興味深い本だった。
サムスンに代表される韓国企業。その成功の裏で苦しむ韓国国民。サムスンを見習えという評論家。
私も解を見いだせずにいたこの問題を扱った本である。
企業ビジネスの成功という視点と、国の国民の幸福という視点では全く進む道が違うという話なのだが、この本では、国民の幸福を望むならデフレ経済からの脱却とゆるやかな保護主義が必要だと言っている。
そして、日本はどの国をも真似してはだめなんだと言っている。
ずっと前に書いたことがあると思うのだが、地球の人口の約5%を占めるアメリカが、地球のGDPの27%を占め、その3分の1スケールの日本が9%を占めるというのは、決して良い事ではないと私は思うのだ。
現在の先進国における製造業の成功者は、国の間の人件費の格差を利用してより安くものをつくり、安く売ることで、価格競争に勝った企業になっている。
つまりこれは、アメリカや日本のような富を独占し人件費の高い国と、一方で貧しく人件費の安い国が存在してこそ成り立つ競争なのだ。
しかし、生産が人件費の安い国に移行すれば、豊かな国で生産していた人々は職を失い、購買力をなくしてしまう。また、デフレ経済に陥ってしまう。
一方、生産を担う方の国ではインフレが起こり、インフレに見合った賃金が要求されるようになると、生産国としての競争力をなくすから、何とか賃金を抑制しようとする。
結局、地球規模で貧しい末端労働者と、肥え太った経営者や一部のエリートというところへ収束していくことになる。
そんなことでは、大多数の人が不幸になり、何もいいことがないし、やがては生産されたものを誰も買うことができなくなるではないか。
豊かな国と貧しい国が存在していううちは、今のようなやり方が通用しても、1%の豊かな人と99%の貧しい人が世界中に散在する時代になることはあり得ない。
この本では日本が幸福になることだけを書いているが、本当は世界中が幸福になることを考えないと・・・。つまり安い賃金の生産者をおいかける今のやり方では何も解決しない。
まあでも、かなり行きつくところまで行きつかないと、新しい経済構造は生まれてこないだろう。
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