クズは秋の七草の一つ。美しく香りの良い大きな花をつける。
面白いことに房状の花は下から咲き始め、淡紅色から濃い紅色、そして紫へと変化する。
和名は「くずかずら」で、葛は漢名だそうだ。この「くず」という名は、大和国吉野郡の国栖(この地の人が葛粉をつくり売り歩いた)の地名に由来するとか。
今年のように茹だるような暑さが続くと、クズと聞くと冷えた「葛切り」や「葛饅頭」がすく浮かぶ。根からとった純白、良質のデンプンである。しかし、用途はそれだけではなく、昔から根は生薬(葛根)として広く使われ、茎は繊維を取って葛布に、葉は家畜の飼料として利用されてきた。そして今、製薬会社がイソフラボンやサポニンを多く含む花にも関心を寄せているという。
しかし、このような万能植物にも関わらず、最近は厄介な雑草として切り捨てられている。
クズは、日本全国どんな荒地にも生え、しかも驚くほど旺盛な生育を示す。肥料もいらないこの植物をもう一度見直してみたい気がする。(写真:逢瀬町の路傍にて)
この時期、里山に足を踏み入れるとシャワーのようなセミの大合唱に迎えられる。
なぜか今年は、例年にくらべて種類も数も多くにぎやかだ。
地下で何年も過ごした彼らも、地上では数日のいのち。懸命に鳴く様子に感動さえ覚える。私たちが「声」としてとらえているこの鳴き声、他の国の人々には雑音にしか聞こえないとか。何でも、日本人は虫の声を左脳でも聞いている数少ない民族なのだそうである。
長雨の 止みて堰切る 蝉しぐれ 吉井竹志
暑い夏、木陰で聞く蝉時雨、何ものにも代えられないような気がする。
(写真:里山公園の遊具に下りて鳴くアブラゼミ)