ところでこのヒエログリフに関する記述を読んで、白川静先生のお仕事を思い出しました。シャンポリオンが解読に成功したのは、彼が文字そのものを暗号のように考えていたのではなく、古代エジプトの文化全般に興味をもち、ありとあらゆる古代エジプトに関する知識を基礎として蓄えていたためでした。文字の生成はその時代の文化、人間の営み、自然のありようと密接に関係しています。もう少し踏み込んでいうならば、文化そのものの表出であるかもしれません。そのことをシャンポリオンも白川静先生も「知って」いたのだと思います。
話しは少しずれていきますが、このようにある仕事を遂行するために人は様々な経験をすることになっているように思います。一見なんの関係もないと思われることが、何らかのかたちで仕事のある場面に生きてくる。そんな経験を皆さんお持ちではないでしょうか。人生で経験することに何一つ無駄はないのだ、と強く思います。
現在、たとえ自分の本当にやりたいこととかけ離れたようにみえることをやっているとしても、それはいつかどこかで、思いもかけない場面で役に立ってくるのだと思います。おおらかな気持ちで様々なことを経験し、大いに楽しみ、生きていきたいと思います。