2017年9月28日(金)中立のTax Policy Centerは、先日公表された税制改革案の分析を公表した。
その概要は次のとおり。
(1)議会決議により10年間で1.5兆ドル(165兆円:1ドル=110円)という減税規模が決まっている。
しかし税制改革案をすべて実行すると減税額は2.4兆ドル(260兆円)になってしまう。
なんらかの修正が必要である。
(2)企業減税によって10年で2.6兆円(290兆円)の税収減になる。
相続税の廃止で10年で2400億ドル(26兆円)の税収減となる。
一方、個人の所得税(企業にかかわる収入は除く)については10年で4700億ドル(50兆円)の税収増となる。
えっ?間違いじゃないの?という感じだが、当初は個人からの税金が減っても人々の所得が徐々に上昇するとともに個人からの税金収入も増加に転じる(企業ほど減税規模が大きくないため)、またこれまであった州税など地方税を所得から控除できなくなる、所得税率の最低が10%から12%に引き上げられるなどの結果である。
(3)個人減税の恩恵が一番大きいのは所得上位1%である。
2027年でいうと、個人減税の約80%は所得上位1%(現在73万ドル=8千万円以上)の人々の手にわたる。
こうした減税案の是非はおくとしても、少なくともこれがミドルクラスのための減税でないことだけは確かだろう。
ちなみにバノン氏が会長に復帰したニュース掲示板ブライト・バートをみると、税制改革についての注目は小さい。
いまはもっぱらNFLで国歌斉唱への抗議が広がっていることへの批判で盛り上がっている。
少数でかわされている議論も、単一の税率を導入すべきだ(その意味で税率を7つから3つにするのはいいことだ)という議論にとどまり、富裕者優遇と批判するものはあまりみない。
はたからみると問題の多い税制改革案だが、共和党支持の人たちのトランプ氏支持はまったくゆるいでいないようだ。
共和党内でおこなわれる今後の修正協議を注視していきたい。