2010年の初ホィッスルを厦門にて吹いて来ましたので、レフリー日記として
レポートします。
■厦門台風vs成都熊猫;
今回担当したのは「厦門台風(XIAMEN THYPHOONS)vs(CHENGDU PANDAS)
の試合。昨年(2009年)厦門にタイフーンという名のラグビーチームが出来て
いたのは知っていたけど、実際には4年程前から、有志が集まって細々と楕円球
には親しんでいたという。後でチラッと聞いた話では カナダの7's代表経験者
も所属(?)とかいう事だったけど、確認出来ず仕舞いだった。こういう時に痛感
するのが「ここに南禄郎が居ったらなぁ~」という事だ。その厦門台風が昨年、
チーム創立早々に成都を訪れ熊猫(パンダーズ)と親善試合を行い、同時にそれを
「THE GAN BEI CUP(つまり乾杯杯)」と名付け(ま、ネーミングとしてはちょっと
ベタだし「杯」の文字も被ってるけれどそこはご愛嬌)定期戦化しようとなった。
成都熊猫はそこそこ歴史の有るチームで、今回の遠征には参加されなかったけど、
日本人のプレイヤー(ジローさん)も所属している。各地への遠征も活発で、北京
アイスブレーカーや上海7'sでもパンダの被り物の集団にお目に掛る事が有った。
前置きが長くなったが、今回はその第2戦。第1戦は成都熊猫が先輩各として、
またホームチームとして、僅差乍らも勝利を収めたという事で、今回は厦門台風
のリベンジが多いに期待された。
厦門台風行き着けのBARにはこんなポスターが貼られていた。
■試合に臨むに当って;
成都熊猫の試合はこれまでに何度か見ており、レベル的には大体分かっていた。
一方厦門台風に付いては事前情報が無く、試合前の練習内容からスカウティング
するしかない………が、第一印象は両者互角といったところ。そういや、昨年の
試合も僅差の結果だったっけ。。。
僕自身は、これまでちょっと気になっていた事で「判定時のジェスチャーをもう
少し大きく、且つしなやかに」という事と、先のAJRCの時にもご指摘頂いた、
「ブレイクダウンではポイントの近くに寄りシッカリ見極める」の2点をテーマ
にした。
■ピッチ;
試合会場となったのは、海辺に位置する厦門市街から、渡し船に乗って約10分
のコロンス島に在る「人民体育場」。コロンス島が開けた歴史は古く、島全体が
観光地となっているが、詳しい事は旅行のガイドブック等を参照されたし。で、
件の人民体育場。
芝生の状態はすこぶる良く(SFRCとは違って浅目の芝生)、簡単なスタンドも
設置されている。トラックは無くて、ゴールポストも常設(?)されており、中国
では珍しい「ラグビーに優しい運動場」と言えそうだ。ただ、ここでラグビーが
行われるのは 昨年の5月に開催された「第1回厦門10's」以来との事らしい
けど…。敷地面積的には少々窮屈な感じで、インゴールの狭さが「昔の国立」を
思わせるのが玉にキズといったところ。
こういう場合「敵陣に入ってのキックは要注意」とか、コイントスの時なんかに
忠告するんだけど(我々レベルの試合では キックしたボールが直接デッドボール
ラインを越えてしまうと…といったルールを知らないプレイヤーが意外と多い)、
懸念していた出来事はキックじゃなくて………それはまた後程。それと、雪隠の
形式がいわゆる「ニーハオ何とか」だった。お食事中の方、すみません。
スタンド下に檻が有って、中にはここの体育場の主の姿?
