大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

コバルト不要のリチウム電池の量産化はじまる

2019年04月08日 | 日記

 中国の万向集団が所有するアメリカのA123社は、高価なコバルトをまったく使わないリチウム電池の開発に成功。今年、50万基を生産する予定になっている。

 オートモーティブ・ニュースによれば、このバッテリーはこれまでのリチウム電池よりエネルギー密度が2,3割高いうえに能動冷却が不要なため、従来のリチウム電池より小型、軽量なものとなっている。

 最初の納入先は、中国でEVを生産している長安汽車(自動車

 ところで、アメリカの自動車専門誌オートモーティブ・ニュースは、毎年、最も革新的な自動車部品の表彰をおこなっている(PACE Award)。

 昨年、その賞を受賞したひとつが上記のリチウム電池。

 今日(4/8)、今年(2019年)の受賞が発表され、ベロダイン・ライダー、ボルグ・ワーナーなど13社が選ばれた。このなかに日本メーカーは含まれていない。

 重要な産業なので、大変気になるところである。 


米中貿易協議、間もなく妥結か?

2019年04月04日 | 日記

 ブルームバーグは、米中貿易協議が妥結にむけ最終段階にはいったと報じた。

 現在の争点は、(1)合意の履行がおこなわれなかった時の対応、(2)現在の関税の撤廃時期の2つ。

 ブルームバーグは、米中は以下のような内容で大筋合意したと報じている。

(1)中国による米製品の輸入拡大100%外資の企業の設立許可2025年までに目標を達成する

(2)上記の2点について不履行があった場合、中国はアメリカが関税を引き上げることを認める

(3)知的所有権の保護など(1)以外の内容については、2029年までに達成することを目標とする。この点については、アメリカの関税引き上げの対象にしない

(4)合意内容が履行されているかどうか、協定締結の90日後、180日後にチェックする(その基準を設ける)

 ただブルームバーグは、関税の撤廃時期については米中の協議がまだ続いているとしている。

 訪米中の劉鶴(リュー・ホー)氏は、4月4日(木)にホワイトハウスを訪問する予定になっている。

 最終合意がなされた場合、その後、トランプ氏と習氏による協定調印式がおこなわれることになるとみられている。

 個人的には、トランプ氏の気質もあり、米中が合意にいたるかどうか発表されるまではわからないと考えている。

 推移を見守りたい。

 

追記 2019/4/5

 2019年4月4日、トランプ大統領は最終合意に達するまで、4週間かもう少しの時間がかかるとの見通しを述べた

 

追記 2019/5/2

 2019年4月23日、ブルームバーグは、合意の不履行などがあった場合、アメリカが米中双方にそれぞれ一方的に関税をかける権利を認める可能性を示唆した。ただし、その後、私のしるかぎり他社から同様の報道は出てきていない。

 また2019年5月1日のウォールストリートジャーナルは、アメリカが最初に課した50億ドル(5500億円:1ドル=110円)の関税が中国からの輸入の約10%に相当することから、米中双方が輸入総額の10%の関税をのこす(中国は13億ドル)ことが検討されているとしている。

 同紙はまた、中国政府による企業への補助金についてはまだ話し合いがまとまっていないが、一部のクラウドコンピュータについて中国が外資100%を認めるなど一定の進展があったとしている。

 

米中貿易協議、来週、北京で高官協議: 2つの課題  2019年03月20日 

米政府、9月24日から中国からの輸入(22兆円)に10%の関税を発動 2018年09月18日 

米中貿易摩擦の現状: トランプ大統領、22兆円の追加関税を数日内に発表予定?  2018年09月16日 

トランプ大統領、輸入車に20%の関税を提言  2018年05月12日

トランプ政権、輸入車に国内より厳しい排ガス基準、試験を検討 2018年04月08日

トランプ大統領、鉄鋼の輸入に25%の関税: 日本への影響は中国より大きい  2018年03月03日 

拡大するアメリカの対中貿易赤字とトランプ次期大統領  2016年12月23日 


世界ではつぎつぎに新しい電気自動車メーカーが誕生: 第二のテスラ、アップルとなるのか?

