いま月桂樹が花盛りである。目立たないが淡黄色の小花が密集して咲いている。
月桂樹は地中海沿岸が原産で、日本には明治の頃に大陸経由で渡来したとされる。ローレルの名前でも親しまれ、乾燥した葉はローリエとして料理に利用される。
オリンピック競技などの優勝者に与えられる月桂冠は、古代ギリシャで太陽の神アポロンの木とされたこの樹の枝で冠を作り、栄誉をたたえたことに始まるという。
名前の由来が面白い。月の中に見える影を日本では「ウサギが餅をつく姿」に見立てることが多いが、中国では「大きな桂を切る男の姿」に見えるそうで、そのことから日本に渡ってくる時、「月の桂の樹」となったという。ちなみに漢名の月桂は木犀のことだという。牧野植物図鑑には「和名は中国の月桂樹に基づき誤った名だが慣用」とある。どこかで勘違いがあったようである。
爽やかな五月の風のもと、近づくと何とも言えないほのかな香りが漂う。
(写真:郡山市自宅庭にて)
今日は八十八夜。
立春から数えた日数で、♪夏も近づく八十八夜・・・ と歌われるように春から夏への節目といえる。今年は気温変動が激しいためか実感に乏しいが、写真の芽吹きのように季節は着実に動いている。
この八十八夜は暦の上で雑節とされ、節分、入梅、土用、二百十日、彼岸などと同じように暮らしや農作業の目安として、日本で名づけられたものだという。
「八十八夜の別れ霜」といわれるように、当地方でもこの頃を境に霜の心配はなくなる。(今年はちょと違う?) また「八+十+八=米」で農作業を始めるのに縁起が良い日とされ、現在もこの日を目安にしている地方も多い。先人の的確な季節感、知恵に驚かされる。
ただ、月の動きを基準に数えた旧暦時代の八十八夜は素直に分かるが、なぜ二百十日は二百十夜としなかったのであろうか、少し気になっている。(写真:郡山市逢瀬町にて)