あさか野の四季

      写真歳時記

ひつじ田(ひつじだ)

2012年11月23日 | 風景や景観

秋、刈り取ったあとの稲株から再生した稲を「ひつじ」といい、「ひつじ田」とは、一面にひつじの生えた田のことである。ひつじは、早刈りした稲ほどよく伸び、まれに穂をつけるまで生長することもある。

ひつじを「ひこばえ」と呼ぶこともある。ただ、ひこばえ(蘖)は、草や木の切り株から出た芽を指す点でひつじと同じであるが、春の季語とされており、稲に対して使うのは不適当かも知れない。
ちなみに、「ひつじ」は漢字で、禾へんに魯と書く。その意味は、漢辞海(三省堂)によれば、野生の稲のことだという。

やっとここまで成長し、緑を保ち続けた「ひつじ田」も、やがて霜にあい枯れてしまうことを思うと何となく儚さが胸をよぎる。
(写真:郡山市片平町内にて)


石蕗(ツワブキ)の花

2012年11月17日 | 庭に咲く花

庭に花が少なくなるこの時期、黄色い頭状花がひときわ鮮やかである。

ツワブキはキク科の常緑多年草。福島県、石川県より南西の海岸沿いの山野に多いという。近頃は園芸種も数多いようで、あちこちの庭先でよく見かける。
和名は、光沢のある葉を持ち、フキに似ることから付けられたツヤブキ(艶蕗、艶葉蕗)の転訛とされる。
しかし国語辞典には、なぜか石蕗の表記が多い。

ともあれ、ツワブキは晩秋から初冬にかけての庭に、明るさと彩りを添えてくれる。
(写真:郡山市の自宅庭にて)


竜胆(リンドウ)の花

2012年11月09日 | 里山や野原の花

秋空に映える濃い青紫色の花。美しさだけでなく、かわいらしさ、たくましさも感じる。子供の頃に「りんどう峠」という淋しげな歌を聞いた記憶があるが、この花には日本人の心に響く何かがあるような気がする。

リンドウという呼び名は、漢名の竜胆(リュウタン)が訛ったものという。この何とも恐ろしげな名前は、根の苦味がこの世で一番の熊の胆よりも苦いと言うことから付けられたとされる。生薬として健胃・消炎剤などに使われている。

現在、リンドウには多くの園芸種が出回っている。しかし、清楚な野生のものが一番美しいように思う。
深まる秋に、鮮やかさがいっそう際立つ。
(写真:棚倉町の林道にて)