アメリカで失業保険の新規申請件数が1969年末と同じ水準にまで低下している。
米労働省によれば、2017年2月最終週の申請件数は22万7千件。これは1969年12月最終週とほぼ同じ水準で、実に47年ぶりのことになる。
しかし1969年と今では、大きく異なることがある。
1961年2月から1969年12月までの景気拡大期において、物価上昇率(PCE)は今とほぼ同じ2.2%だが、平均時給の伸びは今の二倍近い4.9%だったという違いである。
人口増加などを考えれば、1969年より今の方が失業保険の申請(率)は減っている。しかし、賃上げがともなわないのである。
どうしてなのか?
少し前に、この理由について分析した論文(pdfファイル)を公表した。手前みそになるが、とくべつな専門知識がなくても理解しやすい論文だと思う。
アメリカでは、失業率が下がっても賃金が上がらないことをスラック(家庭や職場に存在する過剰労働力)から説明することが多いが、論文は、それ以外に労働分配率の低下が大きく影響していることを明らかにしている。
もし論文のとおりであれば、アメリカでは今後も、賃上げは穏やかな形でしか進まないことになる。
この問題は日本も抱える問題である。
興味のある方は参照いただければと思う。