著者 : 柚月裕子
出身地 : 岩手県
出版年 : 2017年
出版社 : 中央公論新社
☆☆☆感想☆
年末にNHKでドラマ化したこの作品の最終部分だけを見た。それでお正月に読んでみた。ドラマのほうが登場人物に優しく作られているし、救いがある。小説のほうがもっと悲劇的だ。諏訪の天才児は小学校2年で母は自殺し、味噌職人の父は賭けマージャンに狂い、育児放棄された中で育った。小学校3年で新聞配達するようになるが、配達の途中で捨てられた将棋雑誌を見つけて将棋に開眼する。恩人にプロ棋士への登竜門である奨励会への受験を勧められるが、父親の反対でプロへの道をあきらめる。父親との縁を絶って東大へ進んだ上条桂介は、真剣師という、賭け将棋を仕事にしている東明重慶に会う。紆余曲折の末、上条桂介は30歳すぎてプロ棋士になり、プロの棋戦のひとつを当代きっての実力者と競っている。一方、埼玉の山中で身元不明の白骨死体が見つかる。白骨死体と一緒に名匠の将棋の駒が残されていた。
解説が羽生善治で、真剣師と子供時代に対戦した思い出とか名匠の将棋駒について語っている。将棋の世界の面白さが一層増した。本書の中で将棋を指す場面が多いが、文章ではわかりづらく、盤面を絵図で再現してほしかったなと思ってしまった。いろいろな展開が考えられる小説だが、主人公が気の毒すぎるので別な終わり方にしてほしかった。