今年も桜が美しい季節になった。
県内有数の桜の名所、ここ郡山市の開成山公園も1,000本余りの桜が見ごろを迎えている。この中には明治のはじめ、この地を拠点に行われた安積開拓時に植えられた桜が今も残る。その桜は、開拓を始めるにあたり地元の富商が組織した「開成社」の人々によって、灌がい用ため池の堤防などに植えられたものである。
開成社百年史によれば、開成社は明治6年の結社社則に花木苗木購入の金額を具体的に掲げ、明治8年には開墾地周辺に桜苗木の栽植を決定している。一方、開成山と周辺一帯の桜を「国の名勝及び天然記念物」として申請するために行われた県の調査報告書(昭和7年)には、開成社が中心となり山桜をはじめ染井吉野(当時は下り苗と呼ばれた)の苗木を東京の植木商から購入し、明治11年(1878年)に植栽した、とある。これらからすると公園内の古いソメイヨシノの樹齢は少なくても今年で135年を数えることとなる。一般にソメイヨシノの寿命は40~50年、長くても60年とされ、樹齢135年は驚異的な記録と言える。
現在、日本最古のソメイヨシノは、明治15年(1882年)に植えられた青森県の弘前公園の桜とされているが、こちらの方が数年早く植えられたと思われ、日本最古、長寿日本一は開成山公園のソメイヨシノであると推察される。写真がその長寿日本一と思われる古木のうちの一本であるが、なぜか市の緑の文化財や天然記念物にはなっていない。
いま、この古木と同時に植えられたと思われる公園内のソメイヨシノの多くは朽ちかけており、ひん死の状態のものも少なくない。当面、最古か日本一か、とは別に、一層の養生対策を行うなど、名誉ある長寿記録をさらに延ばす手立てに知恵を集めたいものである。
(写真:郡山市開成山公園にて。残念ながら歴史的な桜であることを知る市民は少ない)