元気に駆け回る「ミニ・タイフーン」の小朋友們
■試合(前半);
開始早々から厦門台風の動きが全開。厦門台風はBKにタレントを揃え、SOと
両CTBは特に素晴らしかった。前半約5分にBKの突破からゴールポスト下に
先制のトライ(ゴール)。更にNo8(ドレッドヘア君)が自陣から走り出し 22m
付近で独走。誇らしげにゴールラインを突破したが、そのまま勢い余ってデッド
ボールラインを越えてしまい、トライ×1本を無駄にしてしまった辺りから流れ
は成都熊猫に。BKの厦門台風に対し、成都熊猫はFWでゴリゴリやるタイプで、
得意な攻撃スタイルとチームの愛称名が何となくマッチしているのは偶然かな?
成都熊猫は(FWのチームに共通の?)スロースタート振りだったが徐々に実力を
発揮。反撃のトライもモールを押込んだものだった(ゴール不成功)。それに対し
厦門台風の、特にFWのプレーが雑になり反則の繰り返しで27分にシンビン。
成都熊猫は執拗にモール攻撃を仕掛け追加のトライ(ゴール不成功)で逆転に成功。
厦門台風7点vs成都熊猫10点で前半を折り返した。
青:厦門台風、白:成都熊猫、(オレンジ:レフリーの存在感は?)
■試合(後半);
後半になっても成都熊猫が前半の勢いを継続。ただ自慢のモール攻撃も、精度と
しては今ひとつで、アンプレアブル⇒相手ボールのスクラムになる事が多かった。
一方の厦門台風もBKによる度々のゲインは有るものの、肝心な場所での反則が
多く、後半22分にはハイタックルによって2人目のシンビンを出してしまう。
こうなると成都熊猫のペースで、ゴール前密集から3本目のトライ(ゴール成功)、
更に1本のトライ(ゴール不成功)を追加、22対7とリードを広げる。後が無い
厦門台風は自慢のBKが果敢に攻撃を仕掛け、30分過ぎのトライ(ゴール成功)
で22対14と追い上げる。1トライ1ゴールでも追い付かない点差に厦門台風
は焦りを覚えるが、この時間帯の連続攻撃は見事だった。ところで、試合開始時
から人民体育場には大勢の観客が集まっており(地元の西洋人や、たまたま島を
訪れた中国人も多数。ラグビー初観戦の中国の人にはどう映っただろう)、僕の
耳にも大きな声援が聞こえた。そして終了の3~4分前、厦門台風が敵陣10m
から左中間方面へゲインしてパス。これは見事にフラットなパスでプレーオン!
ところが次のパスが痛恨のスローフォワード。観客の溜息、及び厦門台風(一部)
プレーヤーからの罵詈雑言。確かに微妙で「どっちに判断しても後から逡巡する
かもなぁ」という程だったが、試合前に掌に書き込んだ「信念」の2文字を見て
迷いは直ぐにふっ切った。ただその瞬間は、ちょっとだけ「主役」になってしま
った。この時間帯で、この場所で、そしてこの試合展開でのスローフォーワード
の微妙な判定って「名勝負」と言われる試合にはお約束みたいな感じだけれど、
でも以前、或る偉大なレフリーの方が「レフリーが主役になってはいけません」
という様な事を仰っていて、今回ばかりは「えっオレなん? オレって今、結構
注目されてますん?」っていうのを感じてしまった。結局 厦門台風はそれから
2度3度と攻撃権を得るも得点を上げる事が出来ずにフルタイムとなった。
■結果;
*日時:2010年1月30日(土) 14時キックオフ
*場所:人民体育場(@厦門コロンス島)
*天候:晴れ(気温:20℃位?、悪気の無い湿度)
*試合形式;
・15人制(40分×前後半、但し20分時点で水休憩)
・スクラムはノンコンテスト。
*厦門台風vs成都熊猫
前半:(1T1C= 7)vs(10=2T0C)
後半:(1T1C= 7)vs(12=2T1C)
--------------------------------
合計:(2T2C=14)vs(22=4T1C)
