12/20 SARP vol.19 『S高原から』
ノトススタジオにて三女と観劇。
高原にあるサナトリウムの
何気ない一日。
療養中の人、面会に来た人、
そこの職員。
それぞれの日常。
始まりは意外と楽しそうな雰囲気。
でも少しずつ話の中から、
その裏側が見えてくる。
○○さん、危ないらしい…
長くない命の噂が囁かれる。
知らないのは本人ばかりか。
それって嫌よね、という言葉。
ハッとする。
他の人のことは耳に入るのに
肝心な自分のことが分からない。
それはきっと辛い。
分からないならいいじゃない、
嫌も何も…感じないと言うけれど、
そんなことはない気がする。
死と隣り合わせな療養中の人に
面会しに来るのは外で暮らす人。
思う気持ちはあっても
なかなか同じではいられない。
療養する彼を待っていた彼女。
最初は頑張っていたけれど
“ いつまでかかるのか
分からないのは嫌… ”
気持ちは何となく分かる。
先が見えない中、
頑張り続けるのは辛い。
いつ終わるか分からない
未知のウイルス感染拡大も、
今の世の中に似てるなと思った。
これまでの我が身を振り返っても、
そうかもしれない。
介護であれ子育てであれ、
先が見えない苦しさの中
それを表に出さず、穏やかさを
保つのは なかなか難しい。
考えないと言っていた、
死に近いと噂されていたあの人。
肩の力が抜けているように見えた。
考えない方が楽だから?
その日のご飯が楽しみ…みたいな
ただ今を感じることなのだろう。
それは分かる。
でも自分は、希望の光がちらつくと
つい頑張っちゃうのよね(笑)。
今のやり方を変えたら
もっと良くなるかもしれない、
とか。
けれどそんな努力がすぐに
結果に結びつくとは限らない。
頑張った分だけ落胆も大きい(笑)。
その繰り返し。
そんな、気持ちの大きな振り幅で
あがき もがくのは疲れるけれど、
私は無駄とは思いたくない。
結局は、
回り道な過程もひっくるめて
必要だったのだと。
何気ない会話の合間に、
ぴんと張り詰めた間もあった。
無言の数秒間に、
荒れ狂うような気持ちを感じた。
ああ、あるある(笑)だ。
境遇は違っても、
誰にでも覚えがあるような
感情かもしれない。
それぞれが抱える問題は違う。
でも、きちんと伝え合えてない。
情けない姿も気持ちもさらけ出して
お互いまっとうにやり取りしてない。
だからこんなに苦しくて
怒りや悲しさに飲み込まれてしまう。
死ぬかもしれない人と
生きていかなきゃならない人と
どっちも大変というか…
同じ物差しで測れない。
だからこそ、
言葉を尽くして
どうにか折り合いをつけなきゃ
いけないのだけど…
永遠の課題だなぁ。
深みを覗くような気分。
淵に近付かなければ
見ないで済むし、
そもそも何も気付かない。
しかし何故かそうもいかない。
何故か見てしまってる(笑)。
眠るように逝く?最後の場面。
意外と穏やかに受け止められた。
本人の心の内は分からないし、
何が本人にとって幸せかは
分からない。
ただその人なりに、
この世をまっとうされたことに、
ただただ手を合わせるような
気持ちになった。
どんな生から、どんな死へ。
自分のそれを思うと
頭がぼうっとなってしまった。
ふと淵に立つ感覚がよぎり
足がすくむ感じ。
誰の力も及ばない瞬間。
どう転ぶかは神のみぞ知る。
誰も悪くない。それでいい。
少し晴れた気持ちで
現実に戻った観劇後。拍手。
チラシの絵、
見るとまた引き込まれそう。
何かが見える。