根津真介氏(高知市)の第15詩集『余所事』(よそごと)が刊行された。
氏の作品を読んでいると、ふと、自分は目の前の事象や出来事あるいは心象を言い表わそうと
するとき、ありきたりのことしか言えないでいるなと思った。物の見方考え方捉え方、どのよう
に感じどのように言い表すか、それが何によって思考され構成されていくのか。そうしたことを
考えさせられた。
読み進めて行くうちに、どの作品もリズミカルな感じがすることに気付いた。
よくよく見ると収められている40編のうち38編が20行。残り2編は19行と21行
(二つを平均すると20行!?)。20行詩という形式があるかどうかは知らないが、多くが
4・4・4・5行の4連構成となっていて、この中に作者の世界を込めている。(下記紹介作品
は5・2・5・5行の4連構成)
瓶
大きな瓶の中に
小さな瓶が入っている ぼくは
大きな瓶の中から出ることは出来ないが
かといって小さな瓶に入ることも出来ない
奇妙なモラトリアム状態
熱い湯の中に浸っているのか
冷水の中を漂っているのか
自分をほめてみる しかってみる
涼しい顔をする 嬉しそうな顔をする
醜い顔をする 辛そうな顔をする
やり直しは効かない
交換することも出来ない
大きな瓶からはみ出そうとするのか
小さな瓶に潜り込もうとするのか
どちらも無理なのに
どちらかを選択しようとしている
瓶が割れるのを待てばいいだけなのに
発行日 2022年8月20日
著 者 根津真介
発行所 土曜美術社出版販売
頒 価 2,200円+税
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