先月、“大坂なおみ選手”が、テニスの四大大会のひとつである全豪オープンに、2度目の優勝を果たした。その圧倒的な強さやプレーは誰もが感嘆するところだが、大会関係者や多くの欧米メディアが同じくらい賞賛したのは、社会に大きな影響を与えた大坂なおみ選手の「コート外」での言動だった。
コートの外の言動とは、大坂なおみ選手が前回の全米オープンで警察暴力の犠牲になった黒人の名前入りのマスクを着用したことや、東京五輪・パラリンピック組織委員会の元森喜朗会長の女性蔑視発言などに対して、積極的に発言してきたことを指している。
大坂選手は、昨年5月、米ミネソタ州で黒人男性が白人警官に殺害された事件後に全米に広がった人種差別運動に共感しデモに参加した。また、森会長の女性蔑視発言に対しては「無知だ」と批判し、後任に女性が選出されたことに関しては「よいこと」とコメントしている。
また、米AP通信は全豪オープンの記事の中で、大坂なおみ選手をスペシャルな存在にしている要因の1つは、コートの中でも外でも挑戦をいとわず、「自分にとって何が大切なのかをよく理解していること」である。試合結果を知ったから言えるのかも知れないが、私は彼女が1セット先取した時点でテレビを消して2階に上がった。なぜかと言うと、実力的に大坂なおみ選手のプレーが相手を圧倒し、全豪オープンを制すると思ったからである。
彼女の祖父で根室漁協の組合長でもある大坂鉄夫さん(76歳)は、報道陣の電話取材に答えて、「何回勝ってもうれしいね。進化を感じた。じいさんの手から離れて成長していく姿がうれしくもありさみしくもある」と言っている。私の孫は13歳になるが、どのような人間に育っていくのだろうと思う。それから全豪オープン試合中、どこからかチョウがコートに舞い降りてきて、大坂なおみ選手の体にとまった。しばらくしてコートを去っていったが、きっと幸せを呼ぶチョウだったのだろうと思う。
なお、昨年3月にニューヨーク州で黒人男性が警官に拘束された際、頭部にフードをかぶせられ窒息死したが、その事件に関与した警察官7人が不起訴処分を受けている。同じく昨年5月、大坂選手が人種差別に反対しデモに参加した、ミネソタ州の黒人殺害事件の警察官はどうなるのだろう。
「十勝の活性化を考える会」会長