『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想5  血に非ず

2012-03-21 00:30:32 | 小説(日本)

 

題名       : 血に非ず<o:p></o:p>

 

古着屋総兵衛影始末1<o:p></o:p>

 

著者       : 佐伯泰英<o:p></o:p>

 

出版年月       : 2011年2月  <o:p></o:p>

 

出版        : 新潮文庫<o:p></o:p>

 

定価            : ¥590(税別)<o:p></o:p>

 

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あらすじ:<o:p></o:p>

 

 古着屋総兵衛影始末の新シリーズは前回のシリーズが終わってからおよそ100年後に舞台が設定されている。前回のシリーズの主人公だった6代目大黒屋総兵衛こと鳶沢総兵衛勝頼に代わり、9代目大黒屋総兵衛こと鳶沢総兵衛勝典が労咳のため死の床に就いているという大黒屋の衰退を象徴する場面から始まる。<o:p></o:p>

 

大黒屋は6代目の時代を頂点としてゆるやかに衰退の一途を辿っていた。鎖国の禁を破り、安南(ベトナム)にまで交易網を広げた6代目の時代とは異なり、幕府の統制に従い交易網も琉球近辺に縮小してきた。そうした中で大黒屋の持ち船が2隻遭難し莫大な損害を被った。さらに跡継ぎもなくなり、内儀も精神を患って大黒屋を去った。9代目は妻も子もない中で死を迎えようとしていた。<o:p></o:p>

 

 また隠れ旗本としての存在も危ういものになっていた。徳川家康の命によって表の貌は江戸の古着商を統括する「古着問屋大黒屋」、裏の貌は隠れ旗本として徳川幕府を守るという密命をうけた鳶沢一族は、幕閣の中の「影」からの命令を実行する役目を代々負っていた。しかし、6代目以後100年間、幕閣の中の「影」からの呼び出しも指示もなくなった。<o:p></o:p>

 

 そうした鳶沢一族の危機の中で9代目勝典は「血に非ず」という言葉を残して亡くなってしまう。一族の長老たちは後継者としてまず9代目の落し胤を探す。しかし品性卑しく吉原で強盗を繰り返す落し胤を見て「血に非ず」という遺言に従って切り捨ててしまう。総兵衛の座に相応しい近親者を見つけることができないまま、9代目の死から6日目を迎えた日、今坂勝臣という若者が大黒屋を訪ねてくる。長身で明晰な風貌をもった、浅黒い若者は、安南の交趾(トンキン・ハノイ地方)からやってきた6代目の曾孫だった。<o:p></o:p>

 

今坂家は鎖国令のために帰国を許されず、安南に留まった西国の武士の家系だった。安南ではグエン家と名乗り、交趾の高官につらなった。6代目が交趾に至った時に今坂家の娘と契を交わし生まれたのが勝臣の祖父だった。再び交趾に姿を現すことのなかった6代目への思慕が「いつか江戸の大黒屋を訪ねよ」という言い伝えになり受け継がれた。交趾の政変に巻き込まれたグエン家(今坂家)は全財産を巨大なイマサカ号に載せて、一路江戸を目指して北上してきたのだ。<o:p></o:p>

 

 そしてこの勝臣の登場により、鳶沢一族の危機は解消に向かうことになる。6代目の再来かと言われるほどの器量をもった勝臣が10代目を継ぐことになる。<o:p></o:p>

 

 そしてそこに100年ぶりに「影」からの呼び出しがかかる。「影」は一体誰なのか。なぜ100年ぶりに呼び出すのか。鳶沢一族を御用済みにするのか、生かすのか。「影」と鳶沢一族は手を結ぶことができるのか、それとも仇敵となっていくのだろうか。<o:p></o:p>

 

感想:<o:p></o:p>

 

 江戸時代のタブーを打ち破ってきた大黒屋シリーズが、最大のタブーを破った。外国人を日本に入国させ、日本人にしてしまうという設定である。風貌からも外国の血が入っていることは一目瞭然なのに、人物本位で大黒屋総兵衛の跡継ぎに据えてしまう。本当に「血に非ず」である。東アジアは清も朝鮮も日本も欧米との関係を断ったり制限したりしたが、安南(ベトナム)は欧米の影響に直にさらされた。そこから来る人は先端的な技術を持っていたはずだ。海の道を通ればベトナムも近い。海から新しい風は常に吹いてくる。ベトナム生まれの新しい大黒屋総兵衛が江戸時代の閉塞状況をどう打破するのかを見届けたい。

 



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