米下院は11月1日に税制改革法案を公表、11月中に下院で法案を可決、年内に最終法案を上下両院で可決する予定と伝えられている(2017/10/31 加筆修正)。
ところで先に発表された税制改革案に修正の動きがあった。
州税など地方税を所得から控除して(差し引いて)連邦所得税を計算できる仕組みの廃止の見直しである。
アメリカは州によって税制が大きく異なる。
一般に、カリフォルニアやマサチューセッツなど民主党が強い州は高い所得税(住民税)を課し、高い住民サービスを提供していることが多い。
一方、共和党が強い州は、所得税(住民税)がなかったり、あっても低率なことが多い(最低限の住民サービスを提供)。
地方税の控除をやめれば10年で110兆円近い税収増があるうえに、共和党の地盤州への影響は少ないという見方がこれまでは多かった(1ドル=110円で計算。以下同)。
しかしこれで大きく増税となるのは共和党支持が多い1千万円以上層。
共和党と民主党の支持がきっこうするスイング・ステーツ(揺れる州)で大きな影響が出かねない。
こうしたなかウォール・ストリート・ジャーナルによれば、とくに中所得層の増税を避けるため、(1)地方税の控除廃止を高所得層に限る(中所得層はこれまでどおり控除できる)、(2)地方税の控除額に上限を設ける、(3)州が課す固定資産税の控除を残す、などの修正案が検討されている模様。
問題は、こうした修正をおこなえば減税の財源(110兆円)が減るということ。
その分、ほかの減税規模を小さなものにする必要がでてくる。
先に発表された減税案(10年で260兆円)は地方税の控除廃止で110兆円の税収増を見込みながら、議会決議できめられた165兆円という減税上限を大幅に超えており、修正が必要不可欠になっている。
控除廃止の見直しにより、それがさらに難しくなる。
ホワイトハウスは最近、減税により4%の経済成長(とそれによる大幅な税収増)が可能だと主張しているが、ウルトラC(古い?)としては、それを前提に無理やり数字を合わせる(修正をしないで法案を通す)ということもありえなくない。
その場合は、連邦政府の財政赤字が大幅に悪化し、金利の高騰、それにともなうドルの高騰などさまざまな問題が出てくる可能性が高まる。
アメリカにおける減税の行方をこれからもしっかり追っていきたい。