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旅行記、世相独言

8階は砂の海 -ミネアポリス-(異文化体験10 地下空間の旅01)

2010年12月01日 22時39分16秒 | 異文化体験_北米
 バブル経済真最中の日本。地価は暴騰し、都市計画上もっと密度を上げた空間利用を!と建設省が地下空間の利用調査を行うことになり、その調査団の一員としてアメリカ・カナダを旅することに。テーマは「地下空間の利用」。さてさて、どんな旅になることやら。


(写真はクリックで拡大します)


8階は砂の海 -ミネアポリス- 1988.3.14~16


 成田の滑走路の端に来て、出力一杯のエンジン音を響かせて今にも滑走を始めようとしかけた時、機長が「エンジン不調につきゲートに引き返す。しかし貴方達は幸せなことに代替機が2時間後に準備出来るのでしばらく待って欲しい」と機内アナウンス。もし、飛び立っていたらと思うとぞっとする。出発前日、S嬢がお守りを届けてくれたが、そのお陰かも。Sさん、有難う。

 ミネアポリス市庁舎の「ファーザー・オブ・ウォーター」像

 市長から「名誉市民」の称号が与えられる

 ミネソタ州ミネアポリスは、先週大雪が降り路上の至るところにその名残がある。ミネアポリス市庁舎の玄関ホールには、1904年に製作された古代の河の神を象った大理石の「ファーザー・オブ・ウォーター」という巨大彫像がある。その市庁舎を訪問すると、市長自ら出迎えて市の現状を説明の上、メンバー全員に「名誉市民」の称号を記した賞状を手渡して歓迎してくれる。日本国政府の便益供与依頼の賜物とは知りつつ感激である。
 デンバーからの飛行機で隣に座ったおじさんが、箸の持ち方や大阪周辺の事にやたらと詳しい。どうしてそんなに良く知ってるの?と尋ねると、ミネアポリスは大阪府茨木市と姉妹都市関係にあり、文化交流が大変盛んだと言う。

 
(左)1915年 セント・アンソニー滝周辺       (右)1988年 同じ場所

 ミシシッピ川唯一の滝であるセント・アンソニー滝の周囲に発展したこの街は、製材、製粉業からハイテック産業に衣替えの途上で、スリーエム、ハネウェル等の本社がある。地層構造が地下利用に適しているので、あるデベロッパーは大地下都市構想を市に提案しており、ミネソタ大学の鉱物学教室は自らの建物を地下利用している。エレベーターで8階に行ってくれと言うので、乗ってから8階のボタンを探すが3階までしかない。聞き違えたのかな?とよくよく見ると地下に8階がある。

     
(左)ミネソタ大学工学研究室 地下8階  (右)拡張工事現場 綺麗な砂の層

 工学研究室がごく普通の大学の研究室と同様に地下空間に並んでおり、学生が実験をしている。この階の拡張工事現場に行くと、どこかの海岸を思わせる一面の砂場である。石灰石の下に砂層が広がる地層構造のようで、地震のないこの地では地下都市建設が非常に安価に出来るのだそうだ。


 ミネアポリス名物ダウンタウンの「スカイウェイ」

 一方、地上ではダウンタウン中心に「スカイウェイ」が張り巡らされている。ミネアポリスのスカイウェイはダウンタウンの80ブロックにわたり、総延長は11kmにおよぶ大規模なもの。各ビルの2階を利用して道路を横断するカプセル様の道は、ビル内の公共スペースと連絡しており、冬の寒い時期でもコートなしで好きな所に行ける。1階の車道を通る車と2階のスカイウェイを通る人との歩車分離にもなっている。このスカイウェイ計画、まだ全ての建物には連絡されておらず、今後順次整備されるとのこと。

 ニコレットモール近辺 いまいち活気がない

 火曜日の夕刻、一人でスカイウェイ散策に出掛けると、せいぜい人口10数万人の都市(周辺を入れると40万人)のこと、人通りは少なく、百貨店も今ひとつ活気がない。メインストリートのニコレットモールに面した商店も空家が目立つ。市長が「市民が郊外に出て行くので、呼び戻し策を考えないといけない」と言っていたが、都心の地底都市はどうなることやら。

 街中には半地下住宅も見られる

 光を地底都市に伝達することも彼らにとっては重要な課題。反射鏡や光ファイバーを使って、様々な仕掛けを大学の地底教室で実験している。地下8階に反射鏡を利用した景色窓があり、そこに地上の景色を写している。何もそこまでしなくとも、と思うが、決してスカートの中を覗こうというのではありません。念のため。

 大学地下8階の景色窓(反射鏡を利用)


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