大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米中、貿易協議(フェーズ1)で合意

2019年12月15日 | 経済

 2019年12月13日(金)、米中は貿易協議(フェーズ1)で合意した。

 ウォールストリートジャーナルが伝える合意内容は

(1)12月15日に予定されていた日用品など1560億ドル(17兆円:1ドル=110円)分への関税発動を撤回する。

(2)9月1日に発動された1200億ドル(13兆円)分への関税15%を7.5%にひきさげる(のこり2500億ドルにかかっている関税25%はそのまま)。

(3)中国は2年で農作物の輸入を320億ドル(3.5兆円)ふやす。この結果、農作物の輸入総額は400億ドル(4.4兆円)となる。<米中貿易摩擦が激化するまえの2倍の水準>

(4)中国は知財保護を強化する

 その他の詳細(検証手続きなど)については不明。

 WSJは、2020年1月のはやい時期に協定書の調印がおこなわれ、その30日後に協約が発効するみこみとしている。

 ところで、中国政府はこれまで4兆円をこえる農作物の輸入については現実的でないと強く反発していた。WSJが伝えるような内容にほんとうに中国が合意したのか―明確な数値目標の設定に合意したのか―やや疑問に思わないでもない。

 またアメリカは合意内容が守られなかった場合、引き下げた関税をもとにもどすなどの仕組みを強く要求していたが、WSJの伝える合意内容にははいっていない。この点もふくめまだ協議が続いているのではないか(前回同様、今回は基本的な枠組に合意しただけではないのか)という疑問も払しょくできない。

 WSJで協定の調印を両国首脳でなく、ライトハイザー氏と劉鶴(リューホー)氏がおこなうとされている点もそのような疑問を強める。

 続報をまちたい。

 

 

2019/12/14 米中貿易協議、合意へ

2019/10/11 米中貿易協議、部分合意なるか?

 

2019/08/02 米、対中関税第4弾を発表: 9月1日に33兆円分の輸入に10%の関税

2019/06/29  米中、追加関税の無期限延期などで合意

2019/06/28  中国、関税の全撤廃、ファーウェイへの規制撤廃を要求か

2019/06/19  米中首脳、G20会談で合意

2019/06/15 G20でトランプ氏と習氏の交渉なければ、25%関税発動のカウントダウンはじまる?

2019/06/05  アメリカの国別輸入額のトップはメキシコ: 6月10日から5%の関税適用

2019/05/10  アメリカ、対中関税の25%への引き上げ実施

2019/05/07  米中貿易協議で中国、先週末にこれまでの合意内容の見直しを要求

2019/05/06  中国、今週の米中協議をキャンセルか?

2019/05/06  トランプ大統領、今週金曜日に対中関税を25%に引き上げると宣言

2019/05/03   米中貿易協議、来週末までに大枠決定か?

2019/04/04 米中貿易協議、間もなく妥結か?  

2019/03/20 米中貿易協議、来週、北京で高官協議: 2つの課題 

2018/09/18 米政府、9月24日から中国からの輸入(22兆円)に10%の関税を発動 

2018/09/16 米中貿易摩擦の現状: トランプ大統領、22兆円の追加関税を数日内に発表予定? 

2018/05/12 トランプ大統領、輸入車に20%の関税を提言 

2018/04/08 トランプ政権、輸入車に国内より厳しい排ガス基準、試験を検討

2018/03/03 トランプ大統領、鉄鋼の輸入に25%の関税: 日本への影響は中国より大きい

2017/01/05 新自由主義のレーガン大統領のもとで保護貿易的政策が積極的に進められた

2016/12/23 拡大するアメリカの対中貿易赤字とトランプ次期大統領 

2016/11/11 トランプ氏は過激な公約を放棄しない


米中貿易協議、合意へ

2019年12月14日 | 経済

 ウォールストリートジャーナル(2019/12/12)は、米中貿易協議(フェーズ1)が合意に近づいていると報じた。

 アメリカは現在、中国から輸入する2500億ドル(28兆円:1ドル=110円)分について25%1110億ドル(13兆円)分について15%の関税をかけている。

 WSJによれば、アメリカは最近になって中国にたいしこれらの全関税を半分にすることを提案。

 かわりにアメリカは、(1)農作物の輸入について具体的な数値を決める、(2)4半期ごとにその数値が守られているかチェックする、(3)約束の数値が守られなかった場合、関税をもとにもどす、といった仕組みを求めている。

 中国はこれまで、アメリカからの輸入拡大、知財保護などとひきかえに、これまでかけられてきた関税の撤廃を要求してきた。

 今回の米側提案を中国が受け入れるか注目される(WSJは12月13日<金>に米中合意と伝えている)。

 なおWSJは、12月15日から予定されていた関税引き上げは(合意により)撤廃されると伝えている。

2019年12月14日追記

  トランプ大統領はツイッターで、上記の記事とくに関税引き下げについて間違っていると指摘。WSJはもっとましな情報源(リーカー)を見つけるべきだと皮肉を飛ばしている。 

   

 その一方、CNBCは中国政府が協議文書に合意したと発表と報道。

 引き続き状況の推移を注意してみていきたい。

 

 

2019/10/11 米中貿易協議、部分合意なるか?

 

2019/08/02 米、対中関税第4弾を発表: 9月1日に33兆円分の輸入に10%の関税

2019/06/29  米中、追加関税の無期限延期などで合意

2019/06/28  中国、関税の全撤廃、ファーウェイへの規制撤廃を要求か

2019/06/19  米中首脳、G20会談で合意

2019/06/15 G20でトランプ氏と習氏の交渉なければ、25%関税発動のカウントダウンはじまる?

