陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

根津真介詩集『余所事』

2022-09-02 | 詩関係・その他

     

 

 根津真介氏(高知市)の第15詩集『余所事』(よそごと)が刊行された。
 氏の作品を読んでいると、ふと、自分は目の前の事象や出来事あるいは心象を言い表わそうと
するとき、ありきたりのことしか言えないでいるなと思った。物の見方考え方捉え方、どのよう
に感じどのように言い表すか、それが何によって思考され構成されていくのか。そうしたことを
考えさせられた。

 読み進めて行くうちに、どの作品もリズミカルな感じがすることに気付いた。
よくよく見ると収められている40編のうち38編が20行。残り2編は19行と21行
(二つを平均すると20行!?)。20行詩という形式があるかどうかは知らないが、多くが
4・4・4・5行の4連構成となっていて、この中に作者の世界を
込めている。(下記紹介作品
は5・2・5・5行の4連構成)

   瓶
 
 
大きな瓶の中に
 小さな瓶が入っている ぼくは
 大きな瓶の中から出ることは出来ないが
 かといって小さな瓶に入ることも出来ない
 奇妙なモラトリアム状態

 熱い湯の中に浸っているのか
 冷水の中を漂っているのか

 自分をほめてみる しかってみる
 涼しい顔をする 嬉しそうな顔をする
 醜い顔をする 辛そうな顔をする
 やり直しは効かない
 交換することも出来ない

 大きな瓶からはみ出そうとするのか
 小さな瓶に潜り込もうとするのか
 どちらも無理なのに
 どちらかを選択しようとしている
 瓶が割れるのを待てばいいだけなのに

 

発行日  2022年8月20日
著 者  根津真介
発行所  土曜美術社出版販売
頒 価  2,200円+税


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