国境の長いトンネルを抜けると、
“ え~、ただ今この電車は日暮里を出まして~ 次は~
アンドロメダ~ アンドロメダに到着いたし~ます。
お出口は進行方向~ どんとこい~。 ”
そこは宇宙だった。顔の色が青くなった。
ゴ: さすがのナレーションだな。 五臓六腑にしみわたる声だ。
聞かせるね~。もしかしたら学生時代、語り部の部長だった?
ほら、弁当とお茶だ。デザートに冷凍みかんも買ってきたぞ。
さ、食べよう。ん? どうした、そんな豆鉄砲をくらったような顔をして?
吉: ゴリさん、僕は今どこにいるんですか?
ゴ: さっきのアナウンスを聞いただろう? アンドロメダの近所だよ。
吉: でも今さっきまで僕らは日暮里に。。。。
ゴ: 細かいことは気にするな。お前は任務のことだけ考えていればいい。
それがデカってやつだ。昔、お前の親父さんがオレによくそう言っていた。
吉: 父さんが?
ゴ: あぁ、そうだ。 やたらと影響力のある人だったよ、お前の親父さんは。
オレはな、いまだに靴屋で気に入ったものを見つけるとそれを手にとって、
「これが最高。」
って言ってしまうんだ。 インパクトのゴロー、と呼ばれてもいたっけな。
若い頃は青大将でもあったらしい。おいおい、どうしたっていうんだよ、
今度はそんな沈んだ顔をして?
吉: それに比べて僕はまだ何も・・・・・僕は父さんの・・・・・
本当の息子じゃないのかもしれない。。。
ゴ: どうしてそれを知っている?
吉: えっ?!
ゴ: 実はお前には出生の秘密があるんだ。いいか吉岡、驚くなよ?
わぁあああああっ????!!!!!!!
吉: どうしましたっ、ゴリさんっ?!
ゴ: 驚く前に驚いておいたんだ。プリ・ビックリしちゃった現象ってやつだよ。
いいか、吉岡、この赤いヘルメットを頭に被って、それからこの看板を手に持て。
これで大丈夫だ。
吉: ビックリカメラーって書いてありますよ、この看板。
これのどこが何に大丈夫なんです?
ゴ: いいか吉岡、人生に無駄なことはないんだ。
人生に起こる出来事ってぇのはな、いわば全てにおいて
四捨五入切り捨て切り上げなんだぞ。わかったか?
吉: 全くわかりません。
ゴ: よく聞くんだ、吉岡。
吉: なんですか?
ゴ: 冷凍みかんがとけちゃうぞ。
吉: 話をそらなさいでください、ゴリさん! 僕の出生の秘密とは
一体何なんですか? 話してください!
ゴ: それはだな・・・・・・
吉: ・・・それは?
ゴ: ・・・・・・・・・・お前、
吉: ・・・・・・・?
ゴ: スパゲッチーバジリコって知ってるか?
吉: 知っています。 話を逸らさないでくださいと先ほど言ったはずです。
僕の出生の秘密と、スパゲッティーバジリコと何の関連があるというんですか?
ゴ: スパゲッチーバジリコ・・・バジリコ・・・ミジンコじゃないぞ、
バジリコだ。 グリコカプリコとも違うんだぞ、混同するなよ~。どうだ、
これですっかり俺の言いたいことはわかっただろう?
吉: いいえ。全く。
ゴ: おばかさんだな~。いいかい? 僕はね、空知川のこと言っているんだよ。
吉: ・・・・・・・わかりました。 それでその空知川がどうしたんです?
ゴ: お前が流れてきた場所だ。
吉: ・・・・・・・・・・・・・は?
ゴ: ある日、親父さんが川で洗濯をしていたら、どんぶらこどんぶらこって
アナウンスしながらお前が上流から流れてきたんだよ。桃に乗って。
吉: 桃に乗って?
ゴ: 白桃だったらしいわけで。
吉: ふざけるのもいい加減にしてください、ゴリさん。それじゃ、
僕は桃太郎だっていいたいんですか?
ゴ: 違う。お前は桃太郎じゃない。
吉: え?
ゴ: ピーチくんだ。
吉: ・・・・・・・・。
ゴ: 間違った。 ピーチホワイトくんだ。
吉: ・・・・・・・・。
ゴ: プハ~。(←食後の一服らしい。)
吉: ・・・・ゴリさん?
ゴ: 冷凍みかんがとけちゃうぞ。
吉: そうではなくて今の話は、
ゴ: なんだ?
吉: ほんとうなんですか?
ゴ: 嘘にきまっているだろう。でもな、
白桃に乗って川から流れてきたピーチくんという部分は本当だ。
吉: 全部本当じゃないですかっ?!
ゴ: そうとも言えるし、そうとも言えん。それを決めるのはお前次第だよ。
吉: 僕が決めていいんですか?
ゴ: いいんじゃないのか?
吉: 僕はピーチではありません。
ゴ: それはお前が決めることじゃない。
吉: いい加減にしてください! 僕は、僕は・・・・・
もうこんなことにはうんざりです。僕は刑事を辞めます!!!
ゴ: ぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~?
吉: なにを小声で驚いているんですか?
ゴ: 落ち着け、吉岡。お前がピーチくんでありたくないという気持ちは
よくわかった。だらからな、こうしよう。お前はピーチくんじゃない。
吉: ?
ゴ: ピーチ男爵なわけで。
吉: だからそういう問題じゃないんです!
