【証明できない前世物語2】
前回(→・夢物語~女帝~。)とは違う前世物語を今日も書いてみます。
今回はちょうど時期的にもぴったりかもしれない、戦争時代の物語です。
証明できない夢物語とはいえ固有名詞出すのは気がひけるので基本的にぼかして書きます。
~戦時下の大きなうねりの中で散った小さな命~
今の私は
「よっ、平たい顔族代表!」
って言いたくなる平らで目もちっさな顔をしている。
が、これから話す転生の時の私は大きな瞳・大きな鼻・長身のけっこう綺麗な外見をしていた。
同じところはしいていえば黒い髪とそこそこある身長だが、全然似てない。
さて、そんなまあまあ綺麗だった転生の私は、とあるヨーロッパの国の貴族だか資産家だか、とりあえずロイヤルと金のバランスがいい家…に住み込みで働いているメイドさんだった。
このご家族はとても使用人に優しかった。
いびられることも殴られることも手を出されることもなく働けたのはラッキーとしか言えないだろう。
娘さんは猫背で弱気な、垂れ目の女の子だった。
お嬢様なのに着飾ることや自慢話が苦手で、読書や頭のいい人の話を聞くことが好きなようだった。
お嬢様が勉強できる時代ではなかったけど学者の才能がある人だった気がする。
彼女と私は年が近かったこともあり、姉妹のように仲良くしていた。
戦争がはじまって何年かたっても、ロイヤルかつ金もたっぷりあるこのお屋敷はしばらく戦争とは無関係のようなおだやかな時間を過ごすことができた。
それでも戦争が長引くにつれどんどん影響が出た。
たくさんたくさんいた使用人を少しずつ解雇し、自慢の絵画や東洋美術品を手放して…。
最後に残った使用人は3人で、年老いた二人と、娘のようにかわいがってくれていた私だった。
そしてある年の冬に
「ここにいたら殺される。
全員で密かに国を逃れよう」
ということになり、全員で神経はりつめて準備をし、そして実行した。
寒い寒い日に、密かに屋敷を全員で出た。
その時なぜか娘さんは、私に高価で防寒効果が高いコートを着せてくれた。
数少ない手元に残った財産のひとつ。
もちろん
「お嬢様が着てください」
と言ったけれど、
「着てる分の服しか持っていけないし、寒いのだから」
と着せてくれた。
その時、泣き出しそうな瞳を彼女はしていた気がする。
というわけでそれを着て全員で逃げた。
でも、汽車(多分…)に乗ってた途中で軍隊が入ってきて、見つかってしまって。
そして、あっけなく私は銃殺されてしまった。
時代を考えれば
「なにもされずあっさり殺されたのはラッキーだな。
銃なら苦しみもなく一瞬だし」
くらいラッキーなこと。
でも問題はここから、そのときの私は“自分の死体を上から見ていた”。
幽体離脱っていうか、魂離脱というか。
そこで記憶が終わらなかったのね。
その時点では純粋に
「みんなは助かりますように、みんなは助かりますように」
と願っていたような感じ。
でも、そこにやたら綺麗な軍服をきた男(上級軍人って感じ)がやってきて、淡々と部下に命令するのを見聞きしてるうちにあることがわかった。
自分は、娘さんの死体代わりに殺されたのだ。
どういうことかというと、ダンナさまは国外に逃れるために軍内部の人に助けを求めた。
お金もたっぷり渡したんだろうけど(これはあくまで予想です)、
「わざとこの地点で軍隊に見つけさせて、6人のうち使用人3人だけ殺して、その遺体を一家3人として報告して、生き残った本物の家族は国外逃亡を見逃す」
わかりますかね。
自分達の身代わりにするために、国境にわざわざ男女の老使用人と、そして娘さんの遺体代わりになる私を連れてきたの。
それがわかったときのショックはすさまじくて、上からやりとりを見下ろしながら
「殺すために連れてきたんだ」
「じゃあ、あのコート着せてくれたのは娘さんの遺体であることに信憑性を持たせるため?」
「そこまでして自分たちだけが助かりたいの?」
「どうせ殺すにしても、だますなんてひどい」
多分こんな感じに、この転生の私は大ショックを受けていた。
そこでこの転生の物語は終わってる。
う~ん、なんというか…ありそうな話だよねって思う。
殺された側はショックすぎて、今までもらってた愛全てが嘘だったみたいに感じるのも当たり前だろうし、かといって生き残った3人…特に真面目なお嬢さんは辛かっただろうなぁと想像できます。
どこに逃げたんだろうね。
永世中立国か、新世界か…自分たちの身代わりに使用人たちを殺したご家族は、どんな気持ちでその後を生きたのか。
っていうか、戦争が終わるまでちゃんと生き延びたのか。
「戦争のせいだよね」
としか現代を生きる私には言えないよ。
時代にさきがけて優しい雇い主だったからこそ、
「まだまだマシ」
な殺され方って感じもする…でも、被害者にそんなことは言えないね。
不思議に思う方もいらっしゃるでしょうが、前世の記憶が見えても前世=今の自分って感覚には全然なりません。
それこそ物語の主人公みたいな感じ。
しかしながらこの前世物語、キーになるのは
「死んだ瞬間に終わりになってない」
ことだと思う。
肉体が死んだ時点で記憶が終わってれば、この転生の彼女(私)は計画のことや真実を知れるわけがないのだからね。
終わらせることができたら
「優しい家族に雇ってもらって幸せだったなぁ。
私は死んじゃうけど、みんなにはなんとか生きてほしいなぁ」
って思って天国だか浄土にまっすぐいけたはず。
でも見てた。
そして知ってしまった。
死人が、死んだだけで終わらないとしたら…?
ぞぞっとしません?
そんな夢物語でした~。
あ。
今の私なら、ご夫妻もそれこそ自分の腕もがれるような気持ちで条件(=代わりに3人の使用人の命を差し出す)を飲んだんじゃないかと思いますよ。
娘さんも知っていただろうし、コートは目印だったかもしれないけど
「死ぬまではせめて温かくしてほしい」
こんな純粋な祈りをこめて着せてくれたんだと思う。
残酷で人を人とも思わない3人だったなら、もっと前にひどい目にあわせてきただろうよ。
前回(→・夢物語~女帝~。)とは違う前世物語を今日も書いてみます。
今回はちょうど時期的にもぴったりかもしれない、戦争時代の物語です。
証明できない夢物語とはいえ固有名詞出すのは気がひけるので基本的にぼかして書きます。
~戦時下の大きなうねりの中で散った小さな命~
今の私は
「よっ、平たい顔族代表!」
って言いたくなる平らで目もちっさな顔をしている。
が、これから話す転生の時の私は大きな瞳・大きな鼻・長身のけっこう綺麗な外見をしていた。
同じところはしいていえば黒い髪とそこそこある身長だが、全然似てない。
さて、そんなまあまあ綺麗だった転生の私は、とあるヨーロッパの国の貴族だか資産家だか、とりあえずロイヤルと金のバランスがいい家…に住み込みで働いているメイドさんだった。
このご家族はとても使用人に優しかった。
いびられることも殴られることも手を出されることもなく働けたのはラッキーとしか言えないだろう。
娘さんは猫背で弱気な、垂れ目の女の子だった。
お嬢様なのに着飾ることや自慢話が苦手で、読書や頭のいい人の話を聞くことが好きなようだった。
お嬢様が勉強できる時代ではなかったけど学者の才能がある人だった気がする。
彼女と私は年が近かったこともあり、姉妹のように仲良くしていた。
戦争がはじまって何年かたっても、ロイヤルかつ金もたっぷりあるこのお屋敷はしばらく戦争とは無関係のようなおだやかな時間を過ごすことができた。
それでも戦争が長引くにつれどんどん影響が出た。
たくさんたくさんいた使用人を少しずつ解雇し、自慢の絵画や東洋美術品を手放して…。
最後に残った使用人は3人で、年老いた二人と、娘のようにかわいがってくれていた私だった。
そしてある年の冬に
「ここにいたら殺される。
全員で密かに国を逃れよう」
ということになり、全員で神経はりつめて準備をし、そして実行した。
寒い寒い日に、密かに屋敷を全員で出た。
その時なぜか娘さんは、私に高価で防寒効果が高いコートを着せてくれた。
数少ない手元に残った財産のひとつ。
もちろん
「お嬢様が着てください」
と言ったけれど、
「着てる分の服しか持っていけないし、寒いのだから」
と着せてくれた。
その時、泣き出しそうな瞳を彼女はしていた気がする。
というわけでそれを着て全員で逃げた。
でも、汽車(多分…)に乗ってた途中で軍隊が入ってきて、見つかってしまって。
そして、あっけなく私は銃殺されてしまった。
時代を考えれば
「なにもされずあっさり殺されたのはラッキーだな。
銃なら苦しみもなく一瞬だし」
くらいラッキーなこと。
でも問題はここから、そのときの私は“自分の死体を上から見ていた”。
幽体離脱っていうか、魂離脱というか。
そこで記憶が終わらなかったのね。
その時点では純粋に
「みんなは助かりますように、みんなは助かりますように」
と願っていたような感じ。
でも、そこにやたら綺麗な軍服をきた男(上級軍人って感じ)がやってきて、淡々と部下に命令するのを見聞きしてるうちにあることがわかった。
自分は、娘さんの死体代わりに殺されたのだ。
どういうことかというと、ダンナさまは国外に逃れるために軍内部の人に助けを求めた。
お金もたっぷり渡したんだろうけど(これはあくまで予想です)、
「わざとこの地点で軍隊に見つけさせて、6人のうち使用人3人だけ殺して、その遺体を一家3人として報告して、生き残った本物の家族は国外逃亡を見逃す」
わかりますかね。
自分達の身代わりにするために、国境にわざわざ男女の老使用人と、そして娘さんの遺体代わりになる私を連れてきたの。
それがわかったときのショックはすさまじくて、上からやりとりを見下ろしながら
「殺すために連れてきたんだ」
「じゃあ、あのコート着せてくれたのは娘さんの遺体であることに信憑性を持たせるため?」
「そこまでして自分たちだけが助かりたいの?」
「どうせ殺すにしても、だますなんてひどい」
多分こんな感じに、この転生の私は大ショックを受けていた。
そこでこの転生の物語は終わってる。
う~ん、なんというか…ありそうな話だよねって思う。
殺された側はショックすぎて、今までもらってた愛全てが嘘だったみたいに感じるのも当たり前だろうし、かといって生き残った3人…特に真面目なお嬢さんは辛かっただろうなぁと想像できます。
どこに逃げたんだろうね。
永世中立国か、新世界か…自分たちの身代わりに使用人たちを殺したご家族は、どんな気持ちでその後を生きたのか。
っていうか、戦争が終わるまでちゃんと生き延びたのか。
「戦争のせいだよね」
としか現代を生きる私には言えないよ。
時代にさきがけて優しい雇い主だったからこそ、
「まだまだマシ」
な殺され方って感じもする…でも、被害者にそんなことは言えないね。
不思議に思う方もいらっしゃるでしょうが、前世の記憶が見えても前世=今の自分って感覚には全然なりません。
それこそ物語の主人公みたいな感じ。
しかしながらこの前世物語、キーになるのは
「死んだ瞬間に終わりになってない」
ことだと思う。
肉体が死んだ時点で記憶が終わってれば、この転生の彼女(私)は計画のことや真実を知れるわけがないのだからね。
終わらせることができたら
「優しい家族に雇ってもらって幸せだったなぁ。
私は死んじゃうけど、みんなにはなんとか生きてほしいなぁ」
って思って天国だか浄土にまっすぐいけたはず。
でも見てた。
そして知ってしまった。
死人が、死んだだけで終わらないとしたら…?
ぞぞっとしません?
そんな夢物語でした~。
あ。
今の私なら、ご夫妻もそれこそ自分の腕もがれるような気持ちで条件(=代わりに3人の使用人の命を差し出す)を飲んだんじゃないかと思いますよ。
娘さんも知っていただろうし、コートは目印だったかもしれないけど
「死ぬまではせめて温かくしてほしい」
こんな純粋な祈りをこめて着せてくれたんだと思う。
残酷で人を人とも思わない3人だったなら、もっと前にひどい目にあわせてきただろうよ。