大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

オバマケア改廃案、修正するも再び採択できない可能性が高まる

2017年05月03日 | 日記

 トランプ大統領は、2017年5月3日(水)か4日(木)にオバマケア改廃の修正案を下院本会議で採択するとしているが、党内からの反対が多くふたたび採択断念となる可能性が高まっている。

 下院共和党は今年3月、党内の保守強硬派(フリーダム・コーカス=自由派)の反対を切りくずことができず、オバマケア改廃案の本会議採択を断念した。

 しかしその後、トランプ大統領は保守強硬派にあわせるかたちで法案の修正を主導し、先週、保守強硬派の法案への賛成を取り付けた。

 修正内容は、1)州が希望すれば、妊娠、精神医療、緊急治療を保険のカバーからはずすことができる(希望者だけそれらのオプションをつけるようになる)、2)州が希望すれば既往症などがある場合、同一年齢の人にことなった保険料を求めることができる(既往症のある人に高い保険料を請求できるようになる)、というもの。

 しかし、たとえば妊娠がオプションになると、オバマケア以前そうだったように、妊娠をまじかにひかえた人だけが妊娠のオプションをつけることになる。つまり保険会社の大きな持ち出しが確実な人だけがオプションをつけるようになるので、オプションの保険料は高騰する(ほかの人の保険料は少し安くなるが)。

 オバマケア以前、アメリカで1年暮らしたとき、妊娠を医療保険に加えると1年の保険料が100万近くアップする場合もあることを知って驚いたことがあるが、修正案がとおるとそのような状況が復活する。

 またそのときアメリカで知り合った人は、心臓の既往症があったことと奥さんの関係で、既往症と妊娠をカバーする保険に入っていたが、一年の保険料を約300万円払っているということだった(カバーが同一でも受診できる病院の範囲などで保険料はさまざま)<注1>。

 トランプ大統領は選挙期間中、既往症がある人の保険料は上げないと強調していたが、修正案はそれを裏切る内容となっている。

 こうした内容に、共和党内の穏健派は強く反発

 共和党から23人の造反者がでると法案は否決されるが、NYTなど複数メディアは、共和党のなかですでに21人が法案への反対を決め、それとほぼ同数の議員が立場を決めていないと伝えている。

 修正案が下院本会議で採択されるのは難しい状況になってきている。

<注1>

 NYT(2017/5/3)によれば、2012年において癌、心臓病など深刻な既往症のある人の一年あたりの保険コストは平均で3万2千ドル(350万円:1ドル=110円で計算)となっている。

 オバマケア以前、アメリカではこのような高額の保険料を支払えず、かといって無料のメディケイドに入れるほど所得が極端に低くない人(とくに白人低所得者層)は無保険になるしかなかった。