2019年04月04日 | 日記

 世界では、つぎつぎに新しい電気自動車メーカーが誕生し、第2のテスラ、第2のアップルを目指している。

 備忘録をかねて注目企業をあげておく。

 

1 リビアン(Rivian) EV版ピックアップ・トラック、EV版SUVを専門とするスタートアップ企業。ピックアップ、SUV用のEVモジュールを外販する可能性有。カリフォルニア州。アマゾンが出資。(2019/4/24追記:フォードが5億ドルの出資を決定。フォードはリビアンのモジュールを利用したEVを開発するとしている)。

2 Evelozcity  工場を持たない設計に特化した電気自動車のスタートアップ企業。カリフォルニア州。

3 Byton  中国の電気自動車スタートアップ企業。2020年末までにアメリカで電気自動車を発売の予定。

4 ニーオ(Nio) 中国の電気自動車スタートアップ企業。

5 e.GO Mobile  ドイツの電気自動車スタートアップ企業。VWのモジュール(MEB)を採用。

 

 なおVWは2019年1月、電気自動車のモジュラー(基本セット)であるMEBを他社に提供すると発表。これを最初に採用したのがe.GO Mobile

 VWは、自社利用を含め1千万基のモジュラー(MEB)を生産する予定。

 このモジュラーを使えば、電気自動車生産に参入するのが容易になり、またVWは大量生産することでモジュラー生産のコストを大幅に削減することができる。

 VWは、世界に先駆けて自動車のプラットフォーム化(徹底的に作りこんだ数種類の自動車の基本構造-プラットフォーム-をもとに、さまざまな車種を開発すること)を成しとげ、今それが世界標準になりつつある。

 電気自動車のモジュラー化もプラットフォーム化のように世界標準になっていく可能性が高いように思う。

 今後の展開が気になるところである。


米インフレ率、上昇の可能性: ガソリン価格が上昇

2019年04月02日 | 日記

 2019年1月と2月、米ガソリン価格は前年同月より2-3割低い価格で推移してきた。

 これがアメリカの1,2月のインフレ率を押し下げる大きな要因になった。

 ところが、原油価格の上昇をうけ2月中旬からガソリン価格が上昇

 3月25日の米レギュラーガソリンの価格は、前年同月とほぼ同じ価格にまで上昇することになった。

 これから原油やガソリン価格がどう動くか私に予想できるわけもないが、もしこの傾向がつづくとアメリカのインフレ率は予想より早く上昇がはじまるかもしれない(パウエルFRB議長をふくめ、年後半からの上昇を予想するものがこれまでは多かった)。

 ここで気になるのが、法律を専門とするパウエルFRB議長の経済認識である。

 先の議会でパウエル議長は、労働市場にはまだスラック(余裕)があると述べて、インフレ率上昇の懸念を否定した。

 アメリカでは最近、労働力率(16歳以上の人口に占める働いている人の割合-正確には求職者含む-)が上昇していることから、まだまだ働けるが実際には働いていない人-つまりスラック-がいるとされた。

 しかし、アメリカのメディアでは最近、人手不足から障がいを抱える方や刑期を終えた方の雇用がかつてなく好調だというニュース(これ自体はいいニュース)がたくさんでている。スラックというより人手不足といった方が現実を正しくとらえている気がする。

 3%台半ばの賃金上昇も続いている。スラックがあるなら、3%もの賃金上昇は(人集めのために)必要ないし、現実にならないだろう。

 私個人は、パウエルFRB議長のいうように労働市場のスラックにより物価が安定しているのではなく、ガソリン価格の下落が労働市場の過熱を見えにくくしているのではと考えている。

 3月分のCPIの発表を待ちたい(政府閉鎖のため、PCEは1月分の公表が先日あったばかり)。