★シンビン:前半27分(厦門台風=警告後も反則の繰り返し)
後半22分(厦門台風=危険なタックル(ハイタックル))
ファンクションでは試合の模様もスクリーンで放映された。そこで固唾を飲んで
視た「疑惑のスローフォワード」はしかし、やはり「疑惑」ではなかった。自分
の視た事実、判断にもっと自信を持とうと思う。そして「自分殿」に少し申し訳
の無い思いをした。
■厦門雑記;
個人的に厦門は15年程前のクリスマス以来だ。そこそこに甘酸っぱい思い出も
有る厦門市街はしかし、これと言って大きな変化は無くて、中国のどの中核都市
にも見られる「垢抜けない発展」を感じただけで、ちょっとガッカリした。また
コロンス島の「商業観光地化」も概ね想定の範囲内だった。そのコロンス島への
移動に、厦門市街側の港から乗り込んだのは普通のフェリーではなくて、ご覧の
様な船だった。どうも「船単位」でチャーター出来るみたい。
(↓)(↓)(↓)
これぞ呉越同舟というか………
殆どボートピープルだな、こりゃ。
この人達は、試合の前も「ノーサイド」。
翌日(31日/日) ちょっと時間が有ったので散歩していると偶然(必然ではない)
こんな場所に出くわしてしまった。厦門火車站からの引込み線で、電気機関車が
パンタグラフの上げ下げをしていた。
撮らずにはおれない(その①)
陸橋の下に降りてみると踏切が有って、丁度、遮断機が閉まり掛けているところ
だった。何が来るのか(?)と思って待っているとディーゼル機関車が単機で顔を
出したと思うと手前で停まってしまい、遮断機が開いてしまった。
撮らずにはおれない(その②)
そして機関車は何事も無かったかの様に今来た線路を戻り、無駄に待たされてた
老若男女は文句1つ垂れる訳でもなく、整然と踏切を渡り出したのだった。立ち
止まって写真を撮っていた自分だけが、交通の流れをかなり乱していたみたいだ。
夕方、空港で上海便のチェックインに並ぼうとしたところ、背後から「ラグビー
だ何だ」とわめき立てる声が聞こえて来て何事かと思ったら成都熊猫のメンバー
だった。遠征先で、ファンクションの後に一旦は「サヨナラ」をしたけど、空港
とかでまたバッタリと出くわす事はよく有る。お互い帰りの目的地が違うだけに
「また今度な」感の増幅が、涙腺を多いに刺激する。
しかし、だ。皆と別れて搭乗口付近でパソコンをいじってたら「よっレフリー!」
って寄って来られて「アンタら、どこまで着いて来るんじゃい!?」。搭乗口が
たまたまお隣同士だからというだけなんやけどね。
ダラダラと長くなるけどもう1つ「それから談」が有って、帰りの飛行機で無料
配布されていた地元紙を、隣に座ったオッサンが読んでいるのを何気無く盗み見
していると、アレま、試合の事が記事になってるじゃあないですか。上海到着時、
オッサンが読み捨てたのをくすねて来ました。
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@厦門日報(2010年1月31日、芸文/体育面)
そう言えば、それ也のカメラを抱えた人も居てましたなぁ。でも写真では完全に
「スクラムの向こう側」で辛うじて隙間から緑色のストッキング(presented by
優ちゃん)が写り込んでいるだけで……やっぱりレフリーは裏方、主役にはなれ
ないのね。
さて、今回とても素晴らしいアレンジをして頂いたPATRICKさんを初めと
する厦門台風の皆さん、本当に有難うございました。5月の厦門10'sは 興味
有りです。底抜けに面白い成都熊猫の皆さん、乾杯杯のタイトル防衛おめでとう
ございます。そして、華東裁判協会のDAVIDチェアマン、素晴らしい機会を
頂き有難うございました。末筆で恐縮ですが、謝意と敬意を表させて頂きます。
………という訳で、※山編集長、1/30は「公欠扱い」でお願いしますね。
Michael.