大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカとメキシコ、NAFTA(北米自由貿易協定)の修正について暫定合意

2018年08月28日 | 日記

 2018年8月27日(月)、アメリカとメキシコはNAFTA(北米自由貿易協定)の修正について暫定合意に達した。

 日本でも大きく報じられているが、報じられていないこともあり備忘録をかねてここに合意内容をまとめておく。

 オートモーティブ・ニュースによると、おもな内容は以下の通り。

1)今回の合意は、3国間協定(NAFTA)ではなくアメリカとメキシコの間の2国間協定である。

2)カナダには、今回の合意に参加することをうながす(今週金曜がめど)。もし参加しないなら、カナダとは別個の2国間協定の締結をめざす。

3)自動車輸出が無関税となる条件を、従来の域内の内製率62.5%から75%に引き上げる

4)自動車輸出が無関税となる条件としてあらたに、時給16ドル(1,800円:1ドル=110円)以上の地域で作られた部品が40-45%を占めなければならないとする。これは実質的にアメリカ(カナダ)の部品の使用率を40-45%にすることを求めるものである。

5)自動車輸出が無関税となる条件としてあらたに、一定比率の北米産の鉄鋼、アルミの使用を求める。

6)上記の条件を満たせない場合既設工場からの輸出にはアメリカの最恵国待遇の2.5%の関税を課す。今後建設される新工場からの輸出には20-25%の関税を課す予定。

7)6年ごとに内容を見直す(最長16年間)。

8) 安全保障上の理由から、メキシコから年240万台を超える完成車の輸出、年900億ドル(10兆円)を超える部品輸出に対し25%の関税を課す。ちなみに2017年のメキシコからアメリカへの輸出は180万台。 (オートモーティブ・ニュースの続報より追記)

 なお、米憲法では、関税の徴収、外国との通商の規制についての決定権限は議会にあるため、それらの新設、改訂には議会の承認が必要。大統領は、議会からの委任をうけて外国との通商協定の改定交渉などをおこなうことができるが、あくまで議会からの委任が前提となっている。

 この点について、ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領が交渉権限を与えられているのはあくまで3国間協定のNAFTAであるとしたうえで、もしカナダが参加せず2国間協定となった場合、法的な問題が生じる可能性があるとしている(議会の委任を受けていない2国間交渉をおこなっているという問題)。

 

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