散らばるガラスの破片。
わたしたちは、9GOATS BLACK OUTというバンドを、水槽に閉じ込められた魚を見るように、ただ「鑑賞」していたのかもしれない。
“きれいだね”と。
ライブハウスという名の水族館。ひらひら泳ぐ魚と、それをじっと見つめる客。
だけど、それは違った。ライブ後半に披露された「690min」。
“来い!”
ryoさんがそう叫んだ瞬間、水槽のガラスは砕け、音の洪水が客席に流れ出した。9GOATS BLACK OUTは、SHOW CASEを内側から壊したんだよね。
これを受け入れられない客は置き去りにされる、なぜかそう感じた。
特にutAさんにいたっては、ものすごい変貌ぶりだった。この曲のあとに披露されたソロ。シャウト混じりに“心ぶっ放してこい!!”と煽り、ギターを掻きむしる。“本当にutAさんだよね?”と思わせるほどの堂々っぷり。音もクリアになり、ヒヤヒヤさせられていた「Sleeping Beauty」のアルペジオもなめらかに奏でる。
アンコール時のMCで“ギタリストとしてムカつくくらいまだまだなんで”と語っていたところを見ると、もしかしたらそうとう練習したのかもしれない。
いままでの9GOATSって、やはりryoさんがカリスマ的な魅力で引っ張っていたと思うのよね。どうしても彼に目がいってしまったし。だけど、この日のライブで見たのは、対等に並ぶ3人の姿だった。
たぶん楽器陣のお2人も、ryoさんのファンだと思うのよ。“ryoさんを立てよう”みたいなところが以前にはあったのかなって。“自分はいいから彼を観て”と。
しかしいまは“9GOATS BLACK OUTというバンドをどう魅せるか”に徹するようになった。自分もメンバーの一員だと気がついて、やりたいことが明確に見えてきたのかもしれない。己の存在意義を自覚した彼らは、めちゃめちゃカッコよかった。
アンコールでhatiさんを中心におちゃめなMCをしててさ。ryoさんが“9GOATSはしっかりした世界観で成り立っているけど、こういうコミュニケーションの部分も大切にしています。片面だけの僕らではなく下に隠れている根っこの部分……そこも見てくれると、隠れた部分が見えてくる”といったことをおっしゃっていたのね。
これは楽曲に対しても言えることなのかなーと。
9GOATS BLACK OUTは、聴かせる曲が多いバンドだと思うのよね、世界観に溺れさせるような。
だけど、そんな彼らにも狂気に満ちた荒々しい曲があって。そして、この曲たちにもまたひとつの世界観が存在している。
じっくり聴きたい、もっと暴れたい。それはオーディエンスの自由。
でも、それをバンドに押しつけるのは大きな間違いだなって。「静」と「動」。この両極を受け入れてこそ、真の9GOATS BLACK OUTが見えてくるんじゃないかなあと。
水槽は砕け、客席にも水が流れ込んだ。ときに優雅に泳ぎ、ときに戯れて。この日は「同じ空間を共有する」という「ライブ」の醍醐味がものすごく表れていたステージだったと思う。
アンコールにて、2009年9月21日渋谷O-WESTでのワンマン公演が決定したと伝えたryoさん。沸き上がるオーディエンスに“喜んでくれるんだね”とやさしく微笑んでいた。
そして、“〈Bright Garden〉を美しく締めないと”と壮大な「落日」を披露し、美しい詩がつぶやかれた「天使」で、彼らは物語に終止符を打った。まるで映画のエンドロール。
ああ、そうかと。
ここにきてすべての謎が解けたような気がした。なぜ、「落日」が『Black rain』に収録されたのかも。それは必然的なことだったんだなって。今を生きるための、そして次の世界へ羽ばたくための。
“これで〈Bright Garden〉とう……言ってしまえば『devils in bedside』から続いた一連のストーリーの幕を閉じます。この先のパッセージは、明確に見えていて。それをWESTでは見せます。……最後に、出来たての新曲を聴いてもらいたい”
そんな言葉のあとに演奏されたのは、「この先」へのヒントとなる初披露の新曲。
アコースティックギターのように透き通った音色のカッティングが印象に残るミディアムナンバー。後半に進むにつれ加速していくさまは、夏の夜の空気を吸い込んだように、どことなく切なくも感じる。
しかし、聴こえてきた歌詩の断片の中には“枯れることのない世界の中”というフレーズが。前向きな意志を感じた。
“これからも、僕たちの信じている音楽を信じてやっていくので、支えてください”
歌謡いの涙の粒と、鳴り止まぬ拍手の雨。
〈Bright Garden〉、そこは終わりとはじまりが生まれる場所だった。
◆SET LIST◆
SE.
