旅人がひとり。
山のふもとの鳥居の前を通り過ぎました。
が、鳥居の向こうに視線を感じて、ふりかえりました。
そして、鳥居をくぐりました。
ずんずんと進んでいくと、見上げるような大きな狛犬がおりました。
口には出しませんでしたが、旅人は、ぶさいくな顔やなぁと思いました。
一本道を歩きつづけます。
が、行けども行けども、いっこうにたどりつきません。
つかれはて、ひきかえそうか、いや、もう少し……と、進み行くと、
緑色の石が横たわっていました。
これが、ご神体だろうか……?
拝んでから、来た道をひきかえすことにしました。
帰り道、もうすっかり日が暮れています。
あたりは暗く、旅人は空を見上げました。
二つの流れ星が、またたいては消え、またあらわれては消えました。
おいかけっこをするように、消えてはあらわれ、消えてはあらわれ……。
旅人は、思いつくかぎりの願いごとをぶつぶつと、朝までとなえ続けました。
きっと願いはかなうことでしょう。 (おしまい)