日本国憲法 第六十六条
『内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣総理大臣その他の国務大臣は、"文民"でなければならない。
内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。』
GHQ草案では戦力を保持しないことが想定されているために文民条項が草案に盛り込まれることはなかった。いわゆる「芦田修正」の9条2項『前項の目的を達するため』が加えられ、今後日本が軍隊を保有しうることを問題視した。
1946年9月25日、極東委員会は文民条項の規定を求める決定を下し、GHQを通じて日本政府に修正が要請され、貴族院での審議において、憲法66条が修正され、文民条項が設けられた。
文民とは軍人以外の者であり、シビリアンコントロールとは文民統制のことである。
自衛隊イラク派遣の日報隠しで新聞各社文民統制が機能していないと一斉に報道しているが、正確には「文民統制は機能しているのか?」「深まる疑惑」「文民統制を逸脱している」と懐疑的な表現である。
つまり、文民たる防衛大臣に報告が上がっていなかった現状を自衛隊の隠蔽体質と判断すれば確かにコントロール出来ていない様にも思える。
陸自が昨年3月にこの日報を確認しながら、当時の稲田朋美防衛相に報告していなかったことが明らかになり、日報が早くから確認されていながら自分に報告がなかったことについて「本当に驚いた。怒りを禁じ得ない」と述べているが、今回イラク派遣に関しての日報問題で各歴代大臣のコメントを見てみよう。
稲田議員
「背広組と制服組が、もっと密にコミュニケーションを取っていれば、今回の問題は起きていないはずだ。まだまだ組織が縦割りで、改革を進める必要がある。真実は、どうだったのかを明らかにしてほしい」
石破茂議員
「文民統制を揺るがすガバナンスの危機だ」
「仕事をするときに直属の上司には忠実でも、大臣を見ていない自衛隊員は多い。稲田氏だから報告しなかったということではなく、誰が防衛相をやっても難しい。軍隊的な階級組織ゆえの体質だ」「野党はピントがズレている。稲田氏の個人的な事情で問題が起こったわけではない。報告を受けていなかった人間に、何をただすのか。だから野党はダメなんだ」
小野寺氏は「うみを出し切る」「真相を明らかにする」
石破議員の言うようにこれが自衛隊の体質ならば果たして稲田大臣の辞任劇は何であったのか、当時の稲田大臣の辞任迄の問題とされた理由を四つに纏めた。
① 東京都議選中の板橋区で自民党候補を応援する集会で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としても、お願いしたいと思っているところだ」と訴えたが、これは国家公務員法に抵触するのでないかとの問題。
②2016年8月15日、海賊対処活動などのため自衛隊が駐屯しているアフリカ東部のジブチを訪問した。これは靖国問題への説明を避けたのではないかとみなされた問題。
③森友学園問題で稲田氏は森友学園の顧問弁護人だったことはないと発言していた。しかし、森友学園の民事訴訟に原告側代理人弁護士として出廷したことが明らかになった問題。
④マティス米国国防長官が来日した時、稲田氏は十分な防衛論議ができなかったのでないかという疑問が持たれた問題。
この他にも極右勢力との蜜月などと写真で印象操作されていたが、結局は日報問題がメインで混乱の責任を取ったのである。つまりは辞めることはなかったが、靖国問題の放置が招いた9条改正反対派の起こした混乱であったと言える。
今回のイラク派遣日報問題からの隠蔽は恐らく、文民の統制を拒絶したものではなく、文民を忖度したものであろう。
実際の問題は戦闘が発生した場合直ちに派遣先を退去せねばならず、戦闘の法律的解釈と実際の解釈に乖離があり、日報を隠蔽したのだろう。
しかし、稲田大臣の辞任は憲法に自衛隊を明記せんとする安倍政権にとっても痛手である。これでは自衛隊が文民を統制する本末転倒であり、早急な体質改善が望まれる。