月のカケラと君の声

大好きな役者さん吉岡秀隆さんのこと、
日々の出来事などを綴っています。

Prism

2009年05月23日 | 思うコト




もうすっかり初夏でございますね~。
初夏といえば満男君でございます。

と書きたいところなのでありますが、
ここのところ、ため息の風船が
しょび~んぶわ~んと膨らんだりしぼんだりでありまして、
なんだか浜辺にうちあげられた
なまこのような私でございます。
姉に云わせると、
「そのくらいが正常の人のテンション」
とのことなのでありますが、
しかしそんなこといわれても、
DVDケースに写った満男くんの姿をみてハァ~~~~、
コトー先生のチャリンコ白衣姿を見てふぅ~~~~、
ヤマサの写真を見つめて・・・・・・・・・・・・・・んふ、
マヨネーズの賞味期限を見て切れてるやんっ!
となったりしての、
乙女心は複雑でございます。

もし心に万歩計をつけたとしたら、一日の総計が、
歩数=マイナス3
みたいな状態とでもいいましょうか、
いやそれはあんたがただのナマケモノだからやん、
というジャイアンの言葉はいつものようにBGMと化し、
しかしそんな昭和枯れススキみたいな状態の時に限って、
一歩部屋を歩き出した途端に、ばいんっ
と足の小指を箪笥の角に当てちゃったりなんかして、
くわぁっ、こんな時にしか存在を主張できぬとは小指め、卑怯者っ、
痛いじゃないのぉ~~~~~~~ジャイアンのばかぁ~~~っ!!!
と正当に異議を叫んだりして・・・・・・・って、何を書いていたのかしら?
アホだわ・・・・いつも以上に・・・。

これはもう生態学的にいうところの、
恋煩い 
その8867回目。
であるに違いなく、
ならばその煩わせちゃって三千里のお人はもう書くまでもなく、
ずばり吉岡君でありましょー! となるわけであり、
愛しき人に心を馳せれば私のハートは飛んでイスタンブール、
そのとき一羽のカモメが飛んで君に薔薇薔薇・・・・・・
という感じさ。
と膝をポンと叩いてしまう極めて危ない状態でございまして、
毎度お騒がせしております。


いつも、こう、なんというか、例えると、
9回裏ツーアウト満塁の打席にさっと代打で登場して、
大逆転勝利のホームランをぶっぱなし、
きゃい~んっ
これぞ真のヒーローだわ~~~  
吉岡く~~~~~んっ
た~まや~ か~ぎや~ か~めや~~~万年堂
ナボナはお菓子のホームラン王です。
森の詩もよろしく。
と歓喜喝采雨あられの直後に、
シーズンオフ到来!
とすいっとそのまま退場してしまうよな吉岡君。。。。

祭りの興奮がすんで、
新たな季節の到来を感じさせながら
喜びと寂しさの残り香を
残照の中にさりげなく置き去っていくよな吉岡君。。。
いけずやわ・・・。
たまらんぜ。

そうそう、んだんだ、
以前にも何度も書いていることでごじゃりまするが、
吉岡君という人は、とても香っているですだ。
かほり高き香気なお人、
という印象がすごくするでございまして、
その香りは、

香らねば、香らせてみせよう、これでもかぁっ!

とムンムン発散させている偽装消臭剤的な香りでは決してなく、
それはもう、その仕草から、声から、眼差しから、笑い声から、
佇まいから、そこはかとなく自然に芳香している香り、
というかなんというか、
ああ、そうなんだよなぁ~吉岡君は・・・と、
ただそう素直に浮かんでくる感情のままに、
しっくりと心に染み入ってくる香気であり、
それは人としての品格から漂う香りなんだろうなと、
そう感じさせるものでありますです。


露出度の極めて少ない吉岡君でありますが、
しかしそれでも多くの人に支持され続けているのは、
たとえいつもその姿を目にしていなくとも、
「吉岡くん」とその名を言葉にしただけで、
自然と人の心に温もりを湧き上がらせてくれる存在の人だからなのかな~
なんてなことも思ったりするです。


吉岡君からは、きちんと体温が伝わってくるですねぃ。
TVの画面や、映画のスクリーン、そして雑誌などの
紙面を通して伝わってくる彼の人肌の温度には、
吉岡くんは生活を大切にしているんだな~・・・
深く愛している生活があるんだな~・・・
と感じさせてくれる彼自身の人生が、
しっかりと宿っているのだと感じられるわけで。

