大野威研究室ブログ

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2019年度上半期の日銀ETFの損益分岐点

2019年12月02日 | 経済

 

 日銀は現在、年6兆円をめどにETF(上場投資信託)を買い入れている。

 2019年11月27日に日銀が公表した2019年度上半期の財務諸表によれば(この時代にあって4半期毎の開示はない)、2019年9月末時点で、日銀が保有する指数連動型の上場投資信託は31兆6,112億円(時価)。含み益は3兆9,898億円(前期比774億円増)とされている。

 ところで気になるのが日銀が保有するETFの損益分岐点(平均買い入れ価格)。株式指数が、この金額を下回ると日銀に損失が発生するという重要な数字である。

 日銀自身はこの数字を公表していないので、いつものように簡単な推計をしてみたかったのだが今回はそれができない。

 いつもはすべて日経平均連動型のETFと仮定して計算している。

 日銀は日経平均やTOPIXなどに連動した複数のETFを購入しているが、長期でみると日経平均TOPIXの変動に極端に大きな差があるわけではないので、ふうつであればすべて日経平均連動型のETFとみなして計算しても大きな誤差はでない。

 しかし2019年度上半期はいつもと違って、日経平均の上昇率がTOPIXを3%ほどうわまわり、両者に大きなずれが生じている。

 こうした場合、TOPIX型、日経平均型などそれぞれのETF別に計算しないと正確な損益分岐点がでてこないが、日銀は計算に必要な数字(保有する各ETFごとの取得額と時価評価額)を開示していない。

 したがって、今回は損益分岐点の計算ができないのである(1万8,500円前後から1万9千円前後のあいだにあることまでは推測できるが)。

 日銀の将来を左右する重要な数字なので、日銀には保有する各ETFごとの取得額と時価評価額の公表を望みたい。

 

2020/3/10追記

 日銀の黒田総裁は参議院において、日銀が保有するETF の損益分岐点について「2019年9月末の保有状況を前提にすると、日経平均株価が1万9000円程度」と発言した。

 実は、上で述べた日経とトピックスの上昇率の違いを無視して、すべて日経平均型として計算すると約1万9千円になる。

 黒田総裁は、現在の損益分岐点は1万9500円程度とも述べている。

 

 

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