神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.189 手を貸さないと終われない

2024-06-02 20:35:02 | 余録

       ミツバの花:見えますか?

(1)私的所有は歴史的には2つありました。ひとつは「自分の労働に基づく私的所有」、もう一つは「他人の労働に基づく私的所有」です。
 この両者の関係は、前者が解体して初めて後者が成り立つという関係にあります。

(2)では、どうして「自分の労働にもとずく私的所有」は解体したのでしょうか。
 「自分の労働に基づく私的所有」は、生産能力が小さく、自分や自分の家族くらいの範囲で自給自足の生活をおくる「自然経済」時代に、狭く小さい範囲での生産の時代に、存在できる程度の小規模経営でした。

    

(3)ちょっと歴史がさかのぼりますが、戦国時代を経て、秀吉の時代に国家統一に向かいます。
 ふつう、封建社会は自給自足経済といわれますが、封建社会が発展した結果、兵農分離が行われ、武士は、土地耕作から引き離されて、都市生活者になります。つまり、扶持(給料)をもらうサラリーマンとなりますが、このことが自給自足を崩し、貨幣経済化を促進する大きな要因になります。

 さらに、江戸時代に入って、各藩は大名の参勤交代で多額の貨幣が必要となります。そのほか、幕府から命じられる治水・治山などの土木事業のために、各藩とも資材や人夫の賃銀などのために多額の貨幣資金を必要とするようになります。そうすると、こんどは、各藩自体がその対策として率先して特産物の開発・専売を目指すなど、貨幣獲得のために商人と一緒になって奔走するようになります。

(4)ここまでで注目したいのは、「封建制の発展が封建制を崩壊させる条件を生み出す」というところです。封建制だからそうなのではなく、現在の資本主義もそうだということです。
 「あるものの発展は、そのもの自体の存在を否定する条件を生み出す、みずから崩壊の条件を作り出す」ということです。
 でも、自分では「終活」しません。誰かが終らせてあげないと、醜態をさらし続けます。

    

(5)さて、このことは、藩や都市の武士だけでなく、封建社会全体に浸透していきます。つまり、封建経済の発展そのものが、封建制度を突き崩す要因である貨幣経済を促進しだします。そして、この余波は「自分の労働にもとずく私的所有」が支配している農村などの経済にも浸透していきます。そうすると、自給自足が崩れ、ますます農村経済が商品経済とつながりを持つようになります。
 そして、産業の発展の結果、自然経済が支配していた農村経済に都市の製品が普及するようになると、農村経済はますます貨幣経済に巻き込まれていきます。そうなれば、貨幣経済の浮き沈みの中で、没落する人も出てきます。そこには、雇われなければならない人が出てきます。最初はわずかでも、やがて広がって、雇う人と雇われる人の関係が社会全体の問題として出て来るようになります。こうして、二つの私的所有の転換が終わります。
 
(6)商品とか貨幣は古い時代にもありましたが、これが大手を振るうようになるのは、資本主義経済の中でのことです。「自給自足の自然経済が支配していた時代」といいましたが、私の印象では、昭和の30~40年代でもまだそういうところがあったと思いますが、ともかく、自然経済の対極に立つ貨幣・商品経済の発展が社会を資本主義経済社会へと導きました。
 
(7)封建社会崩壊の要因にはいろいろなことがいえますが、ともかく、日本では、通常、明治維新といわれる政治変革を契機としてで終わって行きました。繰り返しますが、その場合、大事なのことは、封建社会が自然に終わったのではないということです。討幕運動などの多大な営為があって実現したということです。漫然と待っていて実現するものではないということです。

 これを現在に引きつけてみるとどうなるでしょうか。
 いまの日本や世界の状況を見て、このままでよいと思っている人はいないでしょう。しかし、 すでに核兵器にまで手がかかっていますから、これを「言葉の力で」解決するにはどうしたらよいかです。
 知恵を発揮しましょう。その行動の時と思います。

    

(8)忘れてはいけないことは、封建社会も資本主義社会も、それぞれ、前の社会の発展の結果として生み出まれてきた矛盾を解決するものとして出来上がったものだということです。
 けっしてあだ花ではありません。人間社会の発展の過程だということです。ですから、汚点を正してきれいに片付けて、少しずつでもよい方向に進めましょう。

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