人が人生を生きていくうえで、
自然と求めていく理念を、
私たちと変わらない生活の流れの中で、
吉岡君もそれを求めて生きている。
だからこそ伝わってくる、
心安らぐ温度なのだと、そう思ったりするです。


吉岡くんは、目立つことがかっこいいなんて思う人ではなく、
与えられた場所で意義深い光を賢確に放てる人であり、
それは彼の趣きであって、
自ら固執しているイメージではないと思うわけで、
脚光、流行り、時好に投ぜず、
そんな些細な事柄を超越したところに、
真の魅力は存在しているのだと、
そう心から感じさせてくれる凛然とした美しさを
持っているのだと、
持っていられる人なのだと、
そげなことを思ったりもするとです。

かっこいいって、どういうこと?

と聞かれれば、

そりゃ~吉岡君みたいな人のことさ。

と自信をもって答えられる円熟した風格を、
吉岡君は、彼なりの、大らかな速度で、
ゆったりと豊に実らせながら生活しているのかなと、
そう思ったりなんかしていた今日の私は、
気付けばまた元気になっているわけで、
うるる~んとなったり、うきゃ~っとなったり、
はぁ~~~、っとなったりしての、
まさに女心と春の空でありますが、でもそれによって
心が活性化していることには違いなく、
とても綺麗な酸素を吸っているような恋心でございまするので、
吉岡くん、
ありがたや。
と想いは更に深まるわけで。。。

エンドレスでございます。



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吉岡刑事物語・その21

2009年05月19日 | 小説 吉岡刑事物語




照明を一つに落とした薄暗いバーの店内で、
彼女はカウンターのスツールに腰掛けていた。
綺麗に片付けられた店内には、
静寂と、彼女と、その脇に置かれた
バカラのグラスが一つ。
琥珀色のウィスキーが、口をつける主のいない
その真新しいグラスの中で、
微かな香りを漂わせながら沈黙している。
軽く頬杖をついて、遠い一点を見つめるような眼差しを向けながら、
彼女は空いたもう片方の手にそっとグラスを取った。
ゆっくりと回したグラスの中で、
カラン、と透明な氷が音を立てた。


ふと見上げた夜空に、氷のような月が浮かんでいる。
なだらかな坂を上っていた足を止めて、
吉岡は凍りついた孤月をゆっくりと仰ぎ見た。
凛と冴えわたる月明かりは冬の夜天の星を消し、
蒼白い光を吸い込んだアスファルトは、
街路の木々の影を黒く映して、周囲はまるで、
息をひそめるように蕭然と静まり返っている。
抱くような眼差しで月を見上げる吉岡の瞳は、
深閑としていて、それはまるで月の下に佇む湖面のように、
ひっそりと、物静かに、孤高の光を守っている。


透き通った氷が、片手に持ったグラスの中で、
静謐な光を放っている。
行き場を失った思い出を辿るように、
彼女の瞳がグラスの中を漂っていった。

さっちゃん、

ふと、静まり返ったバーの店内に、
彼女の好きだった、大好きだった優しい声がそっと響いて、
彼女の瞳が霞んで揺れた。
耳を澄まし、彼女はかつての面影を追い求めるように、
視線を宙にさ迷わせた。
木漏れ日の中で微笑んでいるあの人の顔が、
青葉のきらめきを受けながら、
遠い記憶の中で呼びかけてくる。

さっちゃん、

サチ、と本当はそう呼んでほしかったのに、
出合った頃からそうしていたように、いつも、
さっちゃん、と呼びかけていた、あの優しい呼び声に、
返事をしたくても、彼女の声はもう届かない。
思い出の中から呼びかけてくる声は、
遠くて、遠くて、サチにはもう追いつけない。

さっちゃん・・・

音にならない微かな呼び声が、
わずかに開いた吉岡の唇の間から零れ出て、
それは風に舞う雪煙のように、
真夜中の空へと細く立ち消えていった。
見守るように仰ぐ月は、ただ静かに、そっと
仄かな光で吉岡の瞳を揺らしている。

さっちゃん・・・、

月に被って浮かんだサチの面影が、
さっと吹いていった夜風とともにはかなく消えていった。
夜気を吸い込んだ肺に錐が食い込むような痛みが走り、
吉岡は思わず俯いてコートの胸元を掴んだ。
後方から車が一台、ゆっくりと背後に近づいてくる気配を感じて、
吉岡は視線を前方の道へと戻した。
再び足元の坂を踏み出しながら、吉岡は冷え切った左手を、
そっとコートのポケットの中に入れた。


