著者 ジェフリー・ディーヴァー
略歴 1950年シカゴ生まれ。記者、弁護士を経て作家となる。「ボーン・コレクター」などリンカーン・ライムが活躍するシリーズを書いている。本書はフレミング財団からの委託を受けて、ジェームス・ボンドを現代に蘇らせらせた第1回目の作品である。
出版年 2011年
邦訳出版年 2011年
邦訳出版社 (株)文芸春秋
訳者 池田真紀子
感想
現代のジェームス・ボンドはスマートフォンや盗聴アプリ、
コンピュータを駆使しているが、高級車を乗り回し美女に囲
まれ、卓越したアクションの切れを見せるというボンドスタ
イルは変わっていない。
土曜日にイギリス政府通信本部が傍受したメールには金
曜日に大規模なテロが計画されていることを告げていた。金
曜日まであと六日。どこで誰がテロを実行するのか。それを
探るべく、暗号名007の諜報員ジェームス・ボンドはイン
シデント20作戦と名付けられたテロ計画の鍵を握る男〈ア
イリッシュマン〉を追ってセルビアへ飛ぶ。追跡はセルビア
からロンドン、そしてドバイ、南アフリカのケープタウンへ
続く。海外ではミッション達成のためいかなる手段も容認す
る白紙委任状を渡されたボンドだが、ロンドンでは白紙委
任状は与えられない。警察や他の諜報機関と協力し、その管
理下におかれることになる。白紙委任状が唯一承認されない
地域がイギリスなのだ。味方の警察や諜報機関を欺くことか
ら、ボンドの捜査は始まる。
ボンドの最大の協力者はロンドンにいる情報アナリスト
である。コンピューターを駆使してハッカーもどき技術で秘
密情報を調べてくる。現代のスパイ戦争がコンピューターの
情報戦なのだと納得する物語の展開になっている。そうして
知った情報の中にボンドの両親の死と関係のある事件が混
じっていた。事故死ではなかった。次回はこの両親の死が解
明されるものになると期待したい。
ジェームス・ボンド・シリーズは映画でしか見たことがな
かったが、本書の中のボンドは繊細でよく気がつく常識的な
人間である。プレーボーイでもなく、職務に忠実なエージェ
ントだ。スーパーヒーローから少し普通の人に近づいたヒー
ローになっている。