トルコ通貨リラが暴落している。
2018年8月10日(金)、リラはアメリカの対トルコ関税引き上げをきっかけに対ドルで16%近く下落。今年に入ってからリラの対ドル下落率は70%に達した(1ドル3.8リラ⇒6.8リラ)。
こうした通貨下落にエネルギー価格の高騰がかさなり、2018年6月のトルコのインフレ率は15.4%。人々の生活を直撃している。
しかしより深刻なのは、外貨とくにドルで大量のお金を借りている企業である。
トルコは新興国のなかでも外貨建ての借金が多い(資金を国内でまかなえていない)。ニューヨーク・タイムズ(2018/8/11)によれば、トルコの外貨建て債務はGDPの約70%に達している。
ドルでお金を借りている企業は、リラが70%下落すれば、返済(あるいは借り換え)のコストが70%アップしてしまう。
トルコでは、世界的な低金利を利用して過剰な借り入れをおこなっていた企業も多いとみられ、こうした企業で債務返済が重荷になるところが多数出てきている(フィナンシャル・タイムズによれば為替ヘッジしていた企業は少ない)。
ちなみに、資金のおもな貸し手はヨーロッパとアメリカ。
前掲フィナンシャル・タイムズによれば、スペイン、フランス、イタリアの銀行はリラ建ておよび外貨建て合わせて、それぞれ833億ドル(9.2兆円)、384億ドル(4.2兆円)、170憶ドル(1.9兆円)の債権を有している。
また前掲NYTによれば、アメリカの投資家は既発債の25%、公開株式の半数以上を所有している。
トルコで大規模な債務不履行がおこれば、欧米の銀行、投資家も大きな痛手を被ることは必至である。
NYTの記事は、トルコ発で世界金融恐慌が生じ、その規模はリーマンショックを上回ると予想するアナリストを紹介しているが、最近、米英の経済メディアではトルコが世界的な景気後退の引き金を引くとする記事をよくみる(トルコを、炭鉱のカナリアに例えることが多い)。
もっともトルコがこのまま無策で経済危機に突入する可能性は小さく、あとから見れば、これまで多くあった「一時的な経済混乱」に過ぎない可能性が高いように思うが、しばらく注意してみていきたい。