氷が指先に伝える冷たさに、
サチは持っていたグラスをテーブルの上に戻して、
そっと右手に息を吹きかけた。
冷えた指先を温めるはずのその息は、
しらずに切ないため息へと変わり、
サチは口元に当てた右手を軽く握り締めた。

(寒いね)

照れたようにそう言いながら、自分のポケットに
握った手を入れて温めてくれたあの人は、
冬支度を始める街模様がとても好きだった。
街路を黄色に敷き詰めたポプラの落葉と、
柿色に染まった西の夕空には藤色の薄い雲。
家路を急ぐ人の波の中、立ち止まった駅の改札口で、
互いになかなか言いだせなかった、

また明日。

明日会える幸せは、今では遠い記憶の中。
深く沈んだ瞳を、サチは横に置かれたグラスへと戻した。
透明なグラスの上に、仄白い照明が、
じっと黙視するような光を無機質に落としている。


闇を裂くような車のヘッドライトが吉岡の背後ですっと消えて、
黒塗りのベンツがそのままゆっくりと横を通り過ぎていき、
街路脇に建つアパートの手前でぴたりと止まった。
歩速を変えず、まっすぐに歩いていった吉岡の真横で、
ベンツの後部座席のドアが静かに開いた。

「乗っていただきたい」

艶のある落ち着いた声が宵のしじまに低く響き、
吉岡は、ゆっくりと顔を横に向けて、
後部座席に座っているその声の主を見た。

「どうぞ」

そういって更に大きくドアを開けたその男は、
高級スーツに体を馴染ませ、穏便な態度をとってこそはいるが、
しかしその目は幾分の隙もなく、じっと鋭く吉岡の顔を据えている。
吉岡は無言で車の反対側に回り込み、
自分でドアを開けて後部座席に乗り込んだ。
前部座席には、真夜中だというのにサングラスを掛けたがたいのいい男が二人、
運転席と助手席に砦のように陣取っている。

「先日はうちの若いものが失礼をしたそうで、申し訳ない」

ドアを閉めた後、別段悪びれるそぶりもなくそう言って、
男は手に持っていたタバコに火をつけた。
ライターの火の中で、彫の深い角ばった横顔が、
宵闇の車内に一瞬鮮明に浮かび上がった。

「話を伝えて来いと言っただけだったのだけれど、
ちょっといき過ぎてしまったようで」

目線を前方に向けたまま、男はそこでタバコの煙をふっと吐き出して、

「どうも血の気の無駄遣いをしていけない、今の若い連中は」

といって口元だけで笑った。

「話とは、なんですか?」

余計なことは何も言わずストレートに質問を投げかけてきた吉岡に、
男は依然と前方に目をやりながらふっと鼻で笑った。

「相変わらずまっすぐだね。 別にそんなに急がなくともいいじゃないか。
それとも、時間がないのかな、君にはもう?」

「僕はただ、用件のみを聞きたいだけです、沢木さん」

沢木、と呼ばれた男は、黙ってマルボロの煙草の箱を
スーツの内ポケットにしまいこんだあと、横を向いて吉岡の顔を見た。
怯むことなく見つめ返してくる吉岡の瞳が、まっすぐに自分の目を捉えている。
沢木はゆっくりと口を開いた。

「頭のいい君のことだから、もう話の内容はわかっているだろう?」

吉岡は黙っている。

「私はね、無駄な血は流したくないんだ」

そういって沢木は、再び前方の道へと視線を戻した。

「君には借りがある」

「借りを作った覚えはありません」

静かに言い返した吉岡の言葉に、沢木は口元だけで苦笑した。

「君にとってはそうかもしれないが、私にとっては大きな借りだよ。
命を救ってもらったも、同然だからね」

まっすぐに見つめてくる吉岡の視線を横顔に捉えながら沢木は言った。

「あれは誰にとっても明らかに、あなたをはめ込むための
作為的な逮捕状でした。あなたはあの事件には全くかかわっていなかった。
誰も傷つけてはいなかった。だから僕は、あの件ではあなたを捕まえなかった。
ただそれだけです」

一呼吸置いてから耳に届いてきた吉岡の言葉に、
沢木はふっと乾いた声で笑った。

「国の正義と、人の仁義は別物だと、そういいたいのか?」

見つめてくる吉岡の視線が瞬時に強まった気配を感じとりながら、
沢木は更に言葉を続けた。

「君の目に明らかなことは、だからといって誰の目にも明らかなことじゃない。
目先の水溜りばかりに気を取られている連中には、君が見通している大海は
決して見えてこないんだよ」