ゴ: そんなに桃が嫌いなのぉ? 好き嫌いは体によくないよ。
それよりお前、刑事を辞めてこれから一体どうするつもりだ?
吉: それは・・・・・
ゴ: 何で食っていく?
吉: それは・・・・・
ゴ: きび団子か?
吉: 意味が違います。
ゴ: メガネドラッグのCMで小銭を稼ぐだって?
吉: どうしてそうなるんですかっ? 僕は桃太郎じゃないとさっき仰いましたよね?
ゴ: メンメンメ~ガネ~のよ~いメ~ガネ~♪ってそれでも男かっ?!
吉: だから僕はそんなことは一言も・・・
ゴ: 品質表示の良いメガネだとっ?!
吉: は?
ゴ: そんなのは当たり前だぁっ。いちいちCMで歌にするなっ!!!
吉: ・・・・そんなこと僕に言われても・・・
ゴ: オレは無性に悲しいぞっ!!!ゴリさんパ~~ンチッ!!!!!
立てぇ~! 立つんだ、ジョー! おやっさん、オレは燃え尽きたぜ。
なんだとっ?! 弱音を吐くな、タイガーマスク! いやお前は
タイガーマスクじゃなくて、タイガー・ゴマちゃんだ。きゅ~~~~~。
らぶり~~~~~~~~~~
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/heartss_pink.gif)
吉: 何を一人でやっているんです? 勝手に来週に持ち込まないでください。
ゴ: わかったよ、吉岡。そこまで言うなら、オレはもうお前に
ニックネームをつけるのは今後一切やめる。
吉: え? ほんとうですか、ゴリさん? 信じていいんですね?
ゴ: ああ、本当だ。俺を信じろ。
吉: ありがとうございます。これで任務に集中できます。
ゴ: そうだな、安心して任務に没頭しろ、マシュマロ刑事。
吉: ・・・・。
ゴ: マシュマロちゃんデカのほうがいい?
吉: 。。。。。。。。。。。。
ゴ: うれし泣きするほどのことじゃないだろう?
吉: 悲しくて泣いているんです。
ゴ: 悲しい時は思い切り泣け、マシュマロ~ン。男が汽車の中で泣く。。。
余程の訳有りなんだろう。。。汽車といえば、お前は銀河鉄道がよく似合うな。
お前を見ていると、どうも銀河鉄道の夜の話を思い出してしまってのぉ~。
まるでお前は、ジョバンニとカムパネルラ、あの二人のどちらでもある、
みたいな男だな。ま、それはそうとして、目的地に着く前に、今度の任務先の
オレの連絡先を渡しておく。これだ。慣れない土地だからな、何かあったら
遠慮なくすぐに俺に電話しろよ。
吉: ・・・・・。
ゴ: どうした?
吉: 東京03-200-2222 って書いてありますよ。
ゴ: そうだ。
吉: 日本文化センターの番号じゃないですかっ?!
ゴ: え? あ、間違っちゃったぁ~。 それはこの前、
「スタイリースタイリー・孫の代までお得用セット」を注文した時のメモだったぁ。
お望みなら一台あげようか? オマケで更に35台ついてきたんだ。
吉: 結構です。僕が今現在必要なのはゴリさんの連絡先です。
ゴ: そうだったそうだった。それはねこっちのメモだったよ~。はい、どうぞ。
吉: ・・・・・・・なんですかこれ?
ゴ: 何がって?
吉: 電話はヨイフロって、何ですか? と聞いているんです。
ゴ: シッ! 大きな声で読むんじゃない! それはな、シークレットコードだ。
吉: は?
ゴ: いいか? 伊東に行くなら?
吉: ハトヤ?
ゴ: 電話は?
吉: 4126。
ゴ: よろしい。しかし聞け、電話は4126だが、その前の番号は
一体何番なんだ? 4126だけじゃ繋がらないだろう?!
吉: ・・・・・確かに・・・そうですが・・・。
ゴ: どうだ、立派なシークレットコードだろう? いいか、この番号に
電話してもオレに繋がらない時は、フロントに電話するんだ。万が一の時の為に、
4126体操の後で海底温泉につかっているかもしれん。これも任務の一つだ。
つらい任務だが仕方あるまい。
吉: ゴリさん?
ゴ: なんだ?
吉: アンドロメダにハトヤ旅館があるんですか?
ゴ: ないとどうして言い切れる?
“ 次は~ アンドロメダ~ アンドロメダ~ お泊りはハトヤへどうぞ~
ちなみに映画の鉄郎は~ テレビの鉄郎とは似ても似つかないので
見間違えなく~ しかしどちらも鉄郎~
お降りの前には 宇宙服の装着をお忘れなく~ ”
ゴ: さ、行くぞ、吉岡!
吉: えっ? でもその前に宇宙服を着ないとですよね?
ゴ: そんなもんはいらんっ。気合だっ! うぉりゃぁ~~~っ!
待ってろよぉ~っ、メーーーーーーテルーーーーーーーーー!
吉: ゴリさ~~~~~~~~~~んっ!!!!!
ゴ: なんだい?
吉: いつの間に後方にっ?! たった今アンドロメダに飛び降りましたよね?
ゴ: 忘れ物しちゃったんだよ~。
吉: 何をですか?
ゴ: お前をだよ! 行くぞっ、とぅりゃぁ~!
吉: ぅわぁーーーーーっ?!
つづく。
まだ?