2019/06/05  アメリカの国別輸入額のトップはメキシコ: 6月10日から5%の関税適用

2019/05/10  アメリカ、対中関税の25%への引き上げ実施

2019/05/07  米中貿易協議で中国、先週末にこれまでの合意内容の見直しを要求

2019/05/06  中国、今週の米中協議をキャンセルか?

2019/05/06  トランプ大統領、今週金曜日に対中関税を25%に引き上げると宣言

2019/05/03   米中貿易協議、来週末までに大枠決定か?

2019/04/04 米中貿易協議、間もなく妥結か?  

2019/03/20 米中貿易協議、来週、北京で高官協議: 2つの課題 

2018/09/18 米政府、9月24日から中国からの輸入(22兆円)に10%の関税を発動 

2018/09/16 米中貿易摩擦の現状: トランプ大統領、22兆円の追加関税を数日内に発表予定? 

2018/05/12 トランプ大統領、輸入車に20%の関税を提言 

2018/04/08 トランプ政権、輸入車に国内より厳しい排ガス基準、試験を検討

2018/03/03 トランプ大統領、鉄鋼の輸入に25%の関税: 日本への影響は中国より大きい 

2016/12/23 拡大するアメリカの対中貿易赤字とトランプ次期大統領 


英保守党、圧勝

2019年12月13日 | 政治

 2019年12月12日(木)、イギリスで総選挙がおこなわれた。

 BBCによる出口調査の結果は(過半数は326)、

 保守党368

 労働党191

 自由民主党13

 選挙終盤、労働党が追い上げているという世論調査の結果もあったが、結果は保守党がほとんどすべての事前予想を上回って圧勝した。

 これで来年1月末でのEU離脱がほぼ確定した。

 私の専門である労働についていうと、イギリスはこれまでEUのルールにしばられていた(労働時間などは例外処置をうけてはいたが)。

 EU離脱後は、イギリスの競争力を高めるという名目で、労働規制の柔軟化が推し進められる可能性が高いと思われる(ただしそのタイミングは不明)。

 ほかにも環境規制などさまざま分野で変化がおこる可能性がある。

 離脱後のイギリスの変化を注意してみていきたい。

 なお大敗した労働党についてはコービン党首が辞任を表明した。

 労働党のゆくえも注意してみていきたい。

 

2019/12/14追記

 最終結果

 保守党 365(+47) ( )内は選挙前からの増減

 労働党 203(-59)

 スコットランド国民党 48(+13)

 自由民主党 11(-1)

 民主統一党 8(-2)

 保守党はサッチャー首相登場いらいの歴史的な大勝をおさめた。

 

 

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ドイツ社会民主党、連立維持へ

2019年12月10日 | 政治

 2019年11月30日(土)、ドイツ社会民主党(SPD)党首選がおこなわれ、連立懐疑派のワルターボーヤンス氏とエスケン氏が共同党首に選出された。

 これにより連立離脱の動きが強まるかと思われたが、2019年12月6日、SPDは党大会において連立維持を決定した。

 ちなみにウォールストリートジャーナルによれば、SPDは以下の政策を要求している

(1)2020年1月から10ユーロ(1200円:1ユーロ=120円)になる最低賃金を12ユーロ(1440円)に引き上げる

(2)気候温暖化対策を飛躍的に強化する

(3)均衡財政の原則を放棄してインフラ、福祉拡充のため60兆円規模の財政出動をおこなう

 しかし、メルケル首相ひきいるキリスト教民主同盟(CDU)が、均衡財政の放棄を受け入れると考える人はいまのところ少数である(ただ一部に政策転換を予想するむきもある)。

 SPDは州によっては緑の党より支持率が低くなっているが、今回の連立維持の決定により党勢にどのような影響があるか(支持率低下がどこまで続くか)注意してみていきたい。


英総選挙、保守党のリードが半減: 野党の選挙協力で保守党の過半数割れも

2019年12月08日 | 政治

 2019年12月12日(木)に英総選挙がおこなわれる。

 2週間前にはEU離脱をうったえる保守党の圧勝が予想されていたが、ここにきて保守党のリードが半減しているとする調査結果がでてきた。

 BMG調査は11月19-20日から11月11-27日にかけて保守党と労働党の支持率の差が13%から6%に半減したとする結果を公表。

 Savanta/ComResも、12月2日から7日にかけて両党の差が10%から6%に縮小したとする調査結果を公表している。

 もっとも、英国に住む人々の投票行動は予想が難しく、最近の選挙で世論調査はことごとく予想をはずしているので、この結果をどこまで信用できるかはわからない。

 実際、Opinium調査は、この1週間、両党の支持率の差が15%でほとんどかわらないとするまったくことなった調査結果を公表している。

 ところで、こうした情勢の変化をうけ野党の間で、当選できそうな野党候補に投票を集中(tactical voting)しようとする動きがはじまった。

 ガーディアン紙は、野党の選挙協力がうまくいった場合、次のような選挙結果が予想されるとしている(過半数は326)。

 保守党 309

 労働党 255

 スコットランド国民党 49

 自由民主党 14

 つまり保守党は過半数をえられないという予想である。

 実際にそうなった場合、イギリスはEUとふたたび離脱案を協議しなおし、その案のうけいれ可否を国民投票で問うという流れになりそう。

 ちなみに前回選挙後、保守党に閣外協力してきた北アイルランドの民主統一党(現8議席)は、ジョンソン首相のEU離脱案に強く反対しており、選挙後の協力は困難とみられている。

 今回の選挙も、結果がでるまでまったく予想できない展開になってきた。

 12月12日(木)の選挙結果に注目したい。

 

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