つらねのため息

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日本将棋連盟は社団法人たり得るか

2010-10-07 16:01:00 | 将棋
日本将棋連盟は、現在社団法人である。ところが、2008年12月から新しい公益法人制度がスタートし、すべての社団法人・財団法人は、一般社団・財団法人となり、その上で新たに公益認定を受けることになる。

問題は日本将棋連盟が、この公益法人にふさわしいかどうかである。私はこれは非常に難しい問題をはらんでいると考えている。

少し原理的に考えてみよう。社団法人というのは一定の目的を持って、構成員が集まった団体である。この場合、構成員は何らかの社会的な目的を持って集まるのであって、自分たちの利益を目的として集まるわけではない。たとえば自分たちの利益を目指すのであれば、お金を出しあって株式会社をつくり、営利事業を行った上で、利益を分配するということが考えられる。また、現在日本で法人格は認められていないが、働く者同士が共同で出資して、それぞれが事業主として対等に働く労働者協同組合(ワーカーズ・コレクティヴ)というような形式もある。

事実連盟の定款(PDF)では第3条で

本連盟は日本将棋の普及発展を図り、我が国の文化の向上に資するとともに、日本将棋を通じて諸外国との交流親善を図り、もって人類文化の向上発展に寄与することを目的とする。

と謳っていて、これが目的のはずである。

しかし、現実には連盟は会員である棋士の互助組織となっていないだろうか。すなわち将棋についてのさまざまな事業を行い、それによって得られた収益を棋士に分配するという機能が大きくなっているのではないだろうか。もちろん、将棋関連の事業を行うことは将棋の「普及発展を図」ることにもつながる。しかし、そうであれば、棋戦を開催したり、将棋イベントを開催することは何よりも、普及が目的であって、棋士はそのための手段でなくてはならない。たとえば美術館に学芸員がいるように、将棋連盟に棋士がいるというのが、公益法人のあるべき姿ではないだろうか。

ところが、この間の名人戦移管問題や女流独立問題、あるいは郷田九段の寝坊事件など、見えてきたのは棋士の互助組織として連盟の姿であり、言ってしまえば普及という本来の目的の軽視ではないだろうか。

そのような組織は公益法人というよりも、上に上げたワーカーズ・コレクティヴのような組織形態のほうが現実にあっているのではないかと私は考える。

実際、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律では第5条に公益認定の基準が挙げられているが、そのうちの第3項で

その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。

とされている。もちろん、現在の連盟のシステムが棋士に「特別の利益」を与えるものであるとは直ちにはいえない。ただ、そういう組織が社団法人としてやっていくのは、原理としては無理があるのではないだろうか。現在の三段リーグを突破したものだけが、正会員として認められ、その人たちだけが連盟の事業に携わることができるというのは社団法人としてはいかがなものなんだろうか。

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