01.a light
02.SALOME
03.夜想曲-nocturne-
04.sink
05.ROMEO
06.raw
07.新曲
08.Lestat
09.Den lille Havfrue
10.Sleeping Beauty
11.float
12.690min
~utA solo~
13.headache
14.新曲
15.in the rain
-EN-
16.落日
17.天使
18.新曲
わたしたちは、9GOATS BLACK OUTというバンドを、水槽に閉じ込められた魚を見るように、ただ「鑑賞」していたのかもしれない。
“きれいだね”と。
ライブハウスという名の水族館。ひらひら泳ぐ魚と、それをじっと見つめる客。
だけど、それは違った。ライブ後半に披露された「690min」。
“来い!”
ryoさんがそう叫んだ瞬間、水槽のガラスは砕け、音の洪水が客席に流れ出した。9GOATS BLACK OUTは、SHOW CASEを内側から壊したんだよね。
これを受け入れられない客は置き去りにされる、なぜかそう感じた。
特にutAさんにいたっては、ものすごい変貌ぶりだった。この曲のあとに披露されたソロ。シャウト混じりに“心ぶっ放してこい!!”と煽り、ギターを掻きむしる。“本当にutAさんだよね?”と思わせるほどの堂々っぷり。音もクリアになり、ヒヤヒヤさせられていた「Sleeping Beauty」のアルペジオもなめらかに奏でる。
アンコール時のMCで“ギタリストとしてムカつくくらいまだまだなんで”と語っていたところを見ると、もしかしたらそうとう練習したのかもしれない。
いままでの9GOATSって、やはりryoさんがカリスマ的な魅力で引っ張っていたと思うのよね。どうしても彼に目がいってしまったし。だけど、この日のライブで見たのは、対等に並ぶ3人の姿だった。
たぶん楽器陣のお2人も、ryoさんのファンだと思うのよ。“ryoさんを立てよう”みたいなところが以前にはあったのかなって。“自分はいいから彼を観て”と。
しかしいまは“9GOATS BLACK OUTというバンドをどう魅せるか”に徹するようになった。自分もメンバーの一員だと気がついて、やりたいことが明確に見えてきたのかもしれない。己の存在意義を自覚した彼らは、めちゃめちゃカッコよかった。
アンコールでhatiさんを中心におちゃめなMCをしててさ。ryoさんが“9GOATSはしっかりした世界観で成り立っているけど、こういうコミュニケーションの部分も大切にしています。片面だけの僕らではなく下に隠れている根っこの部分……そこも見てくれると、隠れた部分が見えてくる”といったことをおっしゃっていたのね。
これは楽曲に対しても言えることなのかなーと。
9GOATS BLACK OUTは、聴かせる曲が多いバンドだと思うのよね、世界観に溺れさせるような。
だけど、そんな彼らにも狂気に満ちた荒々しい曲があって。そして、この曲たちにもまたひとつの世界観が存在している。
じっくり聴きたい、もっと暴れたい。それはオーディエンスの自由。
でも、それをバンドに押しつけるのは大きな間違いだなって。「静」と「動」。この両極を受け入れてこそ、真の9GOATS BLACK OUTが見えてくるんじゃないかなあと。
水槽は砕け、客席にも水が流れ込んだ。ときに優雅に泳ぎ、ときに戯れて。この日は「同じ空間を共有する」という「ライブ」の醍醐味がものすごく表れていたステージだったと思う。
アンコールにて、2009年9月21日渋谷O-WESTでのワンマン公演が決定したと伝えたryoさん。沸き上がるオーディエンスに“喜んでくれるんだね”とやさしく微笑んでいた。
そして、“〈Bright Garden〉を美しく締めないと”と壮大な「落日」を披露し、美しい詩がつぶやかれた「天使」で、彼らは物語に終止符を打った。まるで映画のエンドロール。
ああ、そうかと。
ここにきてすべての謎が解けたような気がした。なぜ、「落日」が『Black rain』に収録されたのかも。それは必然的なことだったんだなって。今を生きるための、そして次の世界へ羽ばたくための。
“これで〈Bright Garden〉とう……言ってしまえば『devils in bedside』から続いた一連のストーリーの幕を閉じます。この先のパッセージは、明確に見えていて。それをWESTでは見せます。……最後に、出来たての新曲を聴いてもらいたい”
そんな言葉のあとに演奏されたのは、「この先」へのヒントとなる初披露の新曲。
アコースティックギターのように透き通った音色のカッティングが印象に残るミディアムナンバー。後半に進むにつれ加速していくさまは、夏の夜の空気を吸い込んだように、どことなく切なくも感じる。
しかし、聴こえてきた歌詩の断片の中には“枯れることのない世界の中”というフレーズが。前向きな意志を感じた。
“これからも、僕たちの信じている音楽を信じてやっていくので、支えてください”
歌謡いの涙の粒と、鳴り止まぬ拍手の雨。
〈Bright Garden〉、そこは終わりとはじまりが生まれる場所だった。
◆SET LIST◆
SE.
01.a light
02.SALOME
03.夜想曲-nocturne-
04.sink
05.ROMEO
06.raw
07.新曲
08.Lestat
09.Den lille Havfrue
10.Sleeping Beauty
11.float
12.690min
~utA solo~
13.headache
14.新曲
15.in the rain
-EN-
16.落日
17.天使
18.新曲