ピアニスラー

ゴールド・フィンガー、ハイパー・ピアニスト矢沢朋子のブログ

前衛は死なない

2007年05月27日 | 文化・芸術
「ジャズ・アヴァンギャルド」「ジャズ・オルタナティヴ」等の名著を残された、詩人でありジャズ評論家としてご活躍された清水俊彦氏が5月21日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

25日のお通夜と26日の告別式に伺い、最後のお別れをしてきました。

ジャズ畑の清水先生と知り合うきっかけとなったのは、ジョン・ゾーンの「作曲したピアノ曲」を弾いたコンサートにいらしていただいたことでした。ジャズでも先駆的で実験的なジャズを紹介していらした清水先生は、クラシックでも「前衛」がお好きで、年代とジャンルを超えて親しくさせていただきました。

喉にお蕎麦を詰まらせて15分近く脳に酸素がいかなくて1年ほど病院にいらした先生でしたが、それまではずっと現役、コンサートへ行ったり、帰りは飲みに行ったりとしていたので、本来は大往生という年齢だけれど、私の感覚では60代という感じでした。老人特有の物忘れも無く、ある日突然に先生が意識不明になったと知り、救急医療の知識の大事さを認識しました。

まだ未発表の原稿とかもあるはずです。今後の出版が望まれます。

非常に美しい、洗練された文章で、アングラと思われていた前衛ジャズ、フリージャズを体系的に紹介し論評した名著は、クラシック音楽関連でも匹敵する書物は見当たりません。評論、批評とは何か、という問いへの回答、見本を示していると思います。

音楽家が追求する「音の美、音の知」を文章の美で表現した、コラボレーションともいえる協力者です。

芸術家は死んでからが勝負なので、この大変洗練された前衛の文筆家は、もう新たに生産することはなくても、このジャンルの教養のベーシックとして、いずれは「常識」の一部として、生き続けるのでしょう。

ジョン・ゾーンやオーネット・コールマンなどに興味がある方には一読をお勧めします。

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3 Comments

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清水俊彦先生 (おりーぶ)
2007-05-27 21:13:24
「音楽(ジャズ)評論家」という肩書きに値する文章を書いた希有な人だったと思います。独自の美学を持ち、明晰な頭脳のフィルターを通過して書かれた評はスタイリッシュでした。若い頃、北園克衛の『VOU』にいて、詩人であったということは知られていますが、写真の才もあり、また音楽だけではなくアンディ・ウォーホル論(美術手帖)なども書かれています。真の自由人でダンディズムを貫かれた方だと思います。
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Unknown (MM)
2007-05-28 20:43:48
私も適当な追悼文でも書こうかと思ってたんですが、これで必要も無くなりました。

>おりーぶさん

 写真やウォーホル論は書籍などでまとまっているんですか?私はジャズ関連の本以外は知らないもので。 
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>MMさま (おりーぶ)
2007-05-30 06:59:51
ウォーホル論は単行本にはなっておりません。清水先生はご自分の文章については物を言わない人だったのですが、「あれは気に入っているのだ」、「うーん、本にしたいねー」と言っておられました。何らかの形でいずれ出版されることを願っています。

写真については残念ながら私もよく存じませんが、VOUクラブはphotopoemによる展覧会も行っており、清水先生の写真もいわゆる詩、プラスティック・ポエムであったと推測します。

ちなみにVOUの主催者だった詩人北園克衛は、死後デザイン・アート方面から再発見され、そのアーカイヴは多摩美にあります。
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