第164回直木賞が、 西條奈加さんの「心淋し川」(うらさびしがわ)に決まった。西條奈加さんは北海道池田町生まれであるが、私が卒業した隣町の下音更小学校・中学校を出ているので後輩にあたる。十勝の池田町は、自宅から約20キロ離れていて、十勝ワインなどを作っているワイン城が有名であるが、シンガーソングライターでドリカムのボーカル担当の“吉田美和さん”が生まれたところでもある。彼女が歌っている“未来予想図2“は、多くの人が知っている歌であるそうだ。
受賞作の「心淋し川」は、今の東京・千駄木周辺にあたる江戸の片隅で、どこか心にわだかまりを抱えながら暮らす人たちを主人公にした6つの短編からなる時代小説。貧しい日々の生活の中で感じる喜びや悲しみ、そして人との出会いを通して前向きに生きていこうとする姿などが描かれている。先日、帯広図書館でこの本を読んできたので、その一節を紹介する。
『ちほちゃん、この川の名を知っているかい?』
それまでほとんど口を利かなかった茂十が、ちほをふり返った。
三人で心町へ巡る道を巡るあいだ、親子は黙り込んだままだったから、差配もよけいな口は慎んでいたのだろう。荻蔵は差配に礼を述べると、さっさと家に入ってしまった。
『心川(うらかわ)でしょう? 心町の川だから心川。わざわざそう呼ぶ人は、滅多にいないけど』 『本当の名は違うなんだ。心川はそれを縮めているだけでね。町の名もそこからついた。つまりは、川の名が先で、町の方が後というわけだ』
『何というの?』 『心淋し川(うらさびしがわ)というそうだ。』
「心淋し川」と書いて、“うらさびしがわ”と読むそうであるが、最初から“うらさびしがわ”と読める人は、東京・千駄木に住んでいた私の知人ぐらいであまりいないだろう。また、時代小説を書ける若い作家も、あまりいないのではないだろうか。
ところで、十勝は日本の7番目の岐阜県と同じ広さで人口34万人、1市18町村の日本の食料基地である。一方、岐阜県は十勝の6倍弱の人口200万人、21市21町村で、織田信長の居城である岐阜城や1600年の“関ヶ原の戦い”で有名な古戦場があるところで、世界遺産の白川郷があるが先端産業なども多いところである。
ところで、地元新聞の十勝毎日新聞の購読率が約8万部で、北海道内では圧倒的なシェアを誇る北海道新聞も、十勝地方では大きく水をあけられている。こんなところにも”十勝モンロー主義“があるのかも知れない。
毎年夏には十勝毎日新聞社主催の花火大会が行われ、全国レベルでも最大級の花火大会であるため、全国から十勝旅行を兼ねて多くの観客が訪れている。なお、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために中止となったが、今年はコロナ禍も収束し開かれれば良いと思っている。
「十勝の活性化を考える会」会長
注) モンロー主義
モンロー主義は、アメリカ合衆国がヨーロッパ諸国に対して、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したことを指す。
2016年アメリカ合衆国大統領選挙に当選したドナルド・トランプ大統領はモンロー主義的・孤立主義的と選挙中から評されており、2018年に国連総会でグローバリズムを批判して「モンロー大統領以来、アメリカ合衆国は公式な政策として、この地球や自国の問題における外国の干渉を拒否してきた」と演説した。
モンロー主義は、アメリカ合衆国の孤立主義政策の代名詞とされ、日本でも行政施策等、特定団体が行う他と協調しない独自の行為を「○○モンロー主義」と称することが多い。代表的なものにアジア・モンロー主義、市営モンロー主義などがある。しかし、モンロー主義という用語はアメリカ合衆国による中南米への介入主義的な姿勢に対して用いられることもある。日本でも比喩的表現が多々見られる。
(出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋)