あさか野の四季

      写真歳時記

現の証拠(ゲンノショウコ)

2019年10月01日 | 里山や野原の花

 ゲンノショウコは、夏から秋にかけて山野や道端などで白い可憐な花を咲かせる。西日本では紫紅色が多いとか。
 名前の由来は「煎じて飲めば瞬く間に下痢が止まる」の意味でこう名づけられたとされる。
 ゲンノショウコは、江戸初期からセンブリやドクダミとともに民間生薬の一つに数えられ、干して煎じて飲めば下痢止め、腸薬など、優秀な整腸生薬として使われてきている。
 中国では、薬草として利用されていないようであるが、日本では「医者いらず」「たちまち草」などの別名が生まれるほど広く利用されてきたことが面白い。

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春紫苑(ハルジオン)

2019年05月23日 | 里山や野原の花
 

 今の時期、道端や空き地に咲くハルジオンの花は、遠目にも美しい。この植物は、北アメリカ原産で大正時代に観賞用として持ち込まれ野生化したものとされる。名は牧野富太郎によって、春に咲く紫苑(日本、中国、朝鮮などに分布し、夏の終わりから秋口に花を付ける)として命名されたという。
 美しく可憐な花に似合わず、抜いても地中に根が残っていれば再生するほどの生命力がある。
 一方、ハルジオンと紛らわしいのがヒメジオンである。ヒメジオン(姫紫苑)は、ハルジオンと同じ北アメリカからの帰化植物であるが、ハルジオンより花の時期が遅く、茎が詰まっているなどの特徴を持つ。
 現在、ハルジオン、ヒメジオンは、日本の自然生態系に影響があるとされる外来種ワースト100に指定されている。可愛らしい花だけにちょっと残念な気もする。

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秋ノ麒麟草(アキノキリンソウ)

2018年12月10日 | 里山や野原の花

 晩夏から秋、日当たりのよい山野や草原でよく見かけるが、生育範囲が広いのが特徴で、写真のような薄暗い林の中でも見つけることが出来る。
 名前は、夏に咲くベンケイソウ科のキリンソウに似ることに由るという。また、別名のアワダチソウは、花序を酒の発酵時の泡に見立て名付けられたとされる。
 林の中の小漏れ日に輝く黄色が美しい。

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筆竜胆(フデリンドウ)の花

2017年06月07日 | 里山や野原の花

 フデリンドウ、なんとも可愛らしい。リンドウと言えば秋のイメージであるが、春に咲く種類である。
 乾いた草地や開けた林の下を好むようで、草丈は5~10㎝、花は日が当たる時に数輪、天を仰ぐように開くのが特徴である。
 名前の由来は字のごとく、くもりや雨天時の花を閉じた状態が筆の穂先に似るところからきたとされる。
 このリンドウは咲く場所、時期も限られ、数も少ない。このためなかなか出会えないが、今回は幸運であった。(近くの里山にて)

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東石楠花(アズマシャクナゲ)の花

2017年05月03日 | 里山や野原の花

 まもなく立夏。里山の木漏れ日の下に咲くシャクナゲは、何とも美しい。写真はアズマシャクナゲの花である。近年は西洋種も含めて園芸種が多いが、個人的にはこちらの方が好きである。
 アズマシャクナゲは、東北から関東地方に多いことからこう名付けられたようで、最もなじみの深い品種である。ちなみに、シャクナゲの語源は、牧野図鑑によれば尺無木、シャク無しなどと、諸説があるようで明らかでない。
 花色が白から淡紅色のハクサンシャクナゲ(白山石楠花)の一種で、明治36年、福島県の吾妻山で根本莞爾氏らによって発見された八重咲きのものは、ヤエハクサンシャクナゲとして大正2年に国の天然記念物に指定されているという。
 現在、福島県では、このシャクナゲを発見者の名をとりネモトシャクナゲとして県花に選定している。希少種のようであるが、一度見てみたい花の一つである。

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種漬花(タネツケバナ)

2017年04月04日 | 里山や野原の花

  水田やその畔などの水分の多い場所に生え、春浅いこの時期、白い小さな花を咲かせる。タネツケバナという名は、苗代の準備を始めるために、種もみを水に浸す頃に咲くことからこう付けられたとされる。
 近年、あちこちで、これによく似た花を見かけるが、これはミチタネツケバナと言われるヨーロッパ原産の帰化植物である。その生育は旺盛で、荒地をはじめ道路わきの土手やコンクリートの割れ目など、場所を選ばない。
 一方、写真の在来種は、外来種に比べて繁殖力弱く、乾燥にも弱いため、ニホンタンポポと同じようにその適応地は少ない。かつてはどこの水田でもみられたが、今はあまり見られない。近頃の水田は、コンバイン収穫後に稲わらの処理のため「秋起こし」をするようになったためであろうか。

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野襤褸菊(ノボロギク)の花

2017年01月12日 | 里山や野原の花

 ノボロギクは、厳冬(1月)にもかかわらず花を付け、綿毛を飛ばしている。
 この植物は、ヨーロッパ原産の帰化植物で、明治の初めに入ったとされている。道端や田畑の畔に一年中みられるが、畑では強勢雑草などとして冷たく扱われている。
 和名は、野に咲くボロギク(サワギク)の意だとされる。ボロの由来については、集まって咲く頭花の様子がボロ切れのように見えるからと言う説(牧野植物図鑑)や、冠毛がボロくずのようだからと言った説があるようだ。いずれにしても、私にはどう見てもボロには見えない。
 あまり目立たない植物であるが、この生命力には、ただただ脱帽である。

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露草(ツユクサ)の花

2016年09月26日 | 里山や野原の花

 鮮やかな紫、畑の畔や道端でよく見かける。
夏の時期から咲いているが、この時期の花が一番美しい。朝早く咲き、朝露を連想させることから「露草」と名付けられたとも。昼過ぎにはしぼむ一日花である。
 自生地は日本全国と東アジアとされる。日本では古くから親しまれていたようで、万葉集には「月草」として九首詠まれているという。
 明治から昭和の初めにかけて入った北米原産のムラサキツユクサやオオムラサキツユクサも華やかできれいであるが、個人的には在来種派である。

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合歓(ネム)の花

2016年07月24日 | 里山や野原の花

 ネムノキの花である。初夏の緑のなか、その淡紅色の雄しべが一層鮮やかに映える。
 ネムノキの名は、鳥の羽を思わせる左右の小葉が夜になると閉じ、あたかも木が眠っているように見えることに由来するされるが、漢字表記では、合歓木と表すことも多い。これは、中国では古くから葉の閉じる様子が、男女の共寝する姿になぞらえて合歓を用いたといわれる。 日本でも、万葉集に「昼は咲き 夜は恋ひ寝る合歓の花・・・」とあり、この時代から中国流の意味合いで使われていたことが分かる。(近くの公園にて)
      そのすがた 人にうつすや ねむの花     加賀千代女

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河津桜(カワヅザクラ)

2016年03月31日 | 里山や野原の花

 今年も、他の桜に先駆けてきれいな花をつけた。
 カワヅザクラは、南方系のヒカンザクラ(緋寒桜)と伊豆地方に多いオオシマザクラ(大島桜)の自然交配種とみられ、昭和30年、静岡県河津町の河津川河川敷で見つかったものだという。
 早咲きで、南の地方では旧暦の正月頃に咲くことから元日桜の名もある。

 当地方もサクラが咲きはじめ、いよいよ春本番を迎える。(近くの公園にて)

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彼岸花(ヒガンバナ)

2015年09月23日 | 里山や野原の花

ヒガンバナ。毎年正確に、秋彼岸のこの時期に花をつけることからこの名がある。
ヒガンバナは中国からの帰化植物で、稲作とともに入ったとか。
曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも呼ばれ、法華経の「摩訶曼陀羅華 曼珠沙華」に因むとされるが、仏教でいう曼珠沙華は、「白く柔らかい花」のようで、ヒガンバナとは似ても似つかないものだといわれる。鱗茎にリコリンと言う毒物を含むため「死人花」「幽霊花」という不名誉な名もある。

ヒガンバナは、一面真っ赤に染まる群落が見事であるが、数は少なくても秋空を背に咲く様子はまた格別である。(近くの水田の土手にて)

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女郎花(オミナエシ)

2015年08月19日 | 里山や野原の花

オミナエシの花。細く分かれた枝先の黄色い小花の集まりは、遠目にも鮮やかである。
秋の七草の一つで、アワバナの名もある。
和名の女郎(オミナ)は、女性のことされる、広辞苑には身分のある女性、若い女性のことともあるが、一般的には遊女を指すことが多いようだ。エシについては諸説があり不明。
それにしても、日本には、ヘクソカズラをはじめ、ブタクサ、イヌノフグリ、ハキダメギク等など、あまりにも品のない名前が多いような気がしてならない。ちなみに、オミナエシの漢名は「黄色龍芽」だそうである。
まだ、残暑は厳しいが、青空に映えるオミナエシの花がみられる季節も近い。

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山百合(ヤマユリ)の花

2015年07月24日 | 里山や野原の花

この時期の里山歩きの楽しみは、ヤマユリの花に出会うことにある。
とくに、木漏れ日のもとで見る花は、まさに豪華、華麗で「ユリの王様」にふさわしい。
ヤマユリは、和名のように日本特産の一つで、日本人は、縄文の昔から鱗茎(球根)を食用にしていたという。
世界的に知られるようになったのは、ウィーン万博(1873年)が契機とされるが、あの有名な「カサブランカ」などオリエンタル・ハイブリット種は、ヤマユリの交配種にあたる。
本当に立派なヤマユリを見るためには、手入れの行き届いた「里山」を守らなければならない。
     木漏れ日に 咲きし山百合 峠道   堀尾 早苗


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蛍葛(ホタルカズラ)の花

2015年05月27日 | 里山や野原の花

緑の中の鮮やかな青色。ホタルカズラの花である。

和名は、花の蛍光色が草むらの蛍のように遠くからも目立つことと、花後、葛のように茎を伸ばして根を出すことに由来する。ホタルソウ、ルリソウといった別名もある。

他の春の花が咲き終えるこの時期、ホタルカズラは里山林の縁の主役となる。
いま、いくつかの県では、絶滅が危惧されているとか。心配である。
(写真:近くの里山にて)

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熊谷草(クマガイソウ)の花

2015年05月09日 | 里山や野原の花

今、クマガイソウの花、群落が見頃である。
ラン科の多年草。花の形が、昔の武士が戦のときに弓矢を防ぐ目的で背負った母衣(ホロ)に似ていることからホロカケソウの別名もある。

クマガイソウの和名は、同種のアツモリソウと対比して付けられたようで、花(唇弁)の色や形が、白っぽく逞しそうな方を源氏の武将・熊谷直実の母衣に、赤紫色でやさしそうな方を平家の武将・平敦盛の母衣に見立てて命名されたとされる。 

クマガイソウは、いま、開発、盗掘などによって絶滅の危機にあるとされるが、アツモリソウと違って園芸的に繁殖させるのは困難とされる。(写真:近くに森林公園にて)

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