思惟石

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『薔薇の名前』お腹いっぱいです

2022-08-22 13:57:53 | 日記
『薔薇の名前』
ウンベルト・エーコ
河島英昭:訳

遠い遠い昔のことですが、
大学の選択授業に「『薔薇の名前』を観る」という、
映画を教材にした授業がありました。
何それ、超おもしろそう。勉強がはかどりそう!
と思うのは私が中年になったからであって、
当時の私は爆睡していました。
映画を流すために教室が暗かったから…。

タイムマシーンに乗って学生時代の自分に
ちゃんと講義を聴け!と言いたい。言っても無駄だと思うけど。

と、後悔しながら読みました。『薔薇の名前』。
わからない部分もあったし、
調べた上でわからない部分もあった。
でもおもしろかったよ!
授業をちゃんと聴いてたらもっと楽しめたと思うけど!
ちくしょう!!

『薔薇の名前』の本筋は、
1327年の北イタリア・ベネディクト派に属する僧院が舞台の
連続殺人事件。

とはいえ物語の大半は、宗教論争やら象徴学やら記号論やら
宗派争いの思想解釈やら、とにかく難しい話。

ベネディクト派とフランチェスコ派と小さな兄弟派と
清貧論争と異端論争と…って、もう出てくるテーマが難しくて
脳みそオーバーフロー。
がんばれ私。(がんばった)

そんな荒波に揉まれながら、
探偵役のウィリアム師と弟子のアドソが殺人事件の謎に挑みます。
奇妙な形をした秘密だらけの文書館、羊皮紙に残された暗号、
「ヨハネの黙示録」の見立て殺人などなど、
おもしろミステリ要素満載!!

なんだかんだで、分厚い割にサクサク読めます。
楽しめます。


今後のために、構成とか時代背景とかのメモ

・『薔薇の名前』は
 エーコ(作者)が中世の写本(アドソの手記の写し)を手に入れた
 という体裁の“枠物語”。
 枠物語代表は『デカメロン』ですが、
 個人的には『アラビアの夜の種族』や『死の泉』だな、と。
 ところで作者が「南米の古本屋」で稀少本を手に入れるパターンって、
 他にもなかったっけ?(思い出せない)

・主人公ウィリアムを派遣したのは、神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世。
 塩野七生『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』の直後(1250年没)の
 大空位時代(1254~1273)を経た、非世襲時代の王。
 とはいえジワジワとハプスブルク家がライジングしてる時期でもある。
 歴史の知識が接続すると、楽しい。

・ヨハネス22世。
 作中でめっちゃ悪口言われているローマ教皇。
 教皇庁がローマではなくアヴィニョンにある「アヴィニョン捕囚」2代目。
 とはいえ元々がフランスの金持ちなので、アヴィニョン生活に満足だった模様。

・フランスのフィリップ4世
 二つ名は「美男王」「端麗王」、在位1285年〜1314年。(『薔薇の名前』のちょっと前)
 テンプル騎士団の財産を狙って、異端裁判を仕掛けた絶許王である。
 この人が教皇庁をアヴィニョンに力技で移したので、
 この時期の教皇は「アヴィニョン捕囚」と呼ばれる。

・神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世(フリードリヒ美王)
 え?誰?
 落ち着け。
 ローマ王の選出がなぜか二重にされたため、
 ルートヴィヒ4世と「共同統治」という立場にあった
 もう一人の神聖ローマ皇帝(仮)。ハプスブルク家の人。
 1330年没後は、ルートヴィヒ4世の単独統治。
 お前も「美王」なんかーい!とか、
 『薔薇の名前』のwikiでウィリアムを派遣したことになってたり(誤り)とか
 色々とややこしい人。


・ところで、京極夏彦の『鉄鼠の檻』って、『薔薇の名前』の禅宗版だよね
 肥溜めでスケキヨしてるし
コメント
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