TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

さがしもの

2008年12月04日 | 読書日記
さがしもの 角田光代 著 新潮文庫
本好きで相当な読書家なのだろうなあと本当に痛感できる角田さんの短編小説。
古本屋に売った1冊の本に旅先で何度も出会うという「旅する本」は
なさそうだけれど、あるかもしれない不思議な話だった。
文学賞を受賞した27歳の新人作家が賞を受賞して
一番先に知らせたい人が故郷の本屋のおばあさんだというくだりで始まる
「ミツザワ書店」も印象に残った。
どこの町にもありそうな町に1軒しかない本屋さんのおばあさんの話は
とても味わい深いものがあった。
この小説に出てくる主人公に共通しているのは
誰もが本好きで、よく本を読む人たちなのだ。
本に囲まれて生活をしている背景が必ずどこかに出てくる。
そして同じ本を同じ人が年を重ねてから読んだとき、
同じ本でも違ったものを感じ取れるということがいくつかの小説に出てくるのだ。
あとがきにも著者は星の王子さまを中学2年生のときに読んだときは
本当につまらなかったが、高校2年生のときに読んだときは
別世界に連れ出してくれるだけでなく
じつにいろいろと考えさせてくれる本だと思ったという。
それからはおもしろくないと思えない本でも
つまらないと決め付けないようになったという。人も同じだという。
百人いれば百人の個性があるのであって、つまらない人なんかいないのだと。
まさに、本は人生と同じなのだと。
本好きの著者が本好きの読者やそうでもないすべての人たちに
本の世界へと自然に導いているような本だった。

コメント
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