沢木はそう言うと、一口吸った煙草の煙を天井に向けて一息に吐き出した。

「真実は確かにどこかにあるだろう。だけど真実なんてものは、
目に見える場所では簡単に捻じ曲がってしまうものなんだ。
そうじゃないかい?」

沢木は、長くなった煙草の灰を、後部ドアに備え付けられた灰皿に落とした。
車窓から射す月光を受けた沢木の横顔は、吉岡に向けた半面が暗く翳っている。
月影の滲むその凄味のある横顔を、吉岡はじっと静観していた。

「私にも仕事がある。それは人生をだからね、多様な糸が
そこには絡まってくる。複雑に絡み合ったその糸には、
それを手放すまいと必死になっている輩が背後に無数に蠢いている。
己の欲が絡めた糸に、みな自らがんじがらめになっているんだよ。
絡まった糸を持つ互いの手に、芳情心なんて塵ほどもない。
自分の利を崩さないがために繋がっているだけの釣り糸だからね、
そこに人情なんてセンチメンタルなものはなにもないが、
欲情は強く絡まっている。欲情のためになら、人はなんだってするだろう。
都合のいい目隠しだからね、欲情は。
だから己の繋いだ欲望の糸を一本でも切りつけようとしてくるやつは、
消してしまえばいい。それがやつらの単純な答えなんだ。情なんてない」

沢木は指先に残った煙草をくしゃっと灰皿にもみ消した。

「邪魔する奴には、消えてもらわなければならない、絶対に」

「背を向けるつもりは、ありません」

沢木は見つめていた吸殻から微かに視線を上げた。
敢えて見なくとも、吉岡がどんな顔をしてそういったのか、
容易に想像がついた。

「やめるつもりは、ないということかな?」

「やめません」

沢木はゆっくりと視線を前方の道に据えた。
街路脇の電灯が、消えては点き、点いては消えながら、
か細い橙の光を路面に落としている。

「犬死してもか?」

沢木は低く言葉を吐いた。

「ぼろきれのように捨てられるとわかっていて、どうしてそこまでする?」

重くただれたような沈黙が、満ち潮のように車内を浸していった。
前部座席に座った二人の男は、微塵も動かないまま、
じっと不気味に押し黙っている。

「死に、美しいも醜いもありません」

吉岡の物静かな声が、確かな意志の響きをもって、
車内の空気を揺らした。

「命が尽きて、消える。その事実があるだけです。
大切なのは、それまでどう生きたのか、そこに光は宿るのだと、」

沢木はじっと前方を見据えたまま黙り込んでいる。

「僕はそう思います」

その横顔を迷わず見つめながら、吉岡は言った。


心の真ん中からまっすぐに見つめてくる
吉岡のひたむきな瞳が、サチはとても好きだった。
一度としていい加減な光を放ったことがないその瞳は、
不確かなことは何もないと、サチを守り抜いてくれる、
揺らぎのない大きな力を内に秘めていた。
いつだってそうだった。
いつでも、どんなときでも、そっと見守っていてくれた
あの澄みきった瞳は・・・

サチ、耐えてくれ・・・

電話口で最後に聞いた父の切実な声が、
ふとサチの耳の中でこだました。

お父さんはね、もうすぐ出張から帰ってくるわよ

そう言いながら父の好物だったシチューを
毎日飽くことなく煮込んでいる母の姿が、
その声に被さって浮かんできた。
会社の金を持ったまま忽然と消えた父の現実を、
母は受け入れずに放棄してから長い月日がたつ。
父も、母も、サチの前から消えてしまった・・・。

さっちゃん、

吉岡の声がまたふっと耳に聞こえてきて、
サチの目から涙がこぼれた。それと同時に、

吉岡を、どうか諦めて欲しい。

父親の事件発覚後、家にまでやってきて、
畳に土下座をして吉岡との別れを懇願した山村警部の姿が、
消えないしこりとなったまま、サチの心の奥底に沈んでは、
またすぐに浮かんでくる。

さっちゃん、僕は・・・

別れを告げたサチに、言葉を失くして佇んでいた吉岡の姿を、
サチは忘れようとしても忘れることができない。
いつもいつも優しく自分の名を呼んでくれたあの笑顔を、
サチは切り捨ててしまった。
差し出した手を、いつも離さずに握っていてくれていた、
あの強くて優しい手を、サチは振り切ってしまった。

