーズ『フランクリン』
コベール・ロベール『廃墟となったルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』
ゴヤ『カルロス四世家族像』
ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』
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