
秋、刈り取ったあとの稲株から再生した稲を「ひつじ」といい、「ひつじ田」とは、一面にひつじの生えた田のことである。ひつじは、早刈りした稲ほどよく伸び、まれに穂をつけるまで生長することもある。
ひつじを「ひこばえ」と呼ぶこともある。ただ、ひこばえ(蘖)は、草や木の切り株から出た芽を指す点でひつじと同じであるが、春の季語とされており、稲に対して使うのは不適当かも知れない。
ちなみに、「ひつじ」は漢字で、禾へんに魯と書く。その意味は、漢辞海(三省堂)によれば、野生の稲のことだという。
やっとここまで成長し、緑を保ち続けた「ひつじ田」も、やがて霜にあい枯れてしまうことを思うと何となく儚さが胸をよぎる。
(写真:郡山市片平町内にて)