さっちゃん、僕は・・・

そう言ったまま、あのとき吉岡が呑み込んだ先の言葉を、
サチはもう聞くことはできない。

サチ、耐えてくれ・・・

お父さんはね、もうすぐ出張から帰ってくるわよ

吉岡を、どうか諦めて欲しい


父の声と、母の背中と、山村の頭を下げた姿が、
真新しいスーツを着て照れながらも喜んでいた吉岡の笑顔と、
サチの心の中で交錯していった。
新任刑事として所轄に初めて配属が決まった日、
桜色の風の中で笑っていたあの人の姿は、
とても眩しかった。

あなたはいつでも、私の誇りだった。

大切なことは、二人で一緒にいることだとわかっていながら、
大切なことを手放す以外には、どうすることもできなかった。
どうすることもできないまま、どうしようもないままに、
サチの想いは舵を失った小船のように、悲しみの海を漂っている。

ゆっくりとスツールから立ち上がって、
サチは入り口のドアへと向かって歩いて行った。
物憂げな細い手が、上着掛けにかかっている
キャメル色のコートを手に取った瞬間、
小さな鈴の音が床の上に落ちた。

チャリン

と音がして、リビングのテーブルの上に鍵が置かれた。
幾つか連なったその鍵の輪に、小さな青い鈴のお守りがついている。
吉岡は激しく咳き込みながら、そのまま洗面所へと駆け込んだ。
口を押さえていた右手の指の隙間から、真っ赤な鮮血が溢れ出てくる。
胸の底から押しあがってくる嘔吐感に堪えられず、
ゴボっと咽こんだまま吉岡は大量の血を吐き出した。
真っ白なシンクの中に、鮮血の花びらがおびただしく散っていく。
吉岡は俯いたまま、止まらない咳とともに血を吐き続けた。
荒い息を繰り返す背中が、大きく上下に揺れている。

吉岡君、

サチの呼び声が不意に耳に聞こえてきて、
吉岡は顔を上げた。
目の前に映った鏡の中から、
蒼白に衰色した顔が自分を見返している。
下唇から、一条の血が、つーっとシンクに滴り落ちた。
目線を落として口を拭った手の甲に、
吐き出された血は赤い色を染めていく。

吉岡君、

吉岡は再び顔を上げた。
サチの呼び声がする。

さっちゃん、僕は・・・

シンクの縁をぎゅっと両手で掴んで、
吉岡はふらつく体を懸命に支えた。

僕は・・・、

僕は君に誇れるものは何も持ってはいないけれど、
でも君にしてあげられることがあるのなら、
僕はそれをやり遂げる勇気だけは持っているんだ。
君の微笑む場所にはもういられないけれど、
君と未来を語ることはもうないけれど、
でも僕は、君の望む場所へと、
君を守り抜いて運んでいく、
君の羽になりたい。
それができるのなら、他にはもう
何もいらないんだ。
さっちゃん、
僕は君を・・・
僕は君の・・・・


小さな赤い鈴のお守りが、
サチの手でそっと床から拾い上げられた。
それはいつか吉岡と二人で立ち寄った小さな神社で、
互いに買い合った番いのお守りだった。
掌でしっかりとお守りを握り締めながら、
サチは入り口のドアを開けて暗い外へと出ていった。
パタン、と静かにサチの背後で扉が閉まって、
ひっそりと静まり返った暗い店内に、
バカラのグラスが一つ、
カウンターの上にひっそりと置かれている。




つづく

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初夏の風

2009年05月14日 | CM



「癖になる」

という言葉を巷ではよく耳にいたしますが、
まったくその通りでございまして、
例えば今日、PCの画面にイソギンチャクのように張り付いて
何十回となくリピート再生を繰り返したヤマサの新CMは、
癖になっちゃうんだよぉおおおおお~~~吉岡く~~~~んっ!!!!

春は大漁でございます。

久々に観た、おちゃめな吉岡くん・・・くっ、
ずっとこんなチミが観たかったんだよぉ~~~~~んっ。

やはり笑いをとる吉岡君は極上だ。
いや泣きをとる名人でもあるんだけど、
ついでに心をほぐす達人でもあるわけで、
まったくもっての、
より子、どり子、みどりでございますな、
総括して言えば、

ぶっちぎりだぜ、吉岡君、
さいっこ~だぁ~~~~~っ、
ひぃやっほ~~~~いっ!!!

ということでございまして、
くぅっ、たまらんぜぇ~~~~~~~~~~っ。

しかしこのヤマサの新CMときたら、
15秒の名作劇場でありますねぃ。

たった数秒の世界の中に、笑いと、嘆きと、サスペンス、
そして人生の愛が詰まっている。
素晴らしい。
カンヌに出品すべきだと思う。

そして今回も、何気に笑わせて、
何気にハートを掴むのだね、吉岡くん。
さすがじゃよ、若侍。

なんてったって短髪の髪がぁ・・・・、
着ているチェックのシャツがぁ・・・・、
相変わらずの細身くんがぁ・・・・、
満面の笑顔がぁ・・・・・、
お皿を持っている綺麗なお手てがぁ~、
どれ~んとすだれがかかる表情がぁ~~、
背後から肩に手を乗せる大きくてやさしげな手がぁ~~~~、
「わたしの?」
って中腰で地蔵化する顔がぁ~~~~~~~~~~~~っ、

珠玉のツボコレクション。

文句なしだよっ、吉岡く~~~んっ、
素晴らしかぁ~。

これほどまでにも、
隙なしの好みっぷりを体現してくれる人は、
全宇宙の中でも君だけですけ、ユニバースよね~、
ほんまにたまらんわぁ~、愛しいよぉ~~~~~~、
愛しすぎちゃって、わたくしはもう、絶対的に、

恋煩い。

吉岡く~~~~~ん、
きゅい~~~~んってなっちゃうんだよ~~~~、
はぁ~もう・・・・ハッ、いかん。
沸騰しきった気持ちが土星へと旅立ってしまう前に、
落ち着かねば。
ソファーに座ってお茶でも啜ってみよう。
っふぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~きゅい


だめだぁ・・・・。
恋しすぎてどうしよう・・・。
そうだ、
こういうときは、
恋心を句に詠むにかぎる。
ではここで一句したためてみませう。


吉岡くん 
突然出てきて 
ネッシーかい?




なんか違うような気がする。
もとい、



初夏の風~ 
吉岡くんたら 
花粉は平気?



だぁ~っ、違ってよっ!!!
そうでなくて、直球で詠むとですねぃ、



吾思う
吉岡くんは
秀隆なり




直球すぎてしまった・・・。
そりではこれだ。



吉岡くん
吉岡くんったら
吉岡く~~~~~~~~んっ!
んふ

擬態字余り



決まったわ。
スッキリしたぜぃ。
少しだけ。フフ。


しかしいつも思うことだけど、
吉岡君はどうしてこうもさらっと、
「産地直送フレッシュパック!」
みたいな新鮮さを保ち続けていられるんだろう?

初夏の風みたいに爽やかで、
新緑みたいにキラキラしてて、
30年以上もの仕事暦をまったく感じさせないその姿は、
出てくるたびに真新しい。

なんというかこう、
細かにきらめく光の粒子が、
ふわっと、やわらかに飛散していく感じがするというか、
世慣れの垢が全くつかない人でありもうして、吉岡君ってば、
ぶらぼ~すぎる。
きゅい

あっ、そうだそうだ、
お友達が教えてくれたところによると、
(いつもありがとうございます♪)
ヤマサの公式において、撮影中に吉岡君が
麻生さんを驚かせてしまってそんでもって~・・
と言っていたけど、
え、
麻生さんって?

あ、

そうだった。
このCMには麻生さんも出ていたのだった。
吉岡くんの姿しか目に入らなかったずら。。。
麻生さんのことが、背景その3みたいになっちゃってたわぁ~。
すんません。
それにしてもいいな~~~、麻生さん。
お仕事とはいえ、吉岡君の奥様になれるなんてぇ・・・・。

もしもあんな可愛い生き物が、いや、旦那さんが毎日、
「おかえり~♪」
なんつって玄関で出迎えてくれたら、
「きゃだいまぁ~~~~~~~~~~~~~~っ、とう!!!」
って猛タックルしちゃってよっ! 
しかも、うどんまで作ってくれるなんて・・・・って、
またうどんなのね。 
いいのよ、いいのよ、またうどんだって、だって白くて細いもの同士、
らんららら~~~~~~~~~~~~ん♪ (←破壊されています)

そして後ろからあんな風に肩にすぃっと手を乗せられたら・・・・
吉岡君の手が・・・・・・・あのやさしい手がぁ・・・・・・・・
そんなことされたら・・・・そんなことされちゃったら・・・・
私はもうその手を両手でひしっと掴んで、
背負い投げしちゃうわっ!!!

んもうっ、吉岡くんったら、可愛くて素敵すぎておまけにおもろいなんて、
反則じゃないかぁ・・・。
はぁ~、出来ることなら、
あのデジカメくんになって吉岡君に笑いかけてもらいたかった・・・・。
きゅい。

やはり吉岡君は、
キュイキュイ星からきたキュイットさんだったのね。
きゅい (←しつこい)


と、きゅいきゅいしたところで、映像だけじゃなく、
撮影時のエピソードも読んでみましたところ、
ふむふむ、吉岡君は、撮影の合間に、
スタッフと談笑していたと? なりほど、そうですか、って、
これが吉岡くんだぁっ、くぅっ!!! (←もう歯止めがきかないらしい)

スタッフの人たちと、ちゃんと普通に話をする吉岡くん。
なんてたってセンターやからね、センターマンやで。
という芸能人にありがちな驕りがま~~~ったくな~~~~~い。
仕事場で働く一人として現場にいる吉岡くん。
ものは共同で作ってこそ成りえる、
というごく基本的な趣旨を決して忘れずに、
その志しが自然と行動に出る吉岡くん。
かっこええ。
かっこよすぎて、しびれちまうぜよ、アニキィ。

そりからなんですと、驚いちゃった麻生さんに、
「ごめんね、びっくりしたよね」
と麻生さんを気遣う吉岡さんの優しい声、
ですとな?



ごめんね、びっくりしたよね


ごめんね、びっくりしたよね


ごめんね、びっくりしたよね


ごめんね、びっくりしたよね


ごめんね、びっくりしたよね



(↑頭の中で絶賛エコー中)




















↑↑↑ 
白紙になってしまったくらいノックアウトされたらしい。


どうしてなのだ、吉岡君よ?

どうして君って人は、
かっこよいことをしないのに、かっこええのだ?

かっこよいことをするからこそかっこよくみえる、
という人は、この世の中には数多し。
しかし普通にしていてすごくかっこいいという人は、
稀にみる稀男だと思うわけで、吉岡君は、

稀男だ。

さりげない仕草や言葉が、
さりげなく様になる。

さりげなく、嫌味なく、
さっと吹いていくそよ風のように
優麗としていて、かっこいい。

吉岡君は、かっこええ。
べらぼうに男前な人だと思う。


はぁ~、吉岡くん。。。
大好きやで。
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Golden Slumbers

2009年05月06日 | その他の映画



おめでたき春でございます。

長旅から帰ってきて一息つこうとソファーに座り、
お茶を飲みつつPCを開けたところ、
ぶはぁああああああ~~~~~~~~~~~~~っ、
吉岡くんが映画に出演するですとぉっ?!
おお、神よっ!!!
しかもなんとマチャトンの友人役だなんてぇえええええええええええ
えええんやはれほれはれほいさっさぁ~まどふきにははいさっさ~~

バタ。

一息つくどころか、
息の根が止まってしまいますた。
三秒ほど。

いつものごとし、突然にやってくる
吉岡春風。


春風や
吉岡くんったら
玉手箱
ぼわん


音響効果入りで思わず春の一句を詠んでしまいました。


映画に出てくれるだけでも、いや、
仕事をしてくれるだけでも嬉しさ百万馬力なのに、
マチャトンの友人役を演じてくれるなんてぇ~~~~
嬉しすぎる・・・・。
嬉しすぎて泣けてくるでごわす、うぅ。
おいどんはもう感無量でありもうして、
もう思い残すことはありまっしぇん、
この映画を一万回観るまでは。
生きててえがった。。。

教えてくださったお友達、感謝でぃす。
ありがとうごぜいますっ!!!


この嬉しき大ニュースで、わたすが長旅中、
体全体にまんべんなく堆積させてしまった
「鏡をみたら子豚ちゃんシンドローム」
のショックも消え失せたわ。子豚ちゃんではなく、
立派な大豚ちゃんという説もあるけど、
そんな些細なことは生ゴミと一緒に捨ててしまってよ。
それに吉岡くんは、映画「紅の豚」が好きだって言ってたし、
ということは、なんとなく豚違いな気もするけど、
私にもとうとうチャンスが巡ってきたのかもしりないっ。
やったぜ、武蔵っ!(←何のチャンスだというのか?)

いや、そんなことはともかくとしてですねぃ、
この吉岡君映画出演においてのお祝いキャンペーンは
只今大感謝祭バザール中であり、
私のハートはバラの包みの高島屋。
んがしかし、
ここでまたまた一つの嬉しき難題が・・・。

読んでから観るか、観てから読むか?

それが問題じゃよ、ハムレットくん。
そうじゃよそうじゃよ今までは、

「やっぱり読んじゃったのね、ブルータスよ、
お前はまたか」

の繰り返しであった学習能力ゼロの私でごぜいますが、
しか~し、博士の愛した数式のように、
衝撃の原作ラスト一ページ登場から大逆転ホームランの
全篇ルート銀幕祭りといった例もあるわけで、
それは至極稀な例であることは承知の上でありまするが、
でもでももしかしたら、
ゴールデンスランバーでの吉岡くんの出番率も
ルート先生のような打率10 割9分8厘である可能性は、

あ・り・え・る。

0.18%くらい。

なぜわざわざ「・」入りでそう思うのか、お主、アホか。
というとですねぃ、ふふ、
お友達から教えていただいた情報によると(ありがとうございます♪)、
吉岡くんの演じる人物は原作の中で、
その小説の題名元にもなっているビートルズの名曲、
Golden Slumbers を口ずさむ鼻歌キラーということでございますのよっ、
あぁもうっ、椅子ごとどわぁっと背後に倒れちゃったわっ!
は~れるや~!(←あほ丸出し)

なんてこったい、オリーブ。。。

あの名曲を吉岡君が口ずさむなんて・・・・・・・・
吉岡くんの歌声で・・・・あの歌を聴けるなんて・・・
想像しただけでも・・・(想像中)・・・・・
あたくしは・・・(すこぶる想像中)・・・・・・
あたくしは・・・・(絶賛想像中)・・・・・・もう・・、
ビビデバビデ鼻血ブー! 
クラ。

この役はもうっ、まさにっ、
ゴールデンでレディーボーデンのような
美味しい重要人物に違いないでっせい、アニキ!
よ~ろれいっひぃ~♪ お~れ~ぃっ!

ということにしておきたいので、
そうしておこう。公開までは。
ってしまったぁ~~~!
公開っていつなのだ?


いやはや、久々の映画出演に、
ついつい欲張った要望を書いてしまいますたが、
でもなにも役者の醍醐味は、
その出番の量で決まるものではなく、
あくまでも質で決まるものだから、
吉岡くんならではの、
吉岡くんしか演じられない、
吉岡印の素晴らしい人物として
そこに息吹を入れてくれることには間違いないずら。
質で選ばれる男、
質で結果を表す男、
質を裏切らない男、
これぞ男の中の男だ、吉岡くんっ。
かっこええよ~~~~。たまらんっす。むはぁ


吉岡君は、いつもいつも、
悩んで悩んで悩みまくって演じているのだろうけれど、
でもその悩みに鎖をつけて引き摺ったりなんか決してせずに、
画面に生み出されてくる人物はあくまでも気負いがない。
月の光のようであったり、
温かなひだまりのようであったり、
降りしきる雨のようであったり、
風に舞う花びらのようであったり、
彼の演じる人物たちは、
いつも自然と当たり前のようにそこにいる。
気付かなければすっと通り過ぎてしまうものほど、
実はとても大切なことなんだよと、
そう気付かせてくれるのが、
吉岡くんの醍醐味なのだと思うです。


ということで、原作の小説の中で、
吉岡くんの演じる人物が口ずさむという
ビートルズの名曲、Golden Slumbers を、
ものごっつぅ意訳なのですが、
訳してみますた~。
よろしかったら読んでやってくだせい。




かつてそこには
家路を辿る道があって
昔そこには
家へと帰る道があったんだ

お眠り 愛しい君よ 
泣かないで
ほら僕が 
君に子守唄を歌ってあげる

金色にゆらめくまどろみが
君の瞳を満たしていくよ
微笑みが 君を呼び起こしてくれるから
お眠り 愛しい君よ
泣かないで
ほら僕が 
君に子守唄を歌ってあげる

かつてそこには
家路を辿る道があって
昔そこには
家へと帰る道があったんだ

お眠り 愛しい君よ 
泣かなくていいんだ
ほら僕が 
君に子守唄を歌ってあげるよ       


 -Golden Slumbers by the Beatles